クロノス、テクトニックのエクスプロイト受けネットワーク停止。約75Mドルの被害規模との外部分析も

テクトニックでエクスプロイト、クロノスがネットワーク停止

レイヤー1ブロックチェーン「クロノス(Cronos)」上のレンディングプロトコル「テクトニック(Tectonic)」にてエクスプロイトが確認され、ネットワーク停止した。クロノスの公式Xアカウントが8月30日に明らかにした。

テクトニック側からも同日、同プロトコルに影響するインシデントを認識し、調査を進めていることが発表された。安全性が確認されるまで、プロトコルを利用しないようユーザーへ呼びかけられている。現時点でクロノス・ネットワークとテクトニックは、原因や影響額を公表していない。

テクトニックは、暗号資産(仮想通貨)の貸し借りを提供するクロノス上の分散型レンディングプロトコルだ。ユーザーは暗号資産を預け入れて利息を得るほか、預け入れた資産を担保として別の暗号資産を借り入れられる。

なお、クロノスは、暗号資産取引所クリプトドットコム(Crypto.com)と関係の深いブロックチェーンだ。同社CEOのクリス・マーザレック(Kris Marszalek)氏は、クリプトドットコムのアプリと取引所に今回のインシデントによる影響はなく、通常通り稼働していると自身のXアカウントで説明した。同社のセキュリティチームは、クロノスによる調査を支援しているとのことだ。

TONICの価格操作で借入可能額を拡大したか

今回の攻撃手法について、オンチェーン分析を行うウェイリン・リー(Weilin Li)氏は、テクトニックのガバナンストークン「TONIC」の価格を操作し、担保としての評価額を引き上げる手法が使われたとの分析を示している。

テクトニックの公式資料に掲載されたメインプールのパラメータ(2025年5月時点)では、TONICの担保係数(Collateral Factor)は20%と記載されている。担保係数は、預け入れた資産の評価額に対して、どの程度まで別の資産を借り入れられるかを示す数値だ。担保として預け入れたTONICの評価額が100ドル(約1.6万円)の場合、20ドル(約3,200円)分まで別の資産を借り入れられる計算となる。

この仕組みでは、TONICの価格が上昇すると同じ数量でも担保評価額が増え、借入可能額も拡大する。テクトニックは過去に公開した公式資料でも、流動性の低い資産は価格操作の影響を受けやすく、価格を引き上げた資産を担保として流動性を借り入れるリスクを説明していた。

リー氏は、攻撃者が流動性の低いTONICの価格を約20分間で約100倍に上昇させ、評価額が膨らんだTONICを担保として別の資産を借り入れたと分析した。

リー氏は当初、今回の影響額を約6,600万ドル(約106億円)と推定。その後、別の攻撃者関連アドレスで約800万ドル(約12.8億円)相当の資産を確認したとして、推定額を約7,500万ドル(約120億円)へ引き上げた。攻撃手法と影響額はいずれもリー氏による分析で、クロノス・ネットワークとテクトニックによる公式な確認は取れていない。

約600万ドルがイーサリアムへ移動か

リー氏による当初の分析では、攻撃者は異なるブロックチェーン間で資産を移動する「ブリッジ」を通じて、約600万ドル(約9.6億円)相当の資産をイーサリアム(Ethereum)へ移動した。一方、約6,000万ドル(約96億円)相当の資産はクロノス上に残ったとのことだ。

クロノスのネットワークが停止すると、新たなトランザクションは処理されず、クロノス上の資産も新たに移動できなくなる。ただしクロノス・ネットワークは、今回ネットワークを停止した具体的な目的や、リー氏が指摘する残存資産との関係について説明していない。

クロノス・ネットワークは、ネットワークの再開時期や再開後の対応を現時点で明らかにしていない。テクトニックも原因や影響状況の調査を続けており、確認済みの情報が得られ次第、更新情報を公開する予定だ。

画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

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