Visa・Mastercard依存の低減へ
欧州中央銀行(ECB)が検討を進める中央銀行デジタル通貨(CBDC)「デジタルユーロ」について、欧州のカード決済スキームを保護し、銀行を域内決済の中核に維持する設計とする方針が示された。ロイターが2月18日に報じた。
ECB理事会メンバーのピエロ・チポローネ(Piero Cipollone)氏は、イタリア銀行協会(ABI)での講演で、デジタルユーロは「銀行の決済における中心的地位を維持することを意味する」と述べた。
デジタルユーロは、中央銀行マネーとして中央銀行の口座ベースで管理され得る通貨として構想されており、銀行業界からは決済機能を奪われるのではないかとの懸念も出ていた。
しかしチポローネ氏は、決済のデジタル化により現金の利用が減少している現状を指摘し、「銀行が決済における役割を失うリスクは、デジタルユーロの有無にかかわらず存在する」と説明。ステーブルコインなど民間ソリューションの拡大も脅威だとした上で、デジタルユーロは銀行の役割維持を支える仕組みになり得るとの見方を示した。
銀行が失う可能性があるのは手数料収入だけでなく、顧客の決済データへのアクセスであり、それはより収益性の高いサービス提供の基盤となる情報だと強調した。
ECBはまた、イタリアのバンコマット(Bancomat)やスペインの送金サービス、ビスム(Bizum)など、欧州の国内決済スキームを保護する狙いもあると説明した。
デジタルユーロのインフラを活用した「コバッジ(co-badging)」方式により、各国スキームがユーロ圏全体で利用可能なカードを発行できるようにする。こうした機能は、2029年後半に想定されるデジタルユーロの正式導入より前に提供される見通しだ。
また加盟店が支払う手数料は、国際決済ネットワークより低く、国内スキームより高い水準に設定する方針が示された。これにより、国内スキームの競争力を損なわない設計とする。
現在、ユーロ圏21カ国のうち国内決済スキームを持つのは8カ国にとどまり、他国はビザ(Visa)やマスターカード(Mastercard)などの国際ネットワークに依存している。ECBは、欧州取引の4分の3以上が国際スキームで処理されている状況を「戦略的リスク」と位置付けている。
デジタルユーロを発行可能とする立法提案は約2年間停滞していたが、欧州議会は今月、初めて本格的な支持を表明。EU理事会も昨年12月、同計画を「欧州の経済安全保障の鍵」と位置付け、ユーロ圏内でいつでもどこでも利用可能な決済手段とする方針を支持している。
ECBは、デジタルユーロを通じて民間デジタルマネーへの対抗力を高めるとともに、欧州の決済主権を強化する構えだ。
2026年にPSP選定、27年後半にパイロット開始へ
また、ECBはデジタルユーロの試験運用段階に近づいている。
チポローネ氏は2月18日、ABIの執行委員会で講演し、2027年後半に予定される12カ月間のパイロット試験に先立ち、2026年第1四半期から決済サービスプロバイダー(PSP)の選定を開始する計画を明らかにした。初期取引は2027年中頃に開始される可能性があるとしている。
同氏によると、試験プログラムには限定的な数のPSP、加盟店、ユーロシステム職員が参加する見込みだ。
デジタルユーロは2029年の発行準備完了が想定されており、今回のパイロットは本格導入に向けた重要なマイルストーンとなる。