英FCA、暗号資産の購入・貸借を規制強化へ、消費者保護で

英FCAが暗号資産の購入など規制強化へ

英金融規制当局が、同国でのクレジットカードによる暗号資産(仮想通貨)の購入や暗号資産レンディング(貸借)サービスへのアクセスに対し、消費者の利用を制限する方針であると5月3日に発表した。この方針は、英国における暗号資産の初の制度的規制導入に伴い、消費者保護の強化を目的とされている。

英財務省は先週、暗号資産を強制的な規制対象とすることを正式に発表した。これにより、取引所、業者(ディーラー)、発行体は既存の規則体系のもとで監督を受けることになる。

金融行動監視機構(FCA)は、暗号資産取引の人気が急上昇しており、成人の約12%に相当する約700万人が暗号資産を保有していると指摘する一方で、この分野はほとんど規制されていないと警鐘を鳴らしている。FCAは消費者に対し「(暗号資産に)投資する場合はすべての資金を失う覚悟が必要である」とも警告している。

英国政府は、暗号資産業界に関する新たな法案を発表し、急成長する業界における合法的なイノベーションを支援しつつ、「悪質な業者」を取り締まる意向を示した。

FCAは現在、個人投資家が借入金を用いて暗号資産に投資する行為に対し、規制を導入する方向で検討を進めている。

FCAは提案内容に関する意見募集の文書の中で、「クレジットカードを使用して暗号資産を直接購入する行為や、電子マネー事業者から提供される信用枠を活用した購入について、制限を含む複数の措置を検討している」と述べている。

ただし、FCAに登録された企業が発行するステーブルコインについては、引き続き借入金による購入が可能だ。なおステーブルコインとは、米ドルなどの他の資産と価値が連動するよう設計されたデジタル通貨である。

FCAが委託した調査結果によると、2024年に暗号資産を購入した投資家の14%がクレジットを使用しており、これは2022年の6%から増加している。

FCAはまた、暗号資産の貸付と借入に関する制限についても検討しており、これには消費者に対する与信審査の実施や投資知識・経験の確認テストの導入などが含まれている。

暗号資産の貸付とは、保有者が自らの資産を貸し出して利回りを得る行為。また借入とは暗号資産による貸付を受け、利子を付けて返済する行為を指す。

FCAは、この分野が市場の一部に過ぎないにもかかわらず、「重大な損害リスク」があると警告しており、所有権の喪失、流動性リスク、借り手の信用力審査の不十分さ、消費者理解の不足などをリスク要因として挙げている。

なお機関投資家のアクセスは今後も維持される予定だという。

加えてFCAは、「ステーキング」に関する透明性の向上と消費者理解の促進にも取り組む方針だ。ステーキングとは、ブロックチェーンネットワークにデジタルトークンをロックし、その見返りとして報酬を受け取る仕組みである。FCAが委託した調査によれば、暗号資産を保有する英国の成人のうち27%がステーキングを利用した経験があるという。

法律事務所ノートン・ローズ・フルブライト(Norton Rose Fulbright)のパートナーであるハンナ・ミーキン(Hannah Meakin)氏は、FCAがイノベーションと適切な監督のバランスを取ろうとしているが、「このバランスを適切に取れるかは実行を見て判断するしかない」と述べている。

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
Britain to bar consumers from borrowing to buy crypto under new regime
(Reporting by Tommy Reggiori Wilkes, Editing by Iain Withers and Louise Heavens)
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
画像:Reuters

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大津賀新也

「あたらしい経済」編集部
記者・編集者
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

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ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

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