コインベース、ビットコインの量子コンピューター対策で技術提言。既存BTCの移行方法も提示

コインベース、ビットコインの耐量子対応に向けた技術的優先事項を公表

米暗号資産(仮想通貨)取引所コインベース(Coinbase)が、ビットコイン(BTC)の量子コンピューター対策に向けた技術的な提言を10月13日に公表した。同社は、耐量子署名方式の導入に向けた技術設計や選定条件、既存BTCの段階的な移行方法などを提示した。また、秘密鍵の紛失などによって移行できないBTCの取り扱いも検討課題に挙げた。今回の提言は開発コミュニティとの議論に向けたもので、具体的な署名方式や移行方法、導入時期が決定したわけではない。

現在のビットコインは、秘密鍵と公開鍵を使った電子署名によって、BTCの移動を承認する仕組みを採用している。秘密鍵は取引の承認に使われ、公開鍵はその承認が正当なものかを検証するために使われる。しかし、将来、高性能な量子コンピューターが登場した場合、公開鍵から秘密鍵を割り出され、BTCが盗まれる可能性がある。特に、公開鍵がすでに公開されているBTCは、こうした攻撃の対象となる危険がある。

コインベースは、ビットコインの仕様変更や利用者の移行には数年かかる可能性があるため、量子コンピューターによる脅威が現実化する前から準備を進める必要があると指摘した。また、ビットコインの仕様変更には、開発者やネットワーク参加者による検討・調整が必要となる。

技術設計については、耐量子署名を導入するための仕組みと、具体的な署名アルゴリズムを分離することが望ましいとコインベースは説明した。これにより、将来、別の署名方式を追加・変更する際に、仕組み全体を再設計せずに済む。こうした設計の候補として同取引所は、ビットコインの仕様改善に向けた提案「BIP-360」で示されている「P2MR」や、別途検討されている「P2TRv2」を挙げている。

署名方式の選定では、安全性に加え、署名データの大きさや検証速度、ウォレットへの実装のしやすさなどを評価する必要があるという。ビットコインではブロックに記録できるデータ量が限られているため、署名データが大きくなると、記録できる取引数や手数料に影響する可能性がある。評価候補には、耐量子暗号の標準規格である「ML-DSA」や「SLH-DSA」などが含まれる。

また、署名のたびに内部の状態を更新する「ステートフル方式」については、状態の管理に失敗すると署名を偽造される危険があるとコインベースは指摘した。同方式は署名データを小さくできる可能性がある一方、バックアップからの復元や複数のサーバーによる署名処理で問題が生じる場合がある。そのため、状態管理を必要としない「ステートレス方式」も選択できるようにすることが重要だとの考えを示した。

さらにコインベースは、機関投資家向けの資産管理で利用されるマルチパーティ計算(MPC)との互換性も重視した。MPCは、秘密鍵に関する情報を複数の主体で分散管理し、秘密鍵全体を一カ所に集めずに署名を生成できる技術だ。コインベースは、耐量子署名の候補に、MPCとの互換性が期待できる方式を少なくとも一つ含めることが望ましいと説明した。

既存BTCの移行については、新しい署名方式が導入されても、従来の方式で保護されているBTCが自動的に切り替わるわけではない。そのため、利用者が新しい署名方式に対応した仕組みへBTCを移す必要がある。コインベースは、従来の署名方式を廃止する方針が決まる前から移行を進められる方法として、従来の署名と耐量子署名のいずれかで同じBTCを移動できる方式を例示した。

一方、長期間動かされていないBTCや、秘密鍵を紛失して移動できないBTCの取り扱いも課題となる。コインベースは、移行が遅れた利用者の救済方法や、従来の署名方式による資産移動の制限などを検討事項に挙げた。ただし、移行されない資産の取り扱いに関する議論は、耐量子署名の導入に向けた技術開発と並行して進められるとの考えを示している。

コインベースは現在、自社システムの耐量子対応を進めている。また、ビットコインの開発者や研究者との議論に加え、ビットコイン・セキュリティ・コンソーシアム(Bitcoin Security Consortium)への参加を通じて、オープンソースの開発を支援している。

参考:コインベース
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

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