機関投資家がビットコインを視野に入れる理由、グローバルファンドらの動き

竹田匡宏

機関投資家がビットコインを視野に入れる理由、グローバルファンドらの動き

機関投資家とは、企業や個人からの資金拠出により長期運用する大口投資家のことだ。

機関投資家がビットコイン投資へ注目し始めたのは、機関投資家らの資産運用サービスを提供するグローバルファンドらが投資基盤を整えてきているからだと考えられる。

また米国資産運用ファンドのフィデリティの2020年のレポートによれば、機関投資家の36%が既にデジタル資産に投資しており、そして個人投資家のうち10人中6人以上がデジタル資産をポートフォリオに組み込んでいるようだ。ちなみにフィデリティの調査では2019年の個人投資家のデジタル資産保有率は47%だったとのことで、2020年の60%と比べ大幅に増加していることになる。

それでは世界的に著名な資産運用ファンドであるフィデリティ(Fidelity)、ブラック・ロック(Black Rock)、ステート・ストリート(StateStreet)の動向をおさらいしていこう。

フィデリティ

フィデリティは2018年にデジタルアセット専門の子会社フィデリティ・デジタル・アセットを設立した 。現在、フィデリティ・デジタル・アセットはビットコインの保管サービスを提供している。そしてフィデリティはビットコイン専用ファンドである「Wise Origin Bitcoin Index Fund I, LP」の設立申請書を2020年8月26日に米国証券委員会へ提出している。

このようにフィデリティは機関投資家らのビットコインを含めてデジタル資産による運用ニーズが拡大していくことを予期して、着実に準備を進めていると考えられる。

またフィデリティ・デジタル・アセットは米暗号資産レンディング企業ブロックファイ(BlockFi)と提携して、機関投資家が現金融資の担保としてビットコインを担保資産にできるサービスを展開していくことを2020年12月9日に発表した。

その発表文の中で、フィデリティ・デジタル・アセットのセールス・マーケティング責任者であるクリスティン・サンドラー(Christine Sandler)氏は次のようにコメントをしている。

「ビットコインのロングポジションを維持している金融機関からは、資本効率を高めたいという需要が引き続きあります。フィデリティ・デジタル・アセットにとって、これはデジタルアセットのための活発な融資市場をサポートするためのエキサイティングな第一歩であり、ブロックファイのような大手企業とのデジタルアセット・エコシステム内での関係を深めることで、この分野の投資家にさらに機関投資家グレードのソリューションを提供することが可能になります。2020年のビジネスと市場の勢いを見ると、機関投資家はデジタル資産の分野でより包括的なサービスを求めていると確信しています」

そしてフィデリティ・インベストメントのCEOを務めるアビゲイル・ジョンソン氏は、投資メディアBARRONSの取材に対して「ビットコインに関して言えば、フィデリティはレガシーの世界とデジタル通貨の未来をつなぐことに力を入れています。フィデリティ・インベストメントのビットコインのカストディ事業は非常に成功しています」と答えている。

フィデリティは機関投資家やファンドのビットコインを含めたデジタル資産への需要の増加を受けて、さらにビットコイン投資の土壌を作っていくのではないかと考えられる。

ブラック・ロック

ブラック・ロックは2020年9月末時点における運用資産残高が7.81兆アメリカドル(約824兆円)の世界最大級の資産運用会社だ。ブラック・ロックは、8人のパートナーにより、1988年にニューヨークで設立された。そして1999年にはニューヨーク証券取引所に上場している。

2020年現在ビットコイン投資などに関して、ブラック・ロック[MOU5] は具体的にサービス開発などを発表しているわけではない。ただブラック・ロックはビットコインへ約444億円(4億2,500万ドル)を投資したナスダック上場企業のマイクロストラテジーの株式を15%保有していることが明らかになっている。そのため間接的にビットコインへ投資を行っているといえる。

またブラック・ロックのCEOを務めるラリー・フィンク(Larry Fink)氏はビットコインへの見解として「ビットコインは多くの人々の注目と想像力を集めていて、資産クラスとして成長する態勢が整っています」と2020年12月2日に対外関係審議会で述べている

さらにラリー・フィンク氏はビットコイン市場の将来性について「ビットコインは、アップサイドの可能性が大きいニッチ市場であることに変わりはありません。他の市場に比べれば、まだ未検証で、かなり小さな市場です。ビットコインは市場としてもまだ薄いです。世界的な市場に発展することは可能かと聞かれると、可能性はあると思っています」と伝えている。

そして昨年末、ブラック・ロックが米国ニューヨーク州でブロックチェーン・リーダーのバイス・プレジデントのリクルーティングの開始が報じされている。募集しているブロックチェーン・リーダーのバイス・プレジデントは、ブラック・ロックのサービスに対する需要を促進し、投資および技術サービスの顧客に対する価値提案を強化するために設計された戦略を作成、実施を行う役割を担うとのことだ。

このような状況からブラック・ロックは今後ヘッジファンドを通したビットコイン投資を行う可能性は高いのではと考えられる。

ステート・ストリート

ステート・ストリートは1792年にアメリカのボストンで誕生した歴史ある金融機関だ。現在の運用総額は、2.511兆アメリカドル(約259兆円)。

2019年12月17日にステート・ストリートは暗号資産取引所およびカストディアンであるジェミナイ・トラスト・カンパニー(Gemini Trust Company)と共同で、2種類の暗号資産のパイロット研究の開始を発表した。これはジェミナイカストディの顧客が保有する暗号資産の保有・報告過程をトラックする研究だ。この報告機能は暗号資産だけでなく、デジタル証券にも対応しているとのことだ。

その他に暗号資産領域に対する動きとして、ステート・ストリートは2020年12月11日に米暗号資産会計/税務ソフトウェア企業ルッカ(Lukka)の資金調達のシリーズCラウンドを主導している。ルッカはシリーズCラウンドで約15億6,000万円の資金調達を行った。このラウンドには、S&Pグローバルおよび米国公認会計士委員会(AICPA)子会社のCPA.comも参加している。

ルッカは世界有数のインデックスプロバイダー「S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス」と共に、暗号資産(仮想通貨)インデックスソリューションを2021年に提供開始することを昨年12月4日に発表している。暗号資産インデックスソリューションの意義に関しては、次節で詳しく説明する。

そのような企業に対してステート・ストリートが資本提携を行っているということは、暗号資産領域への本格参入準備を進めていると考えてもおかしくはない。

S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが開発する暗号資産インデックスの意義

世界有数のインデックスプロバイダーであるS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスはS&P500やダウ・ジョーンズ工業株平均といった金融市場の代表的な指標を算出していることは皆さんもご存知だろう。

インデックスとは金融領域では市場の動きを示す指数を意味するもので、投資家はインデックスで算出された価格をみて、リスク選定し投資判断を行う。一方、金融機関はインデックスをベースに投資商品の作成を行う。

そして今回S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは暗号資産インデックスを暗号資産の会計や税務システムを提供するルッカ(Lukka)と開発中であると12月3日に発表した。暗号資産インデックスは2021年に提供を開始する予定とのことだ。

前述の発表文でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスのイノベーションと戦略のグローバルヘッドを務めるピーター・ロフマン(Peter Roffman)氏は次のように説明をしている。

「S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは、1世紀以上にわたり、グローバル市場の継続的な成長と進化を反映した革新的で関連性の高いインデックスやベンチマークを作成する先駆者であり続けてきました。暗号資産のようなデジタル資産が急速に新興の資産クラスになりつつある今、独立した信頼性の高いユーザーフレンドリーなベンチマークソリューションが求められる時が来ています。デジタル資産データサービスの最前線で活躍してきたルッカと協力して、この新興セクターの透明性を高めることができることに興奮しています」

S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが暗号資産インデックスを開発し提供することは、既存の機関投資家や金融企業が暗号資産領域への参入するための大きな後押しとなると考えられる。

暗号資産インデックスがローンチされれば、フィデリティ、ブラック・ロック、ステート・ストリートら含めた資産運用ファンドや機関投資家のビットコイン及びデジタル資産への投資は加速するのではないだろうか。

文:竹田匡宏(あたらしい経済)
編集:設楽悠介(あたらしい経済)

 

この記事の著者・インタビューイ

竹田匡宏

兵庫県西宮市出身、早稲田大学卒業。
幻冬舎で「あたらしい経済」の編集者・記者。
また個人活動としては「死ぬまで毎日ブログを書く」という約束をもとにブログ「たっけのメモ」を4年間運営。ラジオ番組「ミレニアル世代のアタマの中」のパーソナリティー。

兵庫県西宮市出身、早稲田大学卒業。
幻冬舎で「あたらしい経済」の編集者・記者。
また個人活動としては「死ぬまで毎日ブログを書く」という約束をもとにブログ「たっけのメモ」を4年間運営。ラジオ番組「ミレニアル世代のアタマの中」のパーソナリティー。

この特集のその他の記事

「史上最高値更新のビットコインに多くの企業は投資すべき?」米上場企業がビットコインへ投資した理由

新型コロナウイルスへの対策として各国の中央銀行が民間消費や企業投資を促すために莫大な量の通貨を発行した。それによって各国の企業や投資家が現金を従来の金融資産である株式や債券へ変える動きが加熱している。 そんな中、米国で大手企業がその投資先のアセットとして「ビットコイン」を選び出したことが今年大きな話題となった。現在ビットコインの価格は年初より高騰しているが、その考えられる要因の一つにも、この大手企業らのビットコイン購入が挙げられている。 今年ビットコインへの大規模な投資を行って話題を呼んでいる米上場企業はスクエアとマイクロストラテジーの2社だ。 この記事では「企業のビットコイン投資」に焦点をあてて、この2社がなぜビットコイン投資を行ったのかを振り返り、そして今後の動きについて予想していく。