「Pontes」始動、長期構想「Appia」も
欧州中央銀行(ECB)のイザベル・シュナーベル(Isabel Schnabel)専務理事は、英イングランド銀行(BOE)とロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の金融市場グループが共同開催したカンファレンス「The Future of Money」で10月1日に政策パネルに登壇し、DLT取引の決済に中央銀行マネーを利用する3つの方式を説明した。
1つ目は中央銀行準備預金をプログラム可能な基盤上で直接トークン化する方式。2つ目は準備預金を既存の即時グロス決済システム(RTGS)に残しつつ、DLT基盤と接続する「ブリッジ(同期)」方式。3つ目は、民間事業者が中央銀行準備預金を1対1の裏付けとして決済用トークンを発行する方式だ。
3つ目の方式では、トークンは中央銀行ではなく民間事業者への請求権となる。なおシュナーベル氏は、米スタンフォード大学のダレル・ダフィー(Darrell Duffie)教授による整理を踏まえて3方式を説明している。
シュナーベル氏は、商業銀行が預金を発行し、銀行間の最終決済を中央銀行マネーで行う現在の「二層構造」の重要性も強調した。
中央銀行による流動性供給の重要性を示すため、1907年の米金融恐慌と新型コロナウイルス危機を比較した。1907年にはニューヨーク証券取引所のコールローン金利が一時年率100%に達した。一方、コロナ禍ではECBの総資産が拡大する中、レポ金利は比較的安定して推移した。
シュナーベル氏は、トークン化された金融市場でも中央銀行マネーを最終決済資産として利用可能にすることで、現在の二層構造を維持できるとの考えを示した。
一方、中央銀行マネーを利用できない場合、ステーブルコインなど民間決済資産への依存が高まり、中銀マネーが金融システムで果たす「アンカー」としての役割が弱まる可能性がある。
トークン化で欧州金融市場の統合も
シュナーベル氏は、トークン化のメリットとして、資産と資金の受け渡しが一体で完了するか、いずれも実行されない「アトミック性」と、条件に応じて取引を自動実行できる「プログラム可能性」を挙げた。
また、各国や市場ごとに分断されている欧州の金融市場インフラについて、DLTが統合を後押しする可能性があるとの見方を示した。
ユーロシステムは9月21日、DLT上のトークン化資産を中央銀行マネーで決済する仕組み「Pontes(ポンテス)」を開始した。今後は24時間365日稼働や、スマートコントラクトを活用したプログラム可能な決済などの機能追加を計画している。
ECBは長期的な金融市場インフラ構想「Appia(アッピア)」も進めている。
Appiaでは、金融資産と中央銀行マネーを単一台帳に載せるモデル、ユーロシステムのDLTと民間DLTを接続するモデル、中央銀行マネーを複数の共有台帳で利用するモデル、の3つを検討している。
ECBは2028年をめどにAppiaの具体的な設計方針を示す計画だ。
ECBは個人向けの「デジタルユーロ」と、金融機関向けの中央銀行マネーのトークン化を別の取り組みとして進めており、今回の講演は後者の方向性を示したものとなる。
参考:発表
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