ヴィタリック、AIとブロックチェーンの関係を再整理。イーサリアムは「AIの経済的インフラ」に

重視するのは「AIが経済主体として参加する構図」

イーサリアム(Ethereum)の共同創設者であるヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏が、AIとブロックチェーンの関係性についての考えを2月10日に自身のXアカウントで示した。

ブテリン氏は、AIを万能な意思決定主体として扱う方向性には慎重な姿勢を示す一方で、AIが経済活動を担う主体としてオンチェーンで連携する可能性については現実的なユースケースとして位置付けている。

前提として、ブテリン氏は、2024年1月に公開した自身のブログ「The promise and challenges of crypto + AI applications(暗号資産とAIアプリケーションの可能性と課題)」で、AIと暗号資産(仮想通貨)の接点を4つの類型に整理している。

①ゲームの「プレイヤー」としてのAI
②ユーザーとブロックチェーンをつなぐ「インターフェース」としてのAI
③ブロックチェーンやDAOの「ルール」そのものに組み込まれるAI
④AIの構築自体を目的とする仕組み

今回のX投稿は、その内容を踏まえつつ、約2年前のブログ投稿を参照しながら、近い将来に向けた「4つの優先領域(2×2の枠組み)」として論点を整理し直したものだ。

4つの類型のうち同氏は当時から、③「ルールそのものに組み込まれるAI」については強い警戒を示していた。AIモデルが公開されれば攻撃に最適化されやすく、非公開にすれば検証可能性が失われるというジレンマがあるためだ。特に高額資金が関与する場面でAIを裁定主体に組み込む設計は、敵対的機械学習(アドバーサリアル攻撃)の観点から重大なリスクを伴うと指摘している。

一方で、①のAIが経済的インセンティブのもとで行動する「プレイヤー」として参加する設計については、実現可能性が高い領域だと評価していた。分散型取引所(DEX)におけるアービトラージボットや、予測市場への参加などはその具体例とされている。

今回の投稿でブテリン氏は、この基本整理自体は維持しつつ、より近い将来に焦点を当てた具体的な方向性を示した。

特に重視しているのは、AIエージェントがオンチェーンで支払い・取引を行い、APIコールの支払い、ボット同士の業務委託(ボットがボットを雇う)、担保・保証金、(場合によっては)評判や紛争解決といった要素を組み合わせながら協調する構図だ。これは、単一組織に依存しない分散型AIアーキテクチャを支える可能性があるとの見方を示している。

ここで重要なのは、同氏がAIを「判断の最終主体」として位置付けているわけではない点だ。今回の投稿でも、AIが人間の意思決定を直接代替する構図には慎重な姿勢を示している。

ブテリン氏が描く方向性は、AIが経済的インセンティブのもとで行動する主体として市場メカニズムに参加する世界である。判断そのものをAIに委ねるのではなく、インセンティブ設計や競争環境を通じて行動を調整するという設計思想が強調されている。

ブテリン氏は、イーサリアムの役割を「人工知能そのものを構築すること」ではなく、AIと人間、AI同士が信頼を前提とせずに相互作用できる経済的インフラを提供することにあると位置付けている。

その文脈で同氏は、「ローカルLLMの活用」「暗号的決済メカニズム」「クライアントサイドでの検証技術」などに言及し、中央集権的なAI提供者に依存しない利用形態の重要性を示した。これは、暗号資産領域で広く知られる「Don’t trust, verify(信頼せず、検証せよ)」の発想と親和的だ。

一方で、DAOやスマートコントラクトの最終的な裁定者としてAIをルールとして組み込む設計については、今回も慎重な立場を崩していない。特にAIオラクルに依存する高価値の金融アプリケーションについては、攻撃リスクを十分に考慮する必要があるとの問題意識を示している。

今回のX投稿は、AIとブロックチェーンの融合をめぐる議論が加速する中で、「イーサリアムはどこに関与すべきか」を再整理したものといえる。

ブテリン氏は、人工汎用知能(AGI)を目指す無差別な技術加速ではなく、「望ましい方向を選ぶこと」や「(勝ち負けを競うような)未分化な加速を避けること」の重要性を改めて示した。AIの権限を強くすることではなく、人間の意思決定を壊さずに利便性や自由度を拡張することを重視している。

そのための経済的・暗号的基盤としてイーサリアムを位置付けるのが、現在の同氏の視座だといえる。

参考:ブログ
画像:iStocks/undefined-undefined

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あたらしい経済 編集部

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