米中間選挙、民主党が上下両院を奪還へ。トランプ一族の暗号資産事業に調査及ぶか=報道

民主党、激戦区で勝利重ね下院奪還

米国で11月3日に投開票された中間選挙で、野党・民主党が連邦議会下院の過半数を奪還する見通しとなった。NBCニュースなどが同日夜に報じた。翌4日には上院でも民主党の過半数獲得が報じられた。

民主党はトランプ政権の政策を議会で阻止する力を強めるほか、委員会の調査権限を活用し、ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領と一族が関与する暗号資産(仮想通貨)事業などへの追及を本格化させる構えだ。

民主党が上下両院の多数派奪還へ

民主党は共和党が保持していた郊外や激戦区で勝利を重ね、下院の過半数に必要な218議席を確保する見通しとなった。

ニュージャージー州第7区では民主党のレベッカ・ベネット(Rebecca Bennett)氏が共和党現職のトム・キーン・ジュニア(Tom Kean Jr.)氏を破った。バージニア州第2区ではエレイン・ルリア(Elaine Luria)元下院議員が議席を奪還したほか、コロラド州第8区ではマニー・ルティネル(Manny Rutinel)氏、ノースカロライナ州第11区ではジェイミー・エイジャー(Jamie Ager)氏が勝利した。共和党が区割り変更によって議席獲得を狙ったフロリダ州の3選挙区でも、民主党が議席を維持した。

下院選は開票作業が続いており、最終的な議席数は確定していない。

トランプ大統領は選挙戦で中間選挙を自身への信任投票と位置づけていたが、結果を受け、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル(Truth Social)」に、自分が候補者だったら圧勝していたと投稿した。

「弁護士を雇え」、ガルシア議員が警告

民主党の勝利を受け、新議会で下院監督・政府改革委員会の委員長に就く見通しのロバート・ガルシア(Robert Garcia)議員は11月4日(日本時間)、自身のXアカウントに「LAWYER UP.(弁護士を雇え)」と投稿した。

ガルシア議員は下院監督委員会の民主党側が公表した声明でも同様のメッセージを発信。トランプ一族をめぐる汚職疑惑や企業の不正、国土安全保障省(DHS)と移民税関捜査局(ICE)による権限乱用の疑惑、性犯罪で起訴された故ジェフリー・エプスタイン(Jeffrey Epstein)氏の関連文書をめぐる問題などを追及する姿勢を示した。

同氏が調査対象として重視しているのが、トランプ一族が巨額の収入を得てきた暗号資産関連事業だ。

対象には、トランプ大統領が関与する暗号資産プロジェクト「ワールド・リバティ・ファイナンシャル(World Liberty Financial:WLFI)」のほか、長男ドナルド・トランプ・ジュニア(Donald Trump Jr.)氏の事業や、娘婿ジャレッド・クシュナー(Jared Kushner)氏の投資活動などが含まれる可能性がある。

またガルシア議員は、クリスティ・ノーム(Kristi Noem)前国土安全保障長官とコーリー・ルワンドフスキ(Corey Lewandowski)氏をめぐる契約上の不正疑惑などについても調査する考えを示している。

民主党が2027年1月に下院監督委員会の主導権を握れば、委員会の召喚権限を活用し、政府機関や民間企業に文書提出や証言を求めることが可能になる。ガルシア議員は、多数派となった後、速やかに調査を進める意向を示している。

WLFIへのUAE資本流入や銀行免許が焦点に

初期の調査対象の一つとして注目されるのが、トランプ一族が関与する暗号資産企業ワールド・リバティ・ファイナンシャルだ。

同社をめぐっては、アラブ首長国連邦(UAE)の国家安全保障顧問を務めるタフヌーン・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン(Tahnoon bin Zayed Al Nahyan)氏の関係する投資会社が、2025年1月に49%の持ち分を5億ドルで取得する契約を結んでいたことが報じられている。

民主党は、外国政府と関係の深い資本が大統領一族の事業に流入したことについて、利益相反や国家安全保障上の問題がないか疑問を呈してきた。

さらにWLFI関連のワールド・リバティ・トラスト・カンパニー(World Liberty Trust Company)は、米財務省傘下の通貨監督庁(OCC)に国法信託銀行免許を申請し、2026年8月に条件付きの予備承認を取得した。

同免許は最終承認前の段階にあり、正式な営業開始には追加条件を満たす必要がある。民主党による調査では、規制当局による審査や承認過程とトランプ一族の事業上の利益との関係も焦点になる可能性がある。

バイナンス創業者の恩赦や政府契約も調査対象に

暗号資産分野ではこのほか、大手暗号資産取引所バイナンス(Binance)の共同創業者チャンポン・ジャオ(Changpeng Zhao:CZ)氏への恩赦も、議会による調査の焦点となる可能性がある。

バイナンスはWLFIの米ドル連動型ステーブルコイン「USD1」に関連する事業に関与しており、民主党は同社との事業関係や恩赦決定に利益相反がなかったか問題視している。

また、トランプ大統領の次男エリック・トランプ(Eric Trump)氏や長男トランプ・ジュニア氏が株主、役員などとして関与する企業が、政府から不当な優遇を受けていなかったかも調査対象に挙がっている。

下院監督・政府改革委員会の民主党側によると、両氏と関係する企業はトランプ政権発足以降、政府の融資や補助金、契約などを通じて計7億2500万ドル超を獲得したという。ただし、この金額は民主党側の集計によるものであり、政府による不正な優遇が認定されたことを意味するものではない。

ロイター通信が9月28日に報じたところによると、トランプ・ジュニア氏が関与する投資会社「1789キャピタル(1789 Capital)」や、クシュナー氏の投資会社「アフィニティ・パートナーズ(Affinity Partners)」も調査対象として検討されている。

ホワイトハウスの舞踏場建設に寄付した企業なども初期の調査対象となる可能性がある。ロイターは、民主党が多数派を獲得した場合、調査が早ければ2027年2月にも始まる可能性があると報じていた。

大統領の拒否権が立法上の壁に

一方、民主党が上下両院で過半数を確保しても、トランプ政権の政策を全面的に覆せるわけではない。

議会で可決した法案が成立するには原則として大統領の署名が必要で、トランプ大統領が拒否権を行使した場合、これを覆すには上下両院それぞれで3分の2の賛成が必要となる。

民主党は医療保険制度の見直しや関税をめぐる議会権限の回復などを優先課題に掲げているが、その実現には大統領の拒否権が大きな障壁となる。

ただし、予算審議や議会の監督権限を通じて、政権への圧力を強めることは可能だ。

今後2年間、トランプ政権と議会民主党の対立は、政策や予算をめぐる交渉だけでなく、大統領一族の暗号資産事業や政府との取引をめぐる調査にも広がる可能性がある。

参考:報道 
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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