なぜバイナンスの成長はブリッツスケーリングといえるのか (Binance is Blitzscaling)

竹田匡宏

*この記事は「Multicoin Capital」より「あたらしい経済」がライセンスを受けて翻訳したものです。

はじめに

ベンチャー投資家でLinkedIn(リンクトイン)共同創業者のReid Hoffman(リード・ホフマン)は、スタートアップ企業が不確実な状況の中で効率よりもスピードを優先させ、市場で圧倒的No1のポジションを築き上げることを「Blitzscaling(ブリッツスケーリング)」と名付けました。

そしてMulticoin Capitalは、未来が不確定なブロックチェーン業界において2017年7月に創業したBinance(バイナンス)の戦略と実行はまさにBlitzscalingであるとレポーティングしています。

Binance is Blitzscaling

2019年の初めMulticoin CapitalはBinanceとBinance Coin ($BNB)に関するレポートを発表しました。
そのレポートは私たちの数ヶ月間のBinanceへの調査の集大成でした。

それ以来、Multicoin CapitalはBinanceが驚異的なペースで成長し続けていることを注意深く観察していました。
その結果、私たちはBinanceの急成長を説明するためには、Reid Hoffman(リードホフマン)が生み出した言葉「Blizscaling」を使うのが最も簡単でわかりやすいと考えました。

リード・ホフマンの著書「Blitzscaling(pp.24-25)」によると

“ある企業が特定の市場のトップポジションを手に入れればリスクをとることは非効率なことではなく、100%当たる賭けを行うくらい効率的なものです。ポジションを勝ちとれば効率はそれほど重要なものではなくなり、負ければ効率は全く関係ないものになってしまいます。

長年にわたり、多くの人が一貫した利益を上げずに資本を消費するリスクの高い戦略を批判してきましたが、Amazon(アマゾン)はその非効率性によって、オンライン小売、電子書籍、クラウドコンピューティングなど、いくつかの重要な市場での勝利に貢献しました。”

そしてブロックチェーン業界においては、Binanceが他のどの企業よりも積極的にBlitzscalingを実践しています。

その証拠にBinanceは2019年の第3四半期だけで、Real10 exchangeと言われている”Coinbase、Kraken、Bitfinex、Poloniex、Bittrex、Gemini、Bitstamp、itBit、bitFlyer”などの取引所が生み出したプロダクト数よりも多い、12のプロダクトを1社だけでローンチさせています。

Binanceが生み出した12のプロダクトはそれぞれ重要なものですが、誰もプロダクトの詳細を整理してまとめてはいません。ただBinanceは他の取引所よりもはるかに戦略的にプロダクト開発やアライアンスを行なっていることは明らかです。

そして、Binanceは新たな金融モデルを築いています。しかし市場はまだBinanceの戦略の目的を完全に理解をできていないでしょう。 実際にBinanceは仮想通貨取引所や企業という枠組みでは説明できないエンティティになると思われます。

さらにBinanceはグローバルでオープンな金融システムの中心的存在にとなるために、既存の金融機関などとも競合争いをしています。

かつてBinanceは単なる仮想通貨取引所でした。しかし今のBinanceはエコシステムの中で「先物、証拠金、融資、オプション取引」などを提供するようになりました。

そしてBinanceは既存の金融システムが提供しているプロダクトレベルを見習いながら成長し続けています。

Binanceが提供するバリエーション豊かなプロダクトは、既に他に類を見ないプロダクトとなっています。しかしBinanceの挑戦はまだ始まったばかりです。

そしてBinanceの緻密で迅速な戦略によって、他のどの企業にも匹敵することのない独創的なクロスセリング機能を実現させることができました。

たとえばトレーダーはBinanceを使用すると、Binanceアカウントに保持されている残高を利用して、先物、オプション、証拠金取引の担保要件を維持することができます。

それに加えて、Binanceはユーザーに代わってユーザーの資産を自動的にStaking(ステーキング)し、その利回りをユーザーに分配する機能も持っています。

これによりユーザーは資産をBinanceに保管し続けるようになり、資産を他の取引所に送信する必要なく、迅速に取引できるようになります。そしてBinance内の通貨流動性が高まり、Binanceに保管される資産が増えネットワーク効果が大きくなります。

Binnceは、Staking(ステーキング)、cross-marging(クロスマージニング)、Binance DEX(Binanceの分散型取引所)、BNB(Binanceが発行するネイティブトークン)を組み合わせることにより、これまでにない新しい種類のネットワーク効果を生み出しています。

Multicoin CapitalのKyle(カイル)はオープンファイナンスで取引所を開始する準備ができている企業などを調査し、同社ブログで発表しました。

調査の結果、ユーザーがBinanceに対して有利子の預金口座、支払いチャネル(クレジット/デビットカードを含む)、レガシーバンキングシステムが提供するその他のサービスを提供することを期待するのは当然のことだと理解できました。

インターネットと現代の消費者心理の進化は、金融サービススタックの再構築を促進させています。そして Binanceは実際にBettermentのようなロボアドバイザー、TransferWiseのような送金会社、Robinhoodのような株式ブローカーと競合して、未来のネオバンクになっていくでしょう。さらにはUberのような会社でさえ競合になると、私たちは考えてます。

これらのネオバンクは、ナローバンクを通して得た信頼性を利用して、預金口座や支払いソリューションなど、レガシーバンクの核となる利益率の高いサービスに拡大していきます。

金融サービスは規模に対する強力なリターンがあるので、将来最大のネオバンクとなる企業は可能な限り幅広い市場に役立つように設計されていると予想されます。

さらにBinanceは検閲耐性のあるペイメントプロセスで国際的に運営できるようになると、Binanceの市場が大幅に拡大し他のネオバンクよりも大きな競合優位性を得られるでしょう。

Binanceは仮想通貨取引所市場にBlitzscalingに参入しているのではなく、世界のネオバンク市場全体を対象にBlitzscalingしているのです。

「あたらしい経済」編集部より

あたらしい経済は2020年1月14日にBinance創業者でCEOのCZへ取材し記事を書いておりますので、是非あわせてお読みください。

記事:【全文公開】ZコーポレーションとTaoTaoとの戦略的提携への交渉の狙いは「日本のビジネス文化の理解と適応」〜Binance CEO CZ氏へ取材

(おわり)

元記事:「Binance is Blitzscaling」by Tushar Jain /Multicoin Capital
翻訳/編集:竹田匡宏(あたらしい経済編集部)

この記事の著者・インタビューイ

竹田匡宏

兵庫県西宮市出身、早稲田大学卒業。
幻冬舎で「あたらしい経済」の編集者・記者。
また個人活動としては「死ぬまで毎日ブログを書く」という約束をもとにブログ「たっけのメモ」を4年間運営。ラジオ番組「ミレニアル世代のアタマの中」のパーソナリティー。

兵庫県西宮市出身、早稲田大学卒業。
幻冬舎で「あたらしい経済」の編集者・記者。
また個人活動としては「死ぬまで毎日ブログを書く」という約束をもとにブログ「たっけのメモ」を4年間運営。ラジオ番組「ミレニアル世代のアタマの中」のパーソナリティー。