米上院共和党が「CLARITY法」修正版を公表、倫理規定や法執行強化策を追加

ステークホルダー向け説明会を経て修正版テキストを公開

米上院共和党が、暗号資産(仮想通貨)の市場構造を定める「クラリティ法案(CLARITY Act)」の修正版テキストを7月22日(米時間、日本時間23日)までに公表した。

米ジャーナリストのエレノア・テレット(Eleanor Terrett)氏によると、今回公表された修正版は、ステークホルダー向け説明会を経て取りまとめられたものだ。法案には、倫理規定やブロックチェーン規制確実化法(Blockchain Regulatory Certainty Act:BRCA)のほか、暗号資産関連の法執行体制を強化する規定など、これまで注目されてきた複数の内容が盛り込まれている。

法案は600ページ超えで、市場構造の枠組みを定める「タイトルI」から法執行体制を定める「タイトルIX」まで、全9タイトルで構成されている。

今回新たに盛り込まれた倫理規定は、ホワイトハウスと共和党上院議員のシンシア・ラミス(Cynthia Lummis)氏、バーニー・モレノ(Bernie Moreno)氏との間で協議された内容で、民主党はこの協議に参加していないという。

この規定では、大統領や副大統領、連邦議会議員、連邦裁判所判事、その他の対象となる連邦高官・職員およびその配偶者を対象に、在任中、対価と引き換えにデジタル資産を発行またはスポンサーすることを禁止する。

また、1,000ドル(約163,000円)を超えるデジタル資産の売却については開示を義務付ける。一方、デジタル資産への投資自体は禁止の対象とはしていない。

さらに、米司法省(DOJ)に同規定の民事執行権限を付与し、倫理規定に違反して発行されたトークンを故意かつ意図的に上場した暗号資産取引所を提訴できるようにする内容も盛り込まれた。

民主党から反発の声も

一方、この倫理規定を巡っては、執行機関をDOJのみに限定したことに民主党が反発している。民主党は州司法長官にも執行権限を認めるよう求めたものの、受け入れられなかったという。暗号資産メディア「ザ・ブロック(The Block)」によると、アンジェラ・オールソブルックス(Angela Alsobrooks)上院議員は「DOJが倫理規定を執行する?それは真剣な提案とは言えない。この条文では支持できない」とコメントしている。

またデジタル資産の発行・スポンサー禁止やその執行規定には、2029年1月20日に失効する日没条項が設けられた。同日は現政権の任期満了日に当たる。ラミス氏はファクトシートの中で、この日没条項について「トランプ大統領が自ら選んだ基準であり、議会が課したものではない」と説明している。

なお、ザ・ブロックによると、この倫理規定はトランプ大統領の息子であるドナルド・トランプ・ジュニア(Donald Trump Jr.)氏およびエリック・トランプ(Eric Trump)氏には適用されない。両氏はトランプ一族が設立した暗号資産関連企業ワールド・リバティ・フィナンシャル(World Liberty Financial)に関与しているものの、成人した子どもは規定の対象外とされているという。

ブロックチェーン規制確実化法(BRCA)についても修正版テキストに盛り込まれた。業界関係者によれば、その内容は5月に上院銀行委員会を通過した際のバージョンから変更されていないという。

BRCAは、非カストディアル型のソフトウェア開発者やブロックチェーンインフラ提供者について、既存の金融規制上の対象事業者として扱わないことを明確化する内容となっている。

ステーブルコインの利回り提供を巡る規定についても、上院銀行委員会を通過したバージョンから変更はなかった。

同規定は、決済用ステーブルコインを保有していることだけを理由とする利息や利回りの提供を禁止する一方、決済、送金、流動性提供、ステーキング、ロイヤルティー制度など、実際の活動に基づく報酬は一定の範囲で認める内容となっている。

テレット氏によれば、トム・ティリス(Thom Tillis)上院議員が銀行業界への配慮として「サーキットブレーカー」条項の追加を検討しているとの見方もあったが、実際にはティリス氏とアンジェラ・オールソブルックス(Angela Alsobrooks)氏の間でまとめられた妥協案がそのまま維持されたという。

また修正版では、暗号資産関連犯罪への対応強化を目的としたタイトルIX「法執行ツール」が追加された。

同タイトルでは、州政府や地方自治体による暗号資産関連捜査やブロックチェーン分析ツールへの資金支援を拡充するほか、法執行機関や検察官向けの新たな研修プログラム創設が盛り込まれている。・また、財務省内にデジタル資産サイバー・イノベーション・センターを設置し、北朝鮮やイランなどの国家主体によるサイバー上の脅威に対応するほか、暗号資産詐欺への対策を担う官民合同タスクフォースを創設することも規定された。

さらに、ジーニアス法上の「適法な命令」の定義を拡張し、許可を受けた決済用ステーブルコイン発行者などに対し、適法な命令に基づいて対象トークンの移転防止、差し押さえ、凍結、焼却および必要に応じた再発行を行わせる内容も盛り込まれている。

このほか、暗号資産取引所やカストディアンが破産した場合のデジタル資産の取り扱いに関する規定も維持された。

この規定では、顧客のために保有される一定のアンシラリー資産やデジタル商品について、米破産法上の「顧客財産」として扱い、同法の規定に従って分配することを明確化している。

したがって、「破産財団へ組み入れられない」と断定するよりも、「一般債権と区別して顧客財産として取り扱う」とするのが正確である。テレット氏は、こうした規定がFTXの経営破綻で生じたような顧客資産を巡る問題の再発防止につながる可能性があると説明している。

参考:法案報道
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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