金融庁、暗号資産事業者のサイバーセキュリティ調査報告書を公表

バイビットなど10事例を分析

金融庁が、2025年度のブロックチェーン「国際共同研究」プロジェクトの報告書「暗号資産関連業者におけるサイバーセキュリティの課題と対策に関する研究調査」を7月23日に公表した。報告書は6月30日付である。

同報告書は、金融庁から委託を受けたデロイトトーマツが作成したもの。暗号資産関連業者を取り巻くサプライチェーンや、近年発生した暗号資産の不正流出事例を分析し、業界が講じるべきセキュリティ対策が整理されている。

なお報告書本編では10件のインシデントが分析されており、概要版ではそのうち、海外暗号資産取引所バイビット(Bybit)や分散型金融(DeFi)プロトコルのオイラー・ファイナンス(Euler Finance)など5事例が紹介されている。

また同報告書は調査研究を目的として作成されたものであり、金融庁の公式見解を示すものではないとされている。

サプライチェーン全体のリスクを分析

金融庁は2026年4月、「暗号資産交換業等におけるサイバーセキュリティ強化に向けた取組方針」を公表していた。

今回の研究調査では、暗号資産交換業者や関連する情報共有機関への調査成果の還元、国際的な議論への活用、暗号資産交換業者向けの事務ガイドラインにおけるセキュリティ水準引き上げの検討に役立つ知見の獲得が目的として掲げられている。

同調査は、暗号資産業界を構成するサプライチェーンの整理、近年発生した国際的な暗号資産流出事例の分析、暗号資産特有のリスクと対策の検討という3つのテーマを中心に実施された。

有識者会議には、京都大学名誉教授の岩下直行氏と米ジョージタウン大学研究教授の松尾真一郎氏が参加。日本銀行とデジタル庁がオブザーバーとして加わった。

また「Japan Fintech Week 2026」の期間中には、金融庁主催のラウンドテーブルで報告書に関する意見が収集されたほか、デジタル資産管理基盤を提供するファイアブロックス(Fireblocks)、タレスDISジャパン、ディーフィンズ(Dfns)などへの個別ヒアリングも実施された。

報告書では、暗号資産交換業者だけでなく、ウォレットサービスやAML・CFT(マネーロンダリングおよびテロ資金供与対策)サービス、オンチェーン情報サービス、ブロックチェーンのインフラサービスなど、暗号資産業界を構成する主要事業者を整理している。

また中央集権型取引所(CEX)から暗号資産を出庫する際の業務フローを図示し、利用者からの出庫依頼、トランザクションの生成、署名、ブロードキャストといった各工程に存在する攻撃対象を示した。

近年の暗号資産流出では、取引所のシステムそのものだけでなく、ウォレット事業者や外部開発者、クラウドサービス、ブロックチェーン間通信を担うプロトコルなど、外部のサービスや協力者が攻撃の起点になる事例も発生している。

報告書は、暗号資産交換業者が自社内の管理態勢だけでなく、委託先や接続先を含めたサプライチェーン全体のリスクを把握する必要があると指摘している。

概要版では、攻撃手法の異なる5件のインシデントについて、攻撃のプロセスと講じるべきだった対策が整理された。

事例分析では、委託先や外部開発者を経由した侵入、署名時の確認不足、スマートコントラクトの脆弱性、秘密鍵や発行権限の管理不備、クロスチェーン通信の検証不備、ブロックチェーン再構成への対応不足などが、複数の事例に共通するリスクとして挙げられた。

報告書は提言案として、再委託先を含む委託先管理の高度化、プログラム改ざんを想定した変更管理、署名時の厳格な検証、DeFiやクロスチェーンプロトコルにおける外部依存先の管理などを示している。

金融庁は今回の研究成果を暗号資産交換業者や情報共有機関に還元するとともに、国際的な議論や、暗号資産交換業者向け事務ガイドラインのサイバーセキュリティ水準引上げの検討に活用する方針だ。

参考:金融庁 
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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