日本のブロックチェーンゲームは世界を獲れるか?〜 B Dash Camp 2019 Spring in Sapporo「ビジネス化が進むクリプトゲームの現状」イベントレポート

2019年5月22日から24日に北海道札幌市で開催された「B Dash Camp 2019 Spring in Sapporo」のブロックチェーン関連のセッション「ビジネス化が進むクリプトゲームの現状」のレポートをお届けします。

スピーカー紹介

スピーカー:尾下順治 氏(アクセルマーク 代表取締役社長)、小澤孝太 氏(クリプトゲームス CEO)、上野広伸 氏(double jump.tokyo 代表取締役)
モデレーター:北原健 氏(B Cryptos ヴァイスプレジデント)

日本のブロックチェーンゲームとIP(知的財産)での可能性

イベント冒頭より各社のゲームの現状と取り組みをスライドを交えて、一通り話したあと、モデレーターであるB Cryptos ヴァイスプレジデント北原健 氏(以下北原氏)が海外のブロックチェーンゲーム企業がエコシステムにIP(知的財産)を積極的に取り入れている状況を例に、各社の見解を求めた。

クリプトゲームス CEO小澤孝太 氏(以下小澤氏)は、「海外のMLBのIPがブロックチェーンゲームとして扱われていて面白いとは思うが、正直早いと思う。」とし、「権利者がいる中で、ゲームを制作するのはどうしても制約が発生する。制作スピードが遅くなることやチャレンジができなくなるなど、IPを先行して進めることが、ゲームとしての面白さを損なうことにつながってしまうのではないか。まずはフォーマットの掘り下げをすべきだと思う」とコメントした。

double jump.tokyo 代表取締役上野広伸 氏(以下上野氏)は、「同意見で時期早々だと思います。自社のマイクリプトヒーローズ(以下MCH)がブロックチェーンゲームのテンプレートになりつつあるが、それでも正解はわからない。超強力なIPは色々模索されて形作られていくものだと感じています。」

そのコメントに対して北原氏が、「日本の様々あるアニメマンガのキャラクターなど潤沢なIPがあることは、日本がブロックチェーンゲーム大国になりえる可能性があるか?」と質問をしたところ、

上野氏は、「日本がブロックチェーンゲーム大国になることはありえます。GDC(Game Developer Conference)で話を聞いても、海外だとプレセールで販売して稼ぐことで売り逃げをするビジネスモデルしか考えていないところが大半。

そこでしっかりとMCHはエコシステムとして回っていて、ユーザーがブロックチェーンゲームの在り方に気づいている。そして、アニメを見ていても日本はIPが強い。それを考えると、タイミングさえ逃さなければ、日本がブロックチェーンゲーム大国になるのは、ワンチャンスあるかなと考えています。」とコメントした。

重ねて小澤氏が、「MCHのおかげで ブロックチェーンゲームの在り方が業界的に認知されたと思っています。実際にその状況をみて我々もシステムを作り直しています。しかし海外勢はまだその在り方に気づいていない企業が多いので、日本が世界で勝ち切るチャンスがあると思っています。」コメントした。

アクセルマーク 代表取締役社長 尾下順治 氏(以下尾下氏)は、
「この界隈は間違いなく胡散臭いと思われている。胡散臭いものだからこそしっかりやって、いいものを作って、マーケットそのものを育てていこうっていう感覚は持つべきだと思っています。しかし、あまり海外の企業を見ていると、『本当に売り逃げでいいんじゃないの?』みたいな感じのところが実際にあるので、ちゃんとやっているプレイヤーがたくさんいる日本は本当にチャンスがあると思います。」とコメントした。

プレイ目的の違うユーザーは共存できるのか?

続いてモデレーターの北原氏が、「ブロックチェーンゲームが資産運用的な側面がどうしても発生する中で、資産運用型のプレイヤーとピュアなゲーマーが共存できないという説を聞くのですが、どうお考えですか?」と質問をした。

上野氏は、「MCHではトレーディングで儲かることを推しているわけではないんですけど、トレーディングも一つのゲーム性の1つだとして楽しんでくれればいいなと思っています。今までトレードはトレーダーが上手くトレーディングする世界だったのが、ゲームをしている人達もトレードの世界に飛び込んで、ゲームが上手いこと自体を武器にして、使えないとされていたカードで勝つことで、そのカードを有名にしてトレードしています。トレードの世界が結構面白くユーザーに伝わっているので、共存すると僕は思います。」とコメント。

そして、「MCHには『士農工商』というプレイシステムを決める考えがあります。対戦を中心に楽しむ人(士)、クエストの中でアイテムを手に入れるだけの人(農)、絵を描いて高く売る人(工)、トレーディングで儲ける人(商)みたいな。そういう別々のペルソナをあえて入れています。」

さらに、「経済合理性だけを追い求めたらこの価格になるとか、攻略合理性だけを追い求めたら多分この編成が一番強いとか。それが終着点になってしまうと、それ以上進まずに面白くないんです。あえて別々のペルソナの目指すべき最終到達点の違いによるゲームの流れが、エコシステムを回すゲーム性にしてます。なので、あえて違うペルソナがいた方が絶対にいいと思います。」と語った。

続いて尾下氏は、「共存できるかできないかはシンプルな話で、そこはゲーム運営の腕の見せ所だと思っています。現実に起こっていることを例にすると、『荒野行動』には純粋なゲーマーと出会い目的のユーザーが共存しているんです。

目的が違うのにそれを全部許容して、どちらのタイプのプレーヤーにとっても、心地よい空間のゲームデザインになっているかどうかがすべてだと思います。なので、トレード目的や資産形成目的の人と、本気でそのゲームの中で戦っている人が共栄共存するようなゲームバランスになっていればいいだけです。」とコメントをした。

小澤氏は、「まだ業界が始まって1年で、開発期間や開発コストの問題、ゲーム自体制作中のところも多いと思いますが、これから本質的に面白いゲームが出てきたときに確実に共存は広がっていくと思っています。」とコメントした。

ブロックチェーンと相性の良いジャンルのゲームとは?

北原氏が、「どういったゲームがブロックチェーンと相性がいいのでしょうか?私自身は『マインクラフト』をはじめとした、UGC(ユーザー・ジェネレーテッド・コンテンツ)ジャンルが合うと思っています。ブロックチェーンゲームが、既存のジャンルのどういったところと今後競合しうるのか?」と質問。

この質問に尾下氏は、「僕らの究極の目標はブロックチェーンゲームという言葉をなくすことだと思っています。ブロックチェーンによってゲーム内のアセットが定義されていて、『非ブロックチェーンのゲームは時代遅れでやりたくない』っていうところまで持っていくのが僕たちの目標です。なので、すべてのゲームに適用されると思います。」と話し、

「そのなかでも僕は相性がいいのはMMO(大規模多人数型オンラインMassively Multiplayer Online)だと思います。本当にその中に住んでる、暮らしてる人がいるようなゲームこそブロックチェーン実装を早く進めるべきかなとは思います。」とコメントした。

続いて上野氏は、「ブロックチェーンと相性が一番合うのはMMOだと思っています。MCHも表向きはRPGなんですが簡易MMOみたいなところも目指しています。他に合うものだと、二社ともやられているTCG(トレーディングカードゲーム)があります。他にもUGCのマインクラフト系も相性はいいでしょう。」とし、

「そしてもう一つあるのが、ギャンブルです。ブロックチェーンで完全にロジックがオープンにされた状態の不正ができないギャンブルのゲームは、技術的にも相性が合います。ただ、色々な法規制の中ではできません。無理にやりすぎると結局ユーザーが離れていってしまうので、辞めたほうがいいとは思っています。」とコメントをした。

続いて尾下氏がギャンブルについて、「結局どんな国でもギャンブル・賭博に対して規制がかかってないところはほぼありません。社会実装を考えた時に、既存のルールとどう適合させていくかはすごく大事なので、ギャンブルに関しては早くルール作ったもの勝ちだと思います。反対に日本は早くルールを作って、日本拠点に世界中に向けてブロックチェーンでのギャンブルサービスをやっていくのは僕は全然ありだと思っています。」と語った。

Web3に期待をすること

続いて北原氏は、「ブロックチェーンゲームはWeb3において、どういった役割を果たしていくと思われるでしょうか?」と質問を続けた。

尾下氏は、「ゲームで暮らせる人が増えるといいなと思います。ゲームの社会的地位はいまだに高くありません。ただ、それが解決するのは時間の問題だと思っていて、ゲームを一生懸命頑張って、ゲームの中で誰かに貢献する事がその人の職業になる未来は、もうすぐそこまで来ていると思ってます。

そういう世界が来るためにもブロックチェーンというのは要素技術として、すごく大事なことだと思います。そして、すべてのゲームが当たり前にブロックチェーンを実装していく未来を実現できれば、僕たちの生活スタイルや、新しい職業の選択の可能性が広がっていくと思ってます。」とコメントをし、

さらに、「やはり日本から勝てるビジネスモデル、ビジネスをどうやって作っていくかを考えていきたいです。ここにいる世界一のMCHの上野さんと僕らで律儀にオープンに色々なことをディスカッションしあって、他の企業にもどんどんこのコミュニティの中に入ってもらって、みんなでブロックチェーンゲームを作って、『やっぱり日本のゲーム面白いよね』っていう時代をもう一回作っていきたいと思います。」と希望を合わせて自らの思いを語った。

続いて小澤氏は、「前提として、デジタル・アセットの資産化は必ず来ると思っています。その中で、今は怪しい業界だと思われていたり、ソーシャルゲームの方が売上や市場が大きいという理由で色んなゲーム会社さんがまだ入ってきていません。法令的にはまだ足踏み状態でブルーオーシャンの領域だと思います。ベンチャーとしてはものすごいありがたい状態でこの1〜2年位は続くと思っています。やはりここに世界一の事例(MCH)がありますので、この勢いままにAll JAPANで勝っていければとやっております。」とコメントした。

そして、世界一のMCH上野氏が続ける。
「各社もしくは個人がどんどんブロックチェーン上で何かシステムを作っていって、ちゃんとインセンティブが入っていく仕組みができれば、同時並行的に自分たちがインセンティブを生み出して、同時並行的に加速度的に開発ができます。これこそがWEB3.0の本当の強みだなと思っています。

そうなったときにどんなに強くても一社だけだと成しえない、加速度的に進化する世界が来ると思います。そして、その時にNFT(Non Fungible Token)が活躍できるエコシステムや仕組みが作れればすごく面白くなると思っています。」

最後に

続けて、会場より上野氏に向けて、「MCHは世界一のブロックチェーンゲームですが、日本と海外で同じようにブロックチェーンがメディアで取り上げられているのにも関わらず、日本のユーザーが大きく伸びたように、どうして日本ではうまくいったのか、反対に海外ではうまくいっていないところを教えて頂きたいです。」との質問が挙がった。

その質問に対して上野氏は、「僕自身、ブルーオーシャンビジネスをしたの初めてだったんですが、まず気づいたのはブルーオーシャンって誰も船いないんですけど、どこに魚がいるのかもわからない状態だど気づいたんです。そこで、日本はブロックチェーンをはじめとした変わったゲームにすぐ飛びつく人が結構Twitterに生息していました。なので日本ではTwitterを中心にユーザーを集められるなっていうのがあります。しかし、国ごとによってそれぞれ違うと思いますが、海外のユーザーがどこに生息しているのかをまだ探り当てられてないのが大きな原因かと思います。」と語った。

続いて尾下氏が、最後に言い残した事として、「孫正義氏が以前インタビューで『いかがわしくあれ』と答えていました。ブロックチェーンとゲームの組み合わせやRMT(リアルマネートレード)は胡散臭い、怪しいと思われていますが、僕らはその先に本当にイノベーションがあると思っています。いかがわしいと思われている時期は本当に大資本の企業は参入してこないので、すごく戦いやすい領域です。

特にスタートアップでスマホゲームを作っても資金がかかりすぎて、なかなか完成まで持って行けないと思うので、ぜひ、ゲームを作って起業したいスタートアップの方は、ブロックチェーンゲームを一つ選択肢に入れていただけるといいんじゃないかなと思います。」と自らの想いを語った。

そして北原氏が最後に、「今登壇されている三社は、初期の段階ではありますが着実にビジネスとして売り上げも立ってきていて進んでいます。しかし、新しいビジネスモデルは、まだ限定的なところがあって模索をしている。ここに次の革新的なビジネスモデルやキラーアプリが何かしらの形で出てくれば、一気に発展が加速すると思っています。」

「WEB3.0の風潮の中で思うところは、日本はブロックチェーンゲームでは相当ポテンシャルを抱えている国だと思います。IPもあって、信頼もあって、優秀なゲームクリエイターもいっぱいるこのAll Japanで、ゲーム産業を作っていく。将来的にはブロックチェーンゲーム大国になって、日本の存在感をより一層強めていくことが国を潤していくのかなと思っております。

ここで色々とお話しした内容が実際この10年どのような形になっていくのか楽しみですし、こういったアントレプレナーの方々のご活躍を見ていきたいなと思います。」と締めくくった。

(おわり)

この記事の著者・インタビューイ

大津賀新也

「あたらしい経済」編集部
記者・編集者
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

「あたらしい経済」編集部
記者・編集者
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

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