reETH不正流出によるアービトラムの資産凍結対応、ブロックチェーンの分散性巡る議論が拡大

緊急対応の仕組みと分散性の関係が論点に

reETHの不正流出事案を巡る、アービトラム(Arbitrum)による資産凍結対応を受け、暗号資産(仮想通貨)コミュニティ内で分散性の在り方を巡る議論が広がっている。

同事案は、リキッドリステーキングプロトコル「ケルプDAO(KelpDAO)」のrsETHインシデントに関連し、アービトラムのセキュリティ評議会が同ネットワーク上の約30,766ETHを凍結した対応だ。同評議会は、攻撃者に関連するとみられるアドレスから資産を移転し、アクセス不能なウォレットへ保管する措置を実施したと4月21日に発表した。

アービトラムの説明によると、同対応は緊急時のリスク対処として実行されたもの。ネットワークや他のユーザーへの影響を与えない形で実施されたという。

この対応については、ハッキングによる資金流出を防ぎ、ユーザー保護につながる措置として評価する声がある。一方で、ブロックチェーン上の資産が後から特定の主体によって移転・凍結可能である点について、分散型ネットワークの前提との関係を問う指摘も出ている。

アービトラムのセキュリティ評議会は、同DAOの憲章に基づき設置された組織で、12名のメンバーにより構成される。メンバーはトークン保有者による投票で選出され、任期は1年。6ヶ月ごとに選挙が実施される仕組みとなっている。

同評議会は、プロトコルやエコシステムにおける重大なリスクに対応する役割を担い、緊急時には迅速な意思決定を行う権限を持つとされている。また、その権限はDAOの監督下にあり、トークン保有者による投票によってメンバーの解任も可能とされている。

こうした設計については、コミュニティによって選出された主体による介入である点から、分散型ガバナンスの一形態と捉える見方もある。一方で、少人数の主体が資産移転などの判断を実行できる点については、「ロールアップは基盤となるネットワークと同等の分散性を持ち得ないのではないか」との指摘も見られている。

また、ステーブルコイン発行体であるテザー(Tether)やサークル(Circle)が行う資産凍結と類似した対応がレイヤー2ネットワークでも実行されたことを受け、「分散型とされる領域においても一定の管理主体が存在する」とした議論も浮上している。

これに対し、「分散性は単一の状態ではなく段階的な概念であり、安全性とのトレードオフの中で設計されるべきもの」とする見方や、「緊急時には介入可能な仕組みが必要」とする実務的な観点からの支持も見られるなど、評価は分かれている。

今回の事例は、分散型ネットワークにおける「安全性」と「中立性」のバランスをどのように設計するかという課題を改めて浮き彫りにするものとなっている。

 

参考:ドキュメント
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

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