BNBチェーン、「Pasteur」ハードフォーク実施。処理効率向上とブリッジなどのセキュリティ強化

BNBチェーン、「パスツール」ハードフォーク実施、処理効率とセキュリティを改善

BNBチェーン(BNB Chain)が、BNBスマートチェーン(BNB Smart Chain:BSC)のハードフォーク「パスツール(Pasteur)」を8月25日に実施した。今回のアップグレードでは、ブロックの利用効率を高めるための仕組みを導入するほか、ブリッジ、ステーキング、ガバナンスに関するセキュリティを強化した。

BNBチェーンは、BSCを中核に、L2ネットワーク「opBNB」や分散型ストレージネットワーク「BNBグリーンフィールド(BNB Greenfield)」などで構成されるエコシステム全体を指す。今回ハードフォークの対象となったBSCは、EVM互換のレイヤー1ブロックチェーンで、スマートコントラクトの実行基盤を担う。BNBチェーンは過去1年間、BSCの高速化と安定性向上を段階的に進めてきた。

今年1月に実施されたハードフォーク「フェルミ(Fermi)」では、ブロック生成時間を0.75秒から0.45秒へ短縮した。ブロック生成時間とは、新しいブロックが作られる間隔を指す。現在のBSCでは、約0.45秒ごとに新しいブロックが生成され、その中にユーザーのトランザクションが取り込まれる。

その後の「オオサカ/メンデル(Osaka/Mendel)」では、サブ秒環境でのネットワークの安定性や挙動の一貫性を改善した。

今回のパスツールは、ブロック生成時間をさらに短縮するものではない。0.45秒という現在のブロック生成時間を維持したまま、その時間をより効率的に利用することに重点を置いている。BNBチェーンは、フェルミによる「高速化」、オオサカ/メンデルによる「安定化」に続く取り組みとしてパスツールを位置付けている。

パスツールには、BEP(BNB Evolution Proposal:BNBチェーン改善提案)-675、BEP-682、BEP-695の3つの提案が含まれる。これらはBEP-673の下にまとめられている。なお、BEP-682とBEP-695はハードフォークを必要とする変更だが、BEP-675自体はハードフォークを必要としない。

パスツールで処理効率とセキュリティを改善

今回のアップグレードに関連する処理能力向上策がBEP-675だ。同提案では、ブロック生成時に重複していたトランザクションの実行処理を減らす新たなブロック提出経路を導入する。これにより、ブロック生成時間やガス上限を変更せず、各ブロックにより多くのトランザクションを取り込めるようにする。ガス上限とは、1つのブロックで実行できる処理量の上限を決めるものだ。

BSCでは、多くのブロックを専門の「ブロックビルダー」が構築し、バリデータへ提出している。従来はブロックビルダーがトランザクションを実行した後、バリデータも同じトランザクションを再び実行し、ブロックが有効であることを確認してから署名していた。

しかしBSCのブロック生成時間は450ミリ秒まで短縮されており、こうした再実行に時間を使うことで、ブロックへトランザクションを取り込むための時間が圧迫されていた。BEP-675では、バリデータによる完全な実行検証をブロックへの署名・配信後に行うことで、ブロック生成までの重複処理を減らす。つまり検証そのものを省略するのではなく、検証を行うタイミングを変更することで処理効率を高める仕組みだ。

BNBチェーンがメインネットと同様の地域分散したバリデータ構成を再現した内部テストネット「QANet」で実施したベンチマークでは、バリデータが重要な処理経路で費やす時間が125ミリ秒から15ミリ秒へ短縮された。またブロック生成時間を450ミリ秒、ブロックのガス上限を1億に固定した条件では、スループットが1,237TPSから2,324TPSへ約88%向上した。

なお、これらは管理されたテスト環境での結果であり、メインネットの実測値ではない。同様の性能向上がメインネット規模でも再現されるかは、今後の検証課題となる。またBEP-675自体はハードフォークを必要とせず、新たなブロック提出経路はパスツールの有効化後、RPCを通じて有効化される設計だ。

セキュリティ面では、BEP-682によってクロスチェーンブリッジで利用されるバリデータ署名の検証が強化された。従来は検証に使われるバリデータセットに同じバリデータが複数回含まれていないかを確認する仕組みがなく、同一バリデータの投票力を複数回カウントできる余地があった。BEP-682では、重複するバリデータを拒否することでこの問題を修正した。

BEP-695では、バリデータが利用するコンセンサス鍵を更新した際の権限管理などが修正された。従来は鍵の更新後も古い鍵に管理権限が残る場合があったが、更新後に旧鍵の管理権限が失効するようになった。また、鍵更新によって、スラッシングに伴うアクティブバリデータセットからの排除を免れることを防ぐほか、署名を利用したガバナンス投票でもブラックリストのチェックを適用する。

BEP-675は、BNBチェーンが2026年下半期に進めるネットワーク処理能力向上の取り組みの一部に位置付けられている。BNBチェーンは同期間にBSCメインネットのスループットをさらに2倍にし、長期的にはBNBチェーン全体で10倍の性能向上を目指している。

参考:BNBチェーン
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

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