a16zクリプト、2026年に向けた暗号資産分野の注目テーマ17件を公表

a16zクリプトが2026年の展望を提示

米大手ベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz:a16z)の暗号資産(仮想通貨)部門「a16zクリプト(a16z Crypto)」が、2026年の暗号資産分野で注目する17のテーマをまとめた年次企画記事を12月11日に公開した。

同記事は、ステーブルコイン、現実資産(RWA)のトークン化、決済と金融、AI、エージェント、プライバシー、セキュリティ、メディアなど幅広い分野を対象に、a16z Cryptoの投資、エンジニアリング、リサーチ、政策、GTM(Go-To-Market)の各チームメンバーによる個々の見解が示されたものだ。そのため注釈には「a16zまたはその関連会社の見解ではない」との記載がある。

記事ではまず、ステーブルコインの成長が強調されている。記事によると、ステーブルコインの年間取引量は推定約46兆ドル(約7,127兆円)に達しているという。これはペイパル(PayPal)の20倍以上、世界最大級の決済ネットワークであるビザ(Visa)の約3倍で、米国のACH(電子決済ネットワーク)の規模に迫る水準まで拡大しているとのこと。一方で、既存の金融インフラと接続するオンランプおよびオフランプの整備が、引き続き重要な課題だと指摘されている。

今後は、地域決済ネットワークやカード、グローバルウォレット基盤などを通じて、ステーブルコインが既存の決済手段とより密接に接続され、国境を越えた即時決済やリアルタイム給与支払いなどのユースケースが拡大するとのこと。記事では今後ステーブルコインがニッチな金融ツールから、インターネットの基盤的な決済レイヤーへと移行すると述べられている。

現実資産(RWA)のトークン化については、単に既存資産をオンチェーン化するだけでなく、暗号資産ネイティブな設計が重要になると指摘された。無期限先物などの合成資産は、高い流動性や実装のしやすさを備え、RWAの新たな表現方法になり得るとされている。また、債務資産については、オフチェーンで組成したものをトークン化するのではなく、オンチェーンで直接組成する動きが広がる可能性があるとのこと。

銀行や金融機関の文脈では、ステーブルコインが基幹台帳システムの刷新を促す役割を果たすと分析された。多くの銀行はいまだに旧来の基幹システムを利用しており、新機能の追加には長い時間を要するが、ステーブルコインやトークン化預金を活用することで、既存システムを全面的に書き換えることなく新たな金融サービスを展開できると述べられている。

AIとエージェントの分野では、AIが自律的に取引や意思決定を行うようになる中で「KYC(Know Your Customer)」から「KYA(Know Your Agent)」への移行が重要になると指摘された。エージェントが取引を行うためには、その責任主体や制約条件を暗号学的に証明する仕組みが不可欠になるという。

またAIエージェントの普及により、価値の移転は人の操作を介さず自動的に行われるようになるという。ブロックチェーンやスマートコントラクトが情報と同じ速度で価値を移転する基盤になるとの見方が示された。

プライバシーとセキュリティについては、プライバシーが暗号資産分野における最も重要な競争優位性になると位置付けられた。プライバシー機能を備えたブロックチェーンは強いネットワーク効果を持ち、将来的には少数のチェーンが大きなシェアを占める可能性があるとのことだ。

セキュリティ面では、「コードが法律(code is law)」という業界の従来の考え方から、設計段階で定義した安全性の仕様をコード実行時に強制する「仕様が法律(spec is law)」への移行が進むとした。これにより、分散型金融(DeFi)におけるハッキングや不正取引に対する耐性が高まると述べられている。

そのほか、トークン化とAIの進展により、従来は富裕層向けだったウェルスマネジメントがより多くの人に開放される可能性や、予測市場、ステークド・メディアなどの新たな分野が拡大する見通しも示された。

a16zクリプトの記事では、これらの動向を通じて暗号資産が投機的な領域を超え、金融やインターネットの基盤として組み込まれていく段階に入るとの認識が示されている。

参考:a16zクリプト
画像:PIXTA

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あたらしい経済 編集部

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これから「あたらしい経済」時代を迎える すべての個人 に、新時代をサバイバルするための武器を提供する、全くあたらしいWEBメディア・プロジェクトです。

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