米裁判所、DOJが課した「Tornado Cashへの制裁」を覆す

地裁へ差し戻しへ

米裁判所が、暗号資産(仮想通貨)のミキシングプラットフォームの「トルネードキャッシュ(Tornado Cash)」に対する制裁を覆した。1月21日の裁判資料から確認できる。

暗号資産ミキサーは、ユーザーがデジタル資産の出所や所有者を隠せる、匿名化ソフトウェアツールである。「トルネードキャッシュ」への制裁は、米財務省の外国資産管理局(OFAC)が「国際緊急経済権限法」に基づいて課したものであった。

OFACは、「トルネードキャッシュ」がサイバー犯罪の利益を洗浄する手助けをしていると結論付け、特に北朝鮮政府に支援されているハッカー集団「ラザルスグループ」が盗んだ4億5,500万ドル(約711.8億円)以上を含む資金の洗浄に関与していたとして、「トルネードキャッシュ」を2022年8月にブラックリストに載せた。

この制裁により、「トルネードキャッシュ」の開発者アレクセイ・ペルトセフ(Alexey Pertsev)氏は昨年5月逮捕され、オランダで資金洗浄の罪で5年4ヶ月の懲役刑を言い渡された。トルネードキャッシュの創設者ロマン・セメノフ(Roman Semenov)氏とロマン・ストーム(Roman Storm)氏は2023年に、ニューヨークの連邦検察官から資金洗浄および制裁違反で別々に起訴されている。

今回の米裁判所の決定は、このOFACの制裁を覆すものだ。

裁判資料には「地方裁判所の判決を破棄し、本裁判所の意見に従ってさらなる手続きを行うため、地方裁判所に差し戻すことを命じ、裁定する」と記されている。

また、スタンフォード大学の著名団体「スタンフォード・ブロックチェーン・クラブ(Stanford Blockchain Club)」は、12月14日に公開した報告書「トルネードキャッシュと送金の限界について:Tornado Cash and the Limits of Money Transmission」の中で、司法省(DOJ)が2023年にストーム氏とセメノフ氏を起訴するために米国法典第19編第1960条をどのように適用したかを細かく分析している。

DOJは、「トルネードキャッシュ」を、本質的に「無許可の送金事業」であると主張しているが、「スタンフォード・ブロックチェーン・クラブ」は、分散型ブロックチェーン技術に時代遅れの法律を当てはめることには無理があると主張している。

同団体は、「DOJがこの件で米国法典第19編第1960条を強引に適用したことは、ブロックチェーン技術の直接的な文脈をはるかに超えた疑問を提起するもの」だとし、「この起訴の核心は、選挙で選ばれていない役人が、新たな課題に対処するために法令の文言を拡大解釈すること、司法機関に憲法上の権限を超えた行動を促すこと、そして裁判官席から立法を行うことで議会の権限を奪うことの危険性を示すものだ」と主張している。

またこの報告書では、民主的な手段によって作られた、シンプルかつ未来志向の規制が推奨されている。報告書は、このような明確性こそが、米国の法制度への信頼を維持し、グローバルな技術競争で優位に立つための鍵であると主張している。

参考:裁判資料Tornado Cash and the Limits of Money Transmission
画像:iStock/Ninja-Studio

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