ユーロシステム主導でDLT決済に本格着手
欧州中央銀行(ECB)が、中央銀行資金を活用した分散型台帳技術(DLT)による決済を実現するため、二本柱の戦略を採用すると7月1日に発表した。
この取り組みは、短期対応の「ポンテス(Pontes)」と、長期的ビジョンに基づく「アッピア(Appia)」の二つの軸で構成されている。
両プロジェクトは、2024年5月から11月にかけて実施されたユーロシステムによる新技術調査を基盤としており、その中では64の参加機関が50件を超える実験・検証を行った。
ちなみにユーロシステムとは、ユーロを導入しているEU加盟国の中央銀行と、ECBで構成される組織体だ。ユーロ圏内の金融政策の実施や決済インフラの運営などを通じて、域内経済の安定と統合を支える役割を担っている。
「ポンテス」は2026年第3四半期末までにパイロット開始が予定されており、DLTプラットフォームとユーロシステムが開発・運営する「ターゲット・サービス(TARGET Services)」を接続する。
「ターゲット・サービス」は、ユーロ圏内の資金および証券決済の円滑な流れを担う中核的な金融インフラだ。
これにより、中央銀行マネーによるDLTベースの安全かつ効率的な取引決済が可能となる。
また、「ポンテス」は、2024年にユーロシステムが実施したDLTに関するテストで採用された機能が組み込まれており、パイロット開始までに、DLT関連の新たな実験や提案の受け入れも検討されている。
一方、長期構想の「アッピア」は、欧州における革新的かつ統合された金融エコシステムの構築を視野に入れており、グローバルレベルでの安全性と効率性の向上を目指す。
これを実現させるためにユーロシステムは、DLT技術に基づくソリューションの分析を今後も継続し、公的・民間の関係者と協力していく方針だ。
またユーロシステムは、こうした取り組みを市場と連携しながら進めるため、「ポンテス」と「アッピア」それぞれに専用の市場連絡グループを設置する計画であり、ポンテスに関する参加募集の詳細は近日中に公表される予定である。
参考:発表
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