デジハリ大学「現実科学研究所」と元吉本・大﨑洋校長の「雨ニモマケズ高等学校」連携、高校生対象のラボ設置へ

DHU「現実科学研究所」と雨ニモマケズ高等学校が連携

デジタルハリウッド大学(DHU)の「現実科学研究所」と雨ニモマケズ高等学校が連携し、高校教育と大学教育の接続をテーマとした新たな教育プログラムを開始することが8月26日に発表された。

DHUの現実科学研究所は、2026年7月31日に開設された同大学の学長直轄研究機関。研究で生まれた知を社会に実装し、その実装から新たな学びや研究テーマを生む「知の循環」の創出を目指している。

一方、雨ニモマケズ高等学校は、元吉本興業ホールディングス会長の大﨑洋氏が校長に就任し、2027年4月に開校予定の広域通信制・単位制の普通科高校である。

今回の連携では、高校生を対象としたラボを設置する。同ラボは大学教員から知識を学ぶだけでなく、生徒自身が問いを立て、調査し、つくり、試し、発表する一連のプロセスを通じて、大学レベルの研究やクリエイティブに触れる実践的な学びの場として展開される。

また、現実科学研究所をハブとして、研究者やクリエイターのほか、企業、行政、地域の関係者など、多様な人々と高校生をつなぐことも目指す。高校生が「教えられる側」にとどまらず、一人の参加者として社会にある問いと向き合い、大学生や研究者、社会人とともに考え、形にする経験を積むことで、その後の進路や学びにつながる機会を創出するという。

発表同日にはDHUで記者発表会と連携協定締結式が実施され、今回の連携に至った背景や取り組みに対する考え、今後の展望が説明された。

なお記者発表会には、雨ニモマケズ高等学校 校長 大﨑洋氏、学校法人幸和学園 理事長 新谷耕平氏、雨ニモマケズ高等学校 特別講師 山本新九郎氏、株式会社Wick 代表取締役社長 中道慶謙氏、デジタルハリウッド大学 学長 藤井直敬氏、デジタルハリウッド大学 特任教授 田中悠斗氏が登壇した。

今回の連携に至った背景

記者発表会ではまず、同校の設置者である学校法人幸和学園の理事長を務める新谷耕平氏が、今回の連携に至った背景を説明した。

新谷氏によると、同学園は2016年、閉園した幼稚園を引き継ぐ形で教育事業を開始。その後、保護者から不登校や高校中退に関する相談を受けたことをきっかけに、通信制高校の学習支援へと事業を広げたという。

狭域通信制のシンギュラリティ高等学校の運営を経て、全国47都道府県や海外から学べる広域通信制高校の開設を構想し、大﨑氏に校長就任を依頼したと説明した。

また同氏は、通信制高校には場所や相手を限定せずに学べる柔軟性があると指摘。教育を学校の中に閉じず、学校と社会、高校と大学をつなげるという考えが、田中氏や藤井氏の考えと重なったことから、今回の連携に至ったと述べた。

現実科学研究所が本連携に取り組む理由

続いて、DHU学長で現実科学研究所所長の藤井直敬氏が、同研究所が本連携に取り組む理由を語った。

藤井氏は、一般的な研究機関では、研究者が研究成果を論文などにまとめ、発表した時点で活動が完結することも多いと指摘。一方、現実科学研究所では、研究者やクリエイターが生み出した知を社会の中で実際に試し、そこで得られた反応や予想外の結果から新たな問いを見つけることを重視していると説明した。

研究から生まれた知を社会へ実装し、その実践から得た学びを次の研究へ戻すことで「知の循環」を生み出すことが、同研究所の役割だという。DHUにおける教育や学生の活動そのものも、こうした実践を行う場の一つに位置付けていると述べた。

また藤井氏は、AIの進化によって、知識を得ることや何かをつくることのハードルが下がりつつあると指摘。そのような時代には、知識や制作技術の量だけでなく、「何をつくりたいのか」という意思と、生み出したものを社会へ届ける責任が一層重要になるとの考えを示した。

その意思を持つためには、さまざまな人との対話や、現実の社会で起きていることに直接触れる経験が欠かせないという。高校生にも、用意された知識を受け取るだけではなく、自分なりの問いを見つけ、それを形にする経験を積んでほしいと話した。

今回の連携では、高校生を研究や実践の対象としてではなく、研究者や大学生、クリエイターとともに活動する一人の参加者として迎える。高校生が見つけた問いを試し、その結果から次の問いを生み出すことで、高校と大学の間に新たな知の循環をつくりたいと述べた。 

田中氏の連携に向けた考え

そして、同大学特任教授で株式会社フォアー/フォアーゼットの代表取締役を務める田中悠斗氏が、今回の取り組みに対する考えを述べた。なお、第1弾のラボとして、同氏による「田中ラボ(仮称)」が開講される予定である。

田中氏は、教育という言葉を聞くと、資格を持つ人が教室で知識を伝えるものと捉えられがちだと指摘。しかし実際には、社会のさまざまな現場で活動する人が、自身の知識や経験を次の世代へ手渡すことも教育の一つであるとの考えを示した。

各分野の先頭を走る人は、前へ進み続けるだけでなく、時には後ろを振り返り、これから同じ道を歩む若い世代へ声をかける必要があるという。田中氏は、そうした人々が次世代へ知識や経験の「バトンを渡す」機会をつくることが、今回の取り組みの意義だと説明した。

また、専門家が完成した知識を一方的に教えるのではなく、現在進行形で向き合っている課題や、物事を考える過程そのものを若い世代と共有することも重要だと述べた。教える側も高校生から新たな視点を受け取り、ともに考える関係をつくりたいという。

取り組みにおいては、社会の先端で生まれている知見だけでなく、すぐに役立つかどうかでは価値を測れない学びにも目を向ける考えを示した。効率や正解だけを求めるのではなく、生徒が自ら問いを持つきっかけとなる経験を重視するという。

なお田中氏は、会見時点ではラボで実施する具体的なプログラムを示していない。あらかじめ完成したカリキュラムを当てはめるのではなく、生徒や研究者、クリエイターなどとの対話を通じて、取り組みを組み立てていく意向を示した。

大﨑洋校長が語る連携への思い

雨ニモマケズ高等学校の初代校長を務める大﨑洋氏は、今回の連携について、DHUの学生と同校の生徒が同じ場で学ぶことで、教える側も学び直す相互的な関係が生まれるとの考えを示した。

大﨑氏は、リアルな現場とデジタル空間、アートを組み合わせた学びを構想していると説明。リアルな現場の例として、社会起業家・スタートアップ投資家でDHU特別講師の山本新九郎氏が取り組む、奈良県の山間部にあるニジマス養殖場を挙げた。

同養殖場では従事者の平均年齢が約70歳に達しており、後継者不足が課題になっているという。生徒が現地を訪れて人や仕事に触れ、そこで得た経験や発見を動画、写真、CG、デザインなどの形にして社会へ発信する学びが想定されている。

デジタル面では、株式会社Wickが提供するデジタルプラットフォーム「Wick」の活用が検討されている。会見に登壇した同社代表取締役の中道慶謙氏によると、Wickでは広告の視聴などで得たポイントを学費に充当できる仕組みを通じて、家庭の所得に左右されず学びへアクセスできる環境の実現を目指しているという。

大﨑氏は、東日本大震災やコロナ禍、世界各地の戦争を目にしてきた若い世代は、社会やコミュニティへの関心が強いとの見方を示した。そのため、まずは自然の中で五感や感情を動かす体験から学びを始めたいと話した。

また、効率や数値だけでは測れない「不便益」や寄り道も重視したいと説明。生徒自身がやりたいことを出発点としながら、現実にある制約の中で実現する方法を考える経験を通じて、主体性を育みたいと述べた。

今後の展望

会見の質疑応答では、今回の連携を起点として、学びの場を大学や高校の校内に限定せず、山間部や農地、商店街をはじめ、放送局、出版社、新聞社などへ広げていく考えが示された。

多様な現場で働く人々と接することで、生徒が社会にはさまざまな仕事や生き方があることを知り、自分に合った進路や関心のある分野を見つけられる環境をつくるという。

また、通信制高校は全日制高校と比べて登校日数や時間の使い方に柔軟性があることから、学校外での活動に多くの時間を充てられる。こうした特徴を生かし、地域での体験や企業・クリエイターとの共同活動を、日常的な学びとして取り入れる方針だ。

藤井氏は、AI時代には知識の量や制作技術だけでなく、最終的に何を生み出したいのかを想像する力が重要になると指摘。その力を育てるためにも、現場へ足を運び、人や自然、社会の課題に直接触れる多様な体験が必要になると説明した。

具体的な教育プログラムについては、学校側や大学側があらかじめ完成形を決めるのではなく、生徒、研究者、クリエイター、地域や企業の関係者との対話を通じて順次組み立てていくという。

高校生が研究や制作に参加し、そこで得られた成果や新たな問いを現実科学研究所の次の研究へ還元することで、高校、大学、社会の間を知が循環する教育モデルへ発展させる考えだ。

なお、田中ラボを含む教育プログラムは、雨ニモマケズ高等学校の開校に合わせて2027年4月から開始する予定。2026年11月からは東京キャンパスのプレオープン期間として、説明会などを実施する予定である。

参考:DHUプレスリリース

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大津賀新也

「あたらしい経済」編集部
副編集長
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

「あたらしい経済」編集部
副編集長
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

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