Google、量子コンピューターチップ「Willow」発表。暗号解読の脅威になるか

暗号資産領域でも話題に

グーグル(Google)が、新しい量子コンピューターチップ「ウィロー(Willow)」を12月9日発表した。これが暗号資産(仮想通貨)の領域において「量子コンピューターが暗号資産の脅威になるのではないか」という議論を巻き起こしている。

グーグルの発表によれば、「ウィロー」は現在の最速のスーパーコンピューターでも10の24乗年(1兆の1兆倍年)かかる標準的なベンチマーク計算を5分未満で実行できるという。

また、より多くの量子ビットを使用して拡張するにつれ、「ウィロー」はエラーを指数関数的に削減できるという。これは、この分野が約30年間にわたって追求してきた量子エラー訂正に関する課題の解決を意味しているという。

つまりこのようなコンピューターの前ではどのようなパスワードも安全ではなく、暗号資産やブロックチェーンの暗号化技術が短時間で解読できる可能性があると懸念されている。

また量子コンピューターが脅威をもたらしうるものとしては、金融セキュリティや政府・軍の機密通信情報、医療データやクラウドストレージ、AI・機械学習やインターネット全般なども挙げられる。

しかしまだ現段階では、量子コンピューターがビットコインに対して差し迫った脅威を与えるものではなさそうだ。

量子コンピューターは、量子力学の原理を活用し、従来のビットの代わりに量子ビットを使用する。

0か1のどちらかを表すビットとは異なり、量子ビットは「重ね合わせ」や「もつれ」といった量子現象を通して、0と1の両方を同時に表すことができる。これにより、量子コンピューターは複数の計算を同時に実行でき、古典的コンピューターでは処理不可能な問題を解決できる可能性がある。

「ウィロー」は、105個の量子ビットを使用しており、量子ビット数を増やすほどエラーを指数関数的に削減できる。

グーグルCEOのサンダー・ピチャイ(Sundar Pichai)氏はXにて、「ウィローは、創薬、核融合エネルギー、バッテリー設計などの分野で実用化される有用な量子コンピューターを構築する旅における重要なステップ」と述べている。

しかし「ウィロー」のような量子コンピューターであっても、暗号化を即座に解読するために必要な規模やエラー訂正能力を備えていないようだ。

計算科学博士のインベスター・アッシュ(Investor Ash)氏は、サセックス大学の研究者の論文を引用し、ビットコインの暗号化を1日で破るには1300万量子ビットが必要だと研究者が見積もっていると述べた。

研究者の論文によれば、ウィローは105量子ビットであるため、124,000ウィローに増えれば1日で暗号を破ることができる。なお340ウィローで1年で暗号を破る計算だ。

またピチャイ氏のポストにはイーサリアム(Ethereum)の共同創業者ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏も反応している。

ブテリン氏は量子コンピューターのリスクを軽減する方法を3月に提案しており、今後は各プロジェクトで量子コンピューターの脅威に対処するための変更が行われていくことになると予想される。

参考:発表
画像:PIXTA

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