Project Eleven、量子計算でビットコイン暗号解読に挑む「Q-Day Prize」発表

暗号解読リスクを可視化へ

量子コンピューティング研究企業プロジェクト・イレブン(Project Eleven)は、ビットコインの暗号を破った者に1BTCを贈呈する「Q-Day Prize」を4月16日に発表した。

この賞は、量子コンピューター上で「ショア(Shor)のアルゴリズム」を用いて「楕円曲線暗号(Elliptic Curve Cryptography:ECC)」を破ることを条件とし、最初に成功した個人またはチームに1BTCを贈るというものだ。

なお「ショアのアルゴリズム」とは、量子コンピューターによって素因数分解や離散対数問題を高速に解くことができるアルゴリズム。ピーター・ショア(Peter Shor)氏が開発し、1994年に発表された。

プロジェクト・イレブンは声明にて、「この賞の目的はシンプルながら緊急性が高い。量子コンピューティングがビットコインの中核的な暗号技術に対して、どれだけ実質的な脅威となり得るかを定量的に評価することにある」と述べた。

業界では、量子コンピューターの性能向上が将来的に暗号化技術を破り、ビットコインの安全性に影響を与える可能性があるとの懸念もある。

ビットコインは現在、取引の署名に「楕円曲線デジタル署名アルゴリズム(ECDSA)」を採用している。量子コンピューターは、「ショアのアルゴリズム」を用いることで公開鍵から秘密鍵を導き出し、ウォレットの安全性を侵害する可能性が指摘されている。

プロジェクト・イレブンは、「Q-Day Prize」は量子技術の実力を試し、暗号解読の限界を示し、世界が次のステージに備えるためのものだとし、「暗号化の未来はこれに懸かっている」と強調した。

この賞は、機関所属の有無に関係なく、個人またはチーム単位での参加が可能。現在応募を募集しており、締め切りは2026年4月5日とされている。

世界のインターネット企業のいくつかは、量子コンピューティングプロジェクトに取り組んでいる。

グーグル(Google)は、量子コンピューターチップ「ウィロー(Willow)」を昨年12月9日に発表した。​

グーグルの発表によれば、「ウィロー」は現在の最速のスーパーコンピューターでも10の25乗年(10 septillion years)かかる標準的なベンチマーク計算を5分未満で実行できるという。また、より多くの量子ビットを使用して拡張するにつれ、「ウィロー」はエラーを指数関数的に削減できるため、この分野が約30年間にわたって追求してきた量子エラー訂正に関する課題を解決できるという。​

さらにマイクロソフトは今年2月、8つのトポロジカルキュービット(Topological Qubit)を搭載した「Majorana 1」量子チップを通じて、量子計算の実用化に向けた大きな一歩となる技術を公表した。このチップは、現在の暗号化モデルの一部を破る可能性があるとされている。​

なお、キュービットとは、量子コンピューティングの最小単位で、古典コンピューティングにおける「ビット」に相当するもの。

トポロジカルキュービットは、ノイズや環境のゆらぎに弱く、エラーが頻発しやすい通常のキュービットに比べて、外部からの影響を受けにくく、より高精度な量子計算を実現することが可能な量子ビットだ。

参考:Q-Day Prize
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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