チェイナリシス、ICEのTRMラボ向け約9500万ドル随意契約を巡り米政府提訴

ICE、TRMラボのみが要件満たすと判断

暗号資産(仮想通貨)のブロックチェーン解析企業チェイナリシス(Chainalysis)の政府向け子会社チェイナリシス・ガバメント・ソリューションズ(Chainalysis Government Solutions, LLC:CGS)が、米国土安全保障省(DHS)傘下の移民・関税執行局(ICE)による約9,500万ドル(約151億円)の随意契約をめぐり、米政府を提訴した。8月28日に公開された訴状から明らかになった。

CGSは7月27日、米連邦請求裁判所(U.S. Court of Federal Claims)に入札抗議(bid protest)訴訟を提起した。争われているのは、ICEが競合のTRMラボ(TRM Labs)に随意契約(sole-source contract)で発注した94,655,840ドルのフォレンジック・ソフトウェアおよび支援サービス契約だ。

同契約は国土安全保障タスクフォース(Homeland Security Task Force:HSTF)の捜査支援を目的とするもの。CGSは訴状で、米政府によるブロックチェーン解析関連の契約として過去最大規模だとしている。

ICEは5月28日、HSTF傘下の「サイバー・ディスラプション・センター(Cyber Disruption Center)」に関する市場調査として情報提供依頼(RFI)を発出した。

RFIでは、金融詐欺に関する被害報告100万件超を収録した独自データベースやAIを活用した捜査プラットフォーム、不正に関連する暗号資産ウォレットから資金が移動した際に、暗号資産事業者へリアルタイムで自動通知する機能などについて質問。CGSも回答を提出した。

その後ICEは6月8日、TRMラボとの随意契約を予定していることを示す意向通知(NOI)を公表。TRMラボ以外に契約を履行できる企業がある場合、6月11日までに1ページ以内の能力表明書を提出するよう求めた。

CGSは期限内に提出したが、ICEは翌12日、TRMラボのみが要件を満たせると判断した。

ICEは7月1日にTRMラボへ契約を発注し、翌2日に公示。CGSは7月12日に米会計検査院(GAO)へ抗議を申し立てた後、21日に取り下げ、27日に連邦請求裁判所へ提訴した。

CGSは、ICEによる随意契約の決定が1984年契約競争法(Competition in Contracting Act:CICA)などに違反し、恣意的かつ裁量権の濫用にあたると主張している。

主な争点は、ICEがTRMラボのみを契約可能な事業者と判断した根拠だ。

CGSによれば、同社の能力表明書は要件書の要求事項に対応していたが、ICEは十分な検討を行わなかったという。

またICEは、最終的な要件書には記載されていない「100万件超の被害者データセット」や暗号資産事業者への自動通知機能、ステーブルコイン発行体との連携など、RFIで尋ねた項目を随意契約の判断材料にしたとCGSは指摘。一部の条件は特定ベンダーの機能に過度に限定され、競争を不当に制限したとも主張している。

さらにCGSは、ICEが能力表明書の提出期限翌日に市場調査を終了したことや、FARの全面見直し構想「Revolutionary FAR Overhaul(RFO)」に基づきDHSが採用した競争関連規定の解釈・適用にも問題があったと主張している。

CGSは裁判所に対し、随意契約の決定が違法だったとの判断やTRMラボとの契約履行の恒久的差し止め、公開競争による調達の実施などを求めている。

TRMラボは7月28日、被告側参加人として訴訟に参加した。

本件の口頭弁論は9月2日に予定されている。

参考:裁判書類 
画像:PIXTA

関連ニュース

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

合わせて読みたい記事

【8/31話題】金融庁が信託型ステーブルコインの法定調書「提出不要」要望、トリコがETH、イオレがHYPE追加取得、クロノスのネットワーク停止など(音声ニュース)

ブロックチェーン・仮想通貨(暗号資産)・フィンテックについてのニュース解説を「あたらしい経済」編集部が、平日毎日ポッドキャストでお届けします。Apple Podcast、Spotify、Voicyなどで配信中。ぜひとも各サービスでチャンネルをフォロー(購読登録)して、日々の情報収集にお役立てください。

Sponsored