欧州の証券規制当局、予測市場のリスク指摘。主要プラットフォームはEU認可無し

インサイダー取引や市場操作にも懸念

欧州証券市場監督機関(ESMA)が、急拡大する予測市場(Prediction Market)について、投資家保護や市場濫用などのリスクを指摘した。

ESMAは9月10日、市場リスク報告書「Trends, Risks and Vulnerabilities(TRV)No.2, 2026」を公表。同報告書で、ポリマーケット(Polymarket)やカルシ(Kalshi)などを含む予測市場を取り上げた。

ESMAによると、EU域内でイベント契約をマーケティング・販売するには原則としてEUの認可が必要となるが、主要な予測市場プラットフォームは現在、必要な認可を保有していないという。

またESMAは、ポリマーケットとカルシが、一部のEU加盟国に所在するユーザーからの注文を禁止している一方、すべての加盟国を制限対象としていないと指摘。VPNなどを利用した地域制限の回避を、プラットフォーム側が実効的に防止できるかについても疑問を呈した。

ESMAは、予測市場のイベント契約について、その内容や仕組みに応じて異なる規制が適用される可能性があると説明している。

MiFID II(第2次金融商品市場指令)上の金融商品に該当するイベント契約は、原則としてデリバティブとして扱われる。バイナリーオプションと同様の性質を持つ場合、EU各国が導入している商品介入措置の対象となり、小口顧客へのマーケティングや販売などが禁止される可能性がある。

また分散型台帳技術(DLT)を利用し、金融商品に該当しない契約については、暗号資産市場規則(MiCA)の対象となる可能性がある。このほか、加盟国ごとの賭博関連法が適用される場合もあるという。

ESMAは今年7月にも、金融商品に該当するイベント契約について、既存のバイナリーオプション規制が適用され得るとの見解を示していた。

ESMAは、予測市場におけるインサイダー取引や市場操作についても懸念を示した。

ESMAは、EUの市場濫用規則(MAR)がこうしたリスクへの対応に役立つ可能性がある一方、その対応は予測市場の契約が金融規制の適用範囲に入る場合に限られると説明している。

こうした中、欧州各国では無認可の予測市場に対する規制対応が進んでいる。

フランスでは7月、賭博規制当局がインターネットサービスプロバイダーにPolymarketへのアクセス遮断を命令。スペインでも5月、当局がポリマーケットとカルシに対する制裁手続きを開始し、暫定措置としてアクセス遮断を命じた。

また6月には、ベルギー、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スイスの9カ国の賭博規制当局が共同声明を発表。FIFAワールドカップ期間中の無認可予測市場について警告し、国境を越えた規制協力を強化する方針を示した。

米国でも州とCFTCが対立

米国でも予測市場をめぐる規制論争が続いている。

米商品先物取引委員会(CFTC)は、連邦登録されたイベント契約市場について、商品取引所法(CEA)に基づきCFTCが排他的な管轄権を持つとの立場を示している。

一方、各州ではスポーツ関連のイベント契約などを州の賭博規制の対象とする動きがあり、CFTCは2026年、複数の州を相手に訴訟や法的介入を行っている。

9月2日にはニュージャージー州司法長官が、CFTC登録市場で提供されるスポーツ関連イベント契約に州のスポーツ賭博法を適用できるかをめぐり、米連邦最高裁に審理を求める申し立てを行った。

ESMAは予測市場について、暗号資産やDeFi(分散型金融)、AI、SNSとの統合が進むことで、投資家保護や市場健全性などに新たなリスクが生じる可能性があると指摘した。

また予測市場と伝統的金融との接続も進んでいるとして、金融機関や市場インフラ事業者による同分野への参入にも言及している。

今回のTRV全体では、暗号資産市場と広範な金融システムとの結びつきの拡大についても、より緊密な監視が必要との見方が示された。

ESMAはこのほか、中東情勢をめぐる地政学的緊張やインフレ、成長鈍化、高水準にあるハイテク株のバリュエーションなどを市場リスクとして指摘。市場が底堅く推移していることを、脆弱性が存在しないことの証拠と捉えるべきではないとの警戒感を示している。

参考:報告書
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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