ビットコイン年初来最高値、CZ辞任でバイナンス米国撤退などETF承認に好材料か(暗号資産 週間マーケットレポート 11/27号)

11/19~11/25週のサマリー

  • 『米司法省は進行中の犯罪捜査においてBinanceに対し40億ドル以上の制裁金を求めている』と報道
  • 大手暗号資産取引所Binanceはマネーロンダリングに関する起訴事実を認め、米国政府への制裁金43億ドルの支払いに合意
  • 暗号資産取引所HTXとHeco Chainがハッキング被害により9,700万ドルを流出

暗号資産市場概況

11/19~11/25週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比+3.28%の5,655,600円、ETH/JPYの週足終値は同+6.12%の311,730円であった(※終値は11/25の当社現物EOD[11/26 6:59:59]レートMid値)。

先週の暗号資産市場は、前週の暗号資産ETF関連ヘッドラインをこなし、ビットコイン価格は36,000ドル台中盤から上昇基調で開始。週初にブルームバーグが『米司法省は進行中の犯罪捜査においてBinanceに対し40億ドル以上の制裁金を求めている』と報道。同報道の翌日にメリック・ガーランド司法長官やジャネット・イエレン財務長官らによる記者会見を経て、Binance創設者の趙長鵬氏(チャンポン・ジャオ、通称“CZ”)がSNS上でCEO退任を発表すると、市場全体は前週比3~5%の下落となった。

米司法省による刑事告訴の要旨は①マネーロンダリング防止法(AML / 10月にはイスラエル戦争におけるテロ資金供与疑惑が耳目を集めた)②送金法(無許可の送金事業運営)③制裁法(米国が経済制裁を行っている地域のユーザーの取引を許可していた)への違反。起訴内容を認めてBinanceが支払いに合意した43億ドルは、これまで企業が米国に対して支払った制裁金として最大規模となった。

趙氏の後任としてバイナンスCEOに就任するリチャード・テン氏はシンガポール金融管理局やアブダビ・グローバル・マーケット金融サービス規制当局での勤務経験を有しており、今後米国外における各国規制に準拠した形での取引所運営の可能性が示唆されたことや、Binanceの米国からの撤退が確定的となったことで(Binance U.S.はこの範疇ではない)、SECが指摘していた暗号資産市場における市場操作・マネーロンダリングへの懸念が一部緩和され、ビットコイン現物ETFの承認判断にとって今回の流れは好材料との見方が市場参加者に浸透すると、ビットコイン価格は力強さを見せ、年初来高値を再度更新した。

その他銘柄について、先週はチェーンリンク(LINK)とコスモス(ATOM)で動きがあった。チェーンリンクでは、8月に「ステーキングの次のバージョンを今年後半にリリース」と予告していた内容が、ついに実装を迎えることを発表。週間で約8%の上昇を見せた。本バージョンでは、プールサイズ(ステーキングの総量)が拡大されるほか、前バージョンで設定されていた9~12カ月のロック期間が大幅に短縮される。11月28日(日本時間では29日)に既存参加者の優先移行期間を迎え、12月11日(同12日)には一般アクセスが開始される。ステーキング用途の実需買いが価格を押し上げたと考えてよいだろう。

コスモスでは、ガバナンス提案#848が賛成多数で可決された。本提案はATOMのインフレ率を引き下げることを主眼としており、可決が決定的となるにつれて内容を好感した買いが集まり、可決直前の1時間で価格は約4%上昇。その後も調整を挟みながら続伸している。今回の提案はインフレ率に関する3つの投票のうち1つ目であり、最小インフレ率についての投票・ブロックごとのインフレ率調整についての投票が後に控えているため注視していきたい。

次週以降の注目点として、先週まで挙げていたETF関連に加え、米国における規制・訴訟の関連ヘッドラインを見逃さないように注意したい。Binanceのビッグニュースに隠れてしまいがちだが、21日にはSECが大手暗号資産取引所Krakenに対して証券法違反(未登録の取引所運営)で新規訴訟を起こしている。既存取引所の米国における法的整理とETF承認可否、(ETF承認時の)米国大口投資家の参入は一連のテーマであり、これらの動向が暗号資産の先行きに大きな影響を与えることだろう。

BTC/USD週間チャート(30分足)

TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成

BTC/JPY週間チャート(30分足)

TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成

LINK(黄緑), ETH(黄), ATOM(灰), BTC(白), XRP(青) 週間騰落率比較

TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成

11/19~11/25週の主な予定

11/26~12/2週の主な出来事

今週のひとこと「AML/CFT」

先週のBinance関連報道では「AML/CFT」という言葉が頻繁に用いられました。AML/CFTとは「マネーロンダリングおよびテロ資金供与防止(Anti-Money Laundering / Countering the Financing of Terrorism)」のことを指します。

AML/CFTの国際的協調を目的として、金融活動作業部会(FATF)が運営されています。FATFとは、1989年にフランスで開催されたアルシュ・サミット経済宣言を受けて設立された、パリの経済協力開発機構(OECD)内に事務局を置く政府間機関です。現在計39の加盟国・地域で構成され、各国の取り組みを相互審査しています。

当初は麻薬犯罪に関する資金洗浄防止を目的とした金融制度の構築を主な目的としていましたが、2001年のアメリカ同時多発テロ事件発生以降は、テロ組織への資金供与に関する国際的な対策と協力の推進にも取り組むようになりました。

近年の日本の暗号市産業界における「トラベルルール」導入についても、世界的なAML/CFTの強化が背景にあるといえるでしょう。AML/CFT対応は、国際社会がテロ等の脅威に直面する中で取り組まなければならない課題であり、その重要性はますます高まっています。

このレポートについて

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この記事の著者・インタビューイ

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SBIグループの暗号資産取引所「SBI VCトレード」。SBIグループの掲げる顧客中心主義の理念のもと、お客様の満足度向上に資する暗号資産取引に係るサービスをフルラインナップでご提供してまいります。

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