米3州の福祉給付実証にカントンネットワーク採用へ、2027年Q1開始予定

複数の給付の配布・管理を一体化

米国の非営利団体アメリカン・アイディア財団(American Idea Foundation:AIF)と、ブロックチェーン技術企業デジタルアセット(Digital Asset)が、州が運営する福祉給付制度の刷新を目指す「RISE(Resources for Independence, Stability, and Employment)」パイロットの実施を支援するため提携したと8月21日に発表した。

同プログラムの給付配布における技術基盤には、デジタルアセットが開発を主導したパブリックブロックチェーン「カントンネットワーク(Canton Network)」が採用される。

AIFは、ポール・ライアン(Paul Ryan)元米下院議長が設立した非営利団体だ。米ウィスコンシン州ジェーンズビルを拠点とし、経済的機会の拡大や、エビデンスに基づく公共政策の推進などに取り組んでいる。

今回のプロジェクトでは、連邦政府による承認を前提に、まず米国の3州で2027年第1四半期からパイロットを開始する予定。なお対象となる3州や、具体的にどの給付プログラムが対象となるかは現時点で明らかにされていない。

米国の福祉制度では、世帯が複数の支援プログラムを利用する場合、それぞれ異なる受給資格や支払いスケジュール、報告手続き、所得増加に伴う給付削減ルールなどに対応する必要がある。

RISEはこうした課題に対し、複数の給付の配布・管理をブロックチェーン基盤上で一体化する仕組みを構築する。

具体的には、複数の給付を月1回または月2回の支払いにまとめられるほか、受給者の就労開始や世帯収入の増加に応じて、給付額を自動的に調整できるようにするという。

また食料、保育、現金などのカテゴリーごとに、給付金の利用条件などをプログラム可能な形で設定できる。これにより各州が既存のプログラム要件を維持しながら、利用者にはより一体化された給付体験を提供することを目指す。

さらにRISEには、本人確認やプログラム参加要件の確認、モバイルからのアクセス、不正防止を支援する仕組みなども組み込まれる予定だ。

州の担当機関や非営利団体(NPO)のケースマネージャー、独立した調査評価者などは、それぞれの権限に応じて、取引やプログラムへの参加状況、コンプライアンスに関する情報へリアルタイムでアクセスできるという。

これにより監査可能な記録を構築し、給付プログラムの効果測定や改善につなげる狙いだ。

AIF創設者のポール・ライアン氏は今回の発表について、約30年前に州政府が福祉改革を主導し、新たなアプローチを試すことで連邦政府に改革の可能性を示した歴史に言及した。

そのうえでRISEについて、州が再び福祉改革をリードする機会になるとの考えを示した。

ライアン氏によると、RISEでは断片化している給付をまとめるとともに、世帯収入が増加した際に生じる給付削減による負担を抑え、その成果を厳密に測定するという。

こうした取り組みを通じて、より現代的なセーフティネットのあり方を示すことを目指すとしている。

デジタルアセット共同創業者兼CEOのユヴァル・ローズ(Yuval Rooz)氏も、現代の公共インフラには強固な管理体制を維持しながら、人々の状況変化にリアルタイムで対応できる柔軟性が求められるとコメントした。

またカントンネットワークについて、複数の当事者がプライバシーと制御を維持しながら、共有する取引やルールを調整できる仕組みを備えていると説明。これまで金融市場向けに活用されてきた同ネットワークの仕組みを、公共給付という新たなユースケースに応用するとした。

RISEのパイロットでは、就労状況や所得、給付の利用状況、教育・職業訓練、住居や世帯の安定性など、経済的自立や生活の質に関する複数の指標が評価される予定だ。

またプラットフォームから得られる取引データやコンプライアンスデータを活用することで、行政機関や評価機関がプログラムの効果をより迅速に把握できるようにするという。

AIFとデジタルアセットは、初期の州パイロットから得られた結果を、その後のRISE導入に反映していく方針だ。

各州で異なる給付制度や政策要件、ケースマネジメントの体制、対象者層などに合わせてモデルを調整しながら、州単位でのパイロット展開を拡大していくとしている。

デジタルアセットは、カントンネットワークを開発したブロックチェーン技術企業。プライバシーを確保しながら金融機関などが資産やデータを接続・同期できるインフラを提供している。2014年設立。

カントンネットワークは、機関金融向けに設計された、プライバシー保護型のパブリックかつパーミッションレスなレイヤー1ブロックチェーンだ。プライバシー保護やコンプライアンス、コンポーザビリティ、決済ファイナリティなどを重視した設計が特徴とされている。

参考:発表
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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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