米SEC委員長、暗号資産規制に新フレーム「ACT戦略」提示

執行から事前ルール整備へ

米証券取引委員会(SEC)のポール・アトキンス(Paul Atkins)委員長が、CNBCの「スクワーク・ボックス(Squawk Box)」に4月20日に出演し、暗号資産規制に関する新たな政策フレーム「ACT戦略」を打ち出した。就任からちょうど1年を迎えるタイミングでの表明となる。

ACT戦略は「Advance(前進)」「Clarify(明確化)」「Transform(変革)」の3つの柱で構成される。アトキンス委員長はインタビューの中で「SECに着任したとき、新しい時代を約束した。われわれは規制強化という旧来の慣行と不透明さから脱却した」と述べた。

ゲイリー・ゲンスラー(Gary Gensler)前委員長時代に顕著だった「執行による規制(regulation by enforcement)」は、明確なルールが存在しない中で法的措置を積み重ねることで業界に実質的な規制を課す手法だった。アトキンス体制ではこのアプローチを転換し、事前にルールを定めることで市場参加者が予見可能な形でコンプライアンスを実現できる環境の整備を目指す。

「Advance」では、ブロックチェーン金融インフラやトークン化資産などの新興技術への積極的な関与を掲げる。従来のような防衛的なスタンスではなく、技術革新と正面から向き合う姿勢を打ち出すことで、規制の不透明さを理由に海外へ移転した企業を国内に引き戻す狙いもある。

「Clarify」では、デジタル資産の法的分類の明確化に取り組む。有価証券に該当するかどうかの判断基準が曖昧だった問題に対し、商品先物取引委員会(CFTC)との連携覚書の締結を進めており、トークン化された有価証券とコモディティとして扱われるデジタル資産の区分整理を進めている。また、発行体や仲介業者向けの解釈指針の発出を目指している。

「Transform」では、現行の規制体系そのものを見直す。デジタル資産取引やブロックチェーンシステムの台頭を踏まえ、既存の規則が現在の市場構造を反映できるよう改正を進める方針だ。

また、CFTCのマイケル・セリグ(Michael Selig)委員長もX上でアトキンス委員長の1年を称える投稿を行い、両機関の連携姿勢を改めて示した。

セリグ委員長は「アトキンス委員長のリーダーシップのもと、SECは執行による規制を終わらせ、資本市場を強化し、時代遅れで過度な規制を撤廃することで機関を近代化してきた」と評価。「CFTCとSECの規制イニシアティブを調和させ、両機関の新たな時代を切り開くにあたって、共に歩めることを誇りに思う」と述べた。

アトキンス委員長が就任した2025年4月21日以来、SECは大手暗号資産取引所コインベース(Coinbase)をはじめとする複数の暗号資産(仮想通貨)企業に対する民事執行訴訟や調査を取り下げてきた。また、複数の暗号資産を参照するETF(上場投資信託)の承認、CFTCとのデジタル資産規制に関する協力覚書の締結、そして大多数の暗号資産において連邦証券法上の証券該当性の再検討を行っている。

一方、こうした方針転換に対しては議会民主党側から批判の声も上がっている。マサチューセッツ州選出のエリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)上院議員は4月15日付の書簡の中で、アトキンス委員長が2月の下院公聴会で執行データについて議会を誤解させた可能性があると指摘。SECの2025会計年度のデータでは、執行件数が過去10年間で最低水準に落ち込んでいるとしている。

暗号資産市場構造法案である「クラリティ法(CLARITY Act)」の議会通過がいまだ実現していない中、ACT戦略が具体的なルール整備へと結実するかどうかが今後の焦点となる。

参考:CNBC ・ エリザベス・ウォーレン上院議員書簡 
画像:Reuters

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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