【解説】中国NFT市場の今。そしてビットコインのように規制されるか?

中国NFT市場の現状

昨今、ブロックチェーン技術を活用したNFTのブームは世界規模のものとなっており、デジタルアートからバーチャルアセット、ゲームアイテム、チケット等、様々な分野に広がっている。

現在中国では国内での暗号資産(仮想通貨)の取引や関連サービスを厳しく禁止されているが、NFT市場に関しては中国国内企業の積極的な参加が見られる。

中国でのNFTの人気は、他国と同じくアート関連の作品からはじまった。アーティストやミュージシャンが、NFTと紐付けたデジタル作品をリリースし、それらの作品が高値で取引されている。

中国大手企業のNFT市場参入の例として、今年5月にアリババ(Alibaba)がNFTマーケットプレイス「Blockchain Digital Copyright and Asset Trade」をリリースした。またアリババのライバル企業である大手インターネット企業のテンセント(Tencent)も8月にNFTプラットフォーム「ファンへ(Huanhe)」を立ち上げている。

他にも7月には中国大型リアリティTV番組「Remember me(リメンバーミー)」の番組内でNFTが導入された。このNFTは番組内でのファン投票や出演者の販売アイテムとして利用された。

また世界的に著名な映画監督であるウォン・カーウァイ(Wang jiawei)氏は、今年10月初旬に大手オークションハウスのサザビーズ(Sotheby’s)で初のNFT映像作品「In the Mood for Love: A Moment」のオークション販売を予定している。 そして中国の有名女優シュー・ジンレイ(Xujinglei)氏は、NFTマーケットプレイスである「オープンシー(Opensea)」にて、約500作品のNFTアートワークを投資目的で購入しているとを明かしている。

しかし中国の「トークンの発行と資金調達のリスク防止に関する通知」によると、暗号資産と法定通貨との交換は合法的ではない。そのため「オープンシー」など海外のNFTプラットフォームのように暗号資産にてNFTを購入できる取引プラットフォームの設立は、中国では禁止されたビジネスであり、明らかに深刻なコンプライアンスの障壁がある。

また「中華人民共和国競売法」第6条、第7条及び第8条の規定には、オークションに出品できる商品は「委託者が所有する物品または財産権、または法令に基づく不用品」と記載されており、またオークションに出品できない商品は「法律または行政法規により売買が禁止されている物品または財産権」と記載されている。

そのため所有権がわかり、明確な規制のないNFTについてはオークションに出品できる商品であるという解釈もできる。

これらの理由から、現状の中国国内で運営されているNFTプラットフォームは、規制に準拠し法定通貨決済のみとなっている。 また前述した規定では財産権のある商品はオークションに出品できないとされていることからか、一部のプラットフォーム(iBoxなど)を除いて二次流通機能を提供していないプラットフォームがほとんどだ。

こういった現状は、NFTが中国での一連の暗号資産規制の対象になるかどうか、それぞれの企業が様子見をしている状況とも考えられる。なおアリババが運営するマーケットプレイスでは「プレゼント機能」という、「無償譲渡」という形式で二次流通に対応する機能を提供している。

このように中国企業や著名人の積極的なNFT市場への参入も目立つが、その一方で中国国内のNFT市場に対する態度として慎重な意見も多く、NFT取引に対するネガティブな声なども上がっている。

中国の新聞社の証券時報は「NFT取引は巨大なバブルである」という警戒心を示し、現状のNFT市場では投機目的など盲目的な誇大広告が行われており、それによりNFTの真の価値を奪ったと9月10日の記事で指摘。

証券時報は「NFTは本来デジタルデータではなく、現実のオブジェクトとブロックチェーンの世界の橋渡するものだ」と主張しており、現在トレンドになっている多様なNFTは、その誇大広告が冷めて資産価値が大きく低下するだろうと指摘している。

なお証券時報は政策内容に関する報道に関しては特に信憑性が高い中国3大証券新聞の1社だ。

また同じ中国3大証券新聞1社である中国証券報も「NFTの基礎となる技術は中立的なものであり、NFTの実際の特性は様々なアプリケーションのシナリオによって決定される。またNFTはその性質によって非常に異なるため、適切な業界の法律や規制を適用する必要がある」と述べている。

現状、中国当局は具体的にNFTについての規制を発表しておらず、NFTを対象とした具体的な法律についても公表していない。 しかし今後市場が加熱しすぎるとNFTの購買や二次流通に参加する人が増え、資金洗浄などの違法行為が生まれる可能性が高くなることも考えれる。

中国による暗号資産の規制政策は金融の安定性を保つことに重点が置かれているため、今後中国当局は違法行為を予防するためにも、投資目的というNFTの金融的な部分に対して規制強化をする動きを見せるかもしれない。

関連ニュース

【解説動画】中国、暗号資産禁止に本気か?専門家に聞く

【解説動画】中国の政治方針がビットコインに与える影響

中国規制当局、北京市内暗号資産関連事業者に警告

参考:証券時報中国証券報NFT(非同质化代币)的合規性判断
デザイン:一本寿和
images:iStocks/undefined-undefined・Smederevac

この記事の著者・インタビューイ

呉心怡

「あたらしい経済」編集部
中国・浙江省出身の留学生。東京女子大学 人文学科に在学中。
文章を書くことが好き。中国語、英語、日本語の3か国語を話す。あたらしい経済では持ち前の語学力を活かし、ニュース記事を執筆。ブロックチェーンや経済分野については勉強中。

「あたらしい経済」編集部
中国・浙江省出身の留学生。東京女子大学 人文学科に在学中。
文章を書くことが好き。中国語、英語、日本語の3か国語を話す。あたらしい経済では持ち前の語学力を活かし、ニュース記事を執筆。ブロックチェーンや経済分野については勉強中。

合わせて読みたい記事

「OASIS」がメタバース×NFTで創る、もう一つの私たちの居場所。コミュニティの取り組みや「OASIS COMMUNITY PASS NFT」を徹底取材

「OASIS」を担当するコインチェックの天羽健介氏、塚田竜也氏、そして「OASIS」コミュニティの運営に携わる中西大輝氏を取材。そもそも「OASIS」とはどんなプロジェクトか、そして現在のコミュニティ内での取り組み、NFT「OASIS COMMUNITY PASS NFT」についての詳細などについて訊いた。

【限定半額クーポン有】京都開催web3イベント「IVS Crypto 2023 KYOTO」がコンテンツ発表、あたらしい経済もメディアパートナーに

暗号資産(仮想通貨)/ブロックチェーンなどweb3領域に特化した大規模カンファレンス「IVS Crypto 2023 KYOTO」が、6月28日(水)~6月30日(金)の3日間、京都市勧業館「みやこめっせ」「ロームシアター京都」で開催される。

【取材】Symbolでジェネラティブ/フルオンチェーンNFT制作ツール、NFTDrive「隼 HAYABUSA」発表(中島理男)

「あたらしい経済」編集部は、「NFTDrive」サービスを軸に、前述のジェネラティブNFT生成ツール「隼 HAYABUSA」や、P2Pウォレット「NFTDriveEX」など、フルオンチェチェーンNFT関連サービスの開発に注力する株式会社NFTDrive代表の中島理男氏を取材した。

招待制web3イベント「B Dash Crypto」が札幌で5月24-26日開催! ピッチコンテスト応募者やスタートアップ参加者 募集中

ネット業界の第一線の経営者やキーパーソンが集結する日本最大級の招待制カンファレンス「B Dash Camp 2023 SPRING in SAPPRO」が5月24-26日に札幌で開催される。そしてそのイベント内同会場でブロックチェーン・暗号資産などweb3領域に特化したカンファレンス「B Dash Crypto」も同時開催される。

企画書だけで助成金が貰える? UNCHAIN「web3開発助成金プログラム:進捗2Earn」とは(shiftbase 志村侑紀/日原翔)

「UNCHAIN」で新たなプロジェクト「web3開発助成金プログラム:進捗2Earn」がスタートする。あたらしい経済編集部はshiftbase 取締役CCOの志村侑紀氏と取締役CTOの日原翔氏、そしてすでに助成金プログラムにプレ参加している起業家のkimi氏、エンジニアのkeit氏に取材した。

web3の未来は? 暗号資産/ブロックチェーン業界を牽引する80人の「2023年の展望」

「あたらしい経済」年始の特別企画として、ブロックチェーン・暗号資産業界を国内外で牽引するプレイヤーや有識者の方々に「2023年の展望」を寄稿いただきました。80人の方々の合計40,000字を超えるメッセージには、これからのweb3領域のビジネスのヒントやインサイトに溢れています。じっくりと読んで、これから「あたらしい経済」を切り開くための参考にしていただけますと幸いです。