今週もSBI VCトレード提供の暗号資産(仮想通貨)に関するウィークリー・マーケットレポートをお届けします。
6/1~6/7週のサマリー
・トランプ大統領とイーロン・マスク氏の対立激化
・中国政府がレアアースの輸出許可
・米Circle社、ニューヨーク証券取引所に上場
・米5月雇用統計は好結果により景気減速懸念が和らぎ、FRBの早期利下げ観測が後退
暗号資産市場概況
6/1~6/7週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比+1.39%の15,331,850円、ETH/JPYの週足終値は同▲0.31%の365,605.0円であった(※終値は6/7の当社現物EOD[6/8 6:59:59]レートMid値)。
先週の暗号資産市場は、前半は比較的ボラティリティの低いレンジ相場から一転、後半はトランプ大統領とイーロン・マスク氏の激しい対立での急落、中国のレアアース(希土類)輸出規制の解決見通しやステーブルコイン「USDC」発行企業Circle社のIPO成功等を背景に下げ幅を回復と総じてボラタイルな推移となった。
前々週の下落相場から週央までは、米国の現物ビットコインETFが6月3日には3.7億ドル超の純流入を記録するなど一旦下げ止まりを見せ、103,800ドルから106,900ドルのレンジで推移。週初にトランプ大統領が自身のSNS「Truth Social」にて対中関税に関する裁判の判決が米国経済に打撃を与えると警告、裁判所に牽制をかけた投稿をし、先行きの不透明感から一時的に売られるも影響は限定的だった。3日に発表された4月JOLTS求人件数は市場予想を上回る結果となり、一時106,900ドルまで強含んだが上値は重く、その後上げ幅を縮小した。
週央、トランプ大統領は中国の習近平国家主席との電話会談を行い、「非常に前向きなものだった」と述べ、関税やレアアースの世界的供給をめぐる行き詰まりを打破すべく両国が貿易協議を行うと発表。これが米中の緊張緩和に繋がるとの期待から底堅く推移しビットコインは一時106,000を回復する場面も見られた。
6日、トランプ大統領がイーロン・マスク氏に対し、「数十億ドル規模の予算を節約する最も簡単な方法は、政府補助金と契約を打ち切ること」と同氏への失望と電気自動車(EV)の補助金削減について言及。一方イーロン・マスク氏もそれに対し「恩知らず」「私がいなければトランプは選挙に敗れていた」などと応酬し、米大統領と著名テクノロジーリーダーの亀裂は決定的となり、世界市場に新たな不確実性を引き起こし投資家心理が悪化したことで、ビットコインは一時100,300ドル台まで急速に売り込まれた。この下落ではCoinGlassのデータによると、過去24時間でビットコインが3億4200万ドル(約495億9000万円)を超える清算額を記録した。
その後はテスラ株が時間外取引にて回復傾向で推移した他、トランプ大統領がレアアース輸出規制の解決に楽観的な姿勢を示したことを好感した自動車株等の反発がリスク性資産全般の上昇を後押し。また、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に新規上場したステーブルコイン「USDC」発行企業であるCircle株が168%の急伸とIPO成功も背景に、暗号資産市場も好感しビットコインはじめ幅広い銘柄が反発。加えて6月6日に発表された5月雇用統計が市場予想を上回り、労働市場の底堅さが確認されたことで景気減速懸念が和らぎ、米連邦準備制度理事会(FRB)は早期利下げに踏み切らない可能性が改めて意識された。このためリスク性資産全体に買いが入り、ビットコインは105,400ドル台まで回復し、前日の下げ幅を取り戻した。週末にかけても依然堅調に推移し106,000ドルを目指して引けた。
今週は6月9日に2回目の米中貿易交渉がロンドンで行われる他、引き続きトランプ大統領とイーロン・マスク氏の論争にも注視する必要があるだろう。また消費者物価指数(CPI)・生産者物価指数(PPI)のインフレ関連指標も控えていることに留意が必要だ。
1) BTC/USD週間チャート(30分足)
2) BTC/JPY週間チャート(30分足)

3) ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格

4) イーサリアム現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、イーサリアム価格

6/1~6/7週の主な出来事
6/8~6/14週の主な予定
【今週のひとこと】Circle社がニューヨーク証券取引所に上場
6月5日(現地時間)、ステーブルコイン「USDC」の発行会社であるCircle社がニューヨーク証券取引所(NYSE)で新規株式公開(IPO)を実施し、同社の株式(ティッカーシンボルCRCL)はIPO価格の31ドルを大幅に上回る69ドルで取引が開始されるとその後も上昇、IPO価格から約168%上昇した83.23ドルで初日の取引を終えました。
そして、翌日にはApple、X、Airbnb、Googleなどの大手企業が暗号資産企業とステーブルコインの活用に関する初期段階の協議を進めていると報じられたことにより、同社の株価はさらに上昇、6月6日(現地時間)の終値は前日比で約30%高の107.7ドルとなり、時価総額は230億ドルを上回りました。
今回のIPOにより、同社と共同創業者のジェレミー・アレール最高経営責任者らは保有する株式を3,400万株売却し、約11億ドルの資金を調達、キャシー・ウッド氏のアーク・インベスト・マネジメントはCircle社の株式が公開された初日に同社の株式を約450万株購入しました。
現在、Circle社が発行しているUSDCの時価総額609億ドルは、Tether社が発行しているUSDTの時価総額1,530億ドルに次いで二番目に大きい数字となっており、ステーブルコイン市場全体の時価総額は今月に入り、初めて2500億ドルを上回りました。
また、2024年にはステーブルコインでVisaとMastercardの取引量の合計を上回る27兆6000億ドルを超える取引が行われ、一部のアナリストはステーブルコイン市場が2028年までに2兆ドルに達すると予想しています。
このようにステーブルコイン市場が急速に成長している背景には、法案可決が予想されているGENIUS法(米国でステーブルコインを規制・合法化するための包括的な法案)はじめ規制の明確化や機関投資家の参入などがあり、ステーブルコインの発行会社として初めてIPOを行ったCircle社がステーブルコイン市場に今後どのような影響を与えていくのかが注目されます。
このレポートについて
国内の暗号資産(仮想通貨)取引所「SBI VCトレード」提供の週間マーケットレポートです。毎週月曜日に最新のレポートをお届けします。
<暗号資産を利用する際の注意点>
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暗号資産は、移転記録の仕組みの破綻によりその価値が失われる可能性があります。
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