ブロックチェーンは今までのシステムと違って何がすごいのか〜ノンプログラマーでも解るブロックチェーン入門(2)

小俣淳平

#2 ブロックチェーンのメリット

前回の記事でブロックチェーンがどういうシステムなのか、ざっくりとイメージしていただけたかと思います(この記事から読んでいる人は、ぜひ前回の記事を読んでみてください)。

前回の記事で「ブロックチェーンでは、ネットワークを構成するみんなで取引を記録しているから、たとえ相手が信用できなかったとしても銀行と同じように安心して取引を行うことができる」と説明しました。

しかし、よくよく考えてみれば「銀行があるんだから、そんな取引は初めから銀行でやればいいじゃないか」と思いますよね。ブロックチェーンなどと言う、よくわからないシステムをわざわざ使う必要はないと。

確かに前回の説明を読む限りではそういう結論になって当然です。しかし、その段階でブロックチェーンを評価してしまうのは時期尚早です。

もちろん、ブロックチェーンには相応のメリットがあります。ブロックチェーンをうまく活用すれば、従来の銀行のような金融システムとは全く違う世界を作ることができると言っても過言ではないでしょう。金融システムに限らず、幅広い領域にブロックチェーンは適用可能です。

というわけで、今回は「ブロックチェーンにはどんなメリットがあるのか」という点にフォーカスして解説していきたいと思います。単純化のため、今回はビットコインやイーサリアムのようなパブリック・ブロックチェーンのメリットを説明します。

ブロックチェーンが従来のデータ管理システムと大きく異なる点は「分散していること」です。そして、ほとんどのブロックチェーンのメリットはこの分散しているという特徴に起因します。図で表すと以下のようになります。

中央管理者による攻撃に強い

スマホゲームをやっていると、強いキャラクターやアイテムをゲットすることがあります。また、長い期間、高いコストをかけてキャラクターを育成することもあります。そういったキャラクターやアイテムは自分でずっと持っておきたいものですよね。しかし、スマホゲームは永続するものではありません。ゲームの運営側が運営を辞めれば、いくら強いキャラクターを持っていたとしても、いくら課金していたとしても、それらはすべて「無」になります。

プレイヤー側からすれば、それはどうしても避けたい事態です。しかし、われわれプレイヤーは運営を制する力を持っていません。そうなってもTwitterで運営に文句を言うことくらいしかできないのです。

運営主体による運営の放棄、サービス改悪、キャラクターの弱体化などはすべて「中央管理者による攻撃」と捉えることができます。これらを防ぐすべがサービス利用者にないということは、つまり、スマホゲームは中央管理者による攻撃に弱いということになります。

一方で、ブロックチェーンは中央管理者による攻撃に強いです。なぜなら完全なパブリックチェーンの場合は、そもそも中央で管理する主体が存在しないからです。意思決定はブロックチェーンのネットワークを形成する全ての人々によって行われます。スマホゲームでいえば、サービスの変更などを利用者の多数決によって決めるようなものです。

従来のデータ管理システムにはすべて中央管理者が存在します。つまり、従来のデータ管理システムはすべて中央管理者による攻撃のリスクを抱えているのです。それでも私たちは現在進行形で様々なシステムを利用しています。普段意識することはあまりありませんが、私たちはそのシステムを提供する企業や国家を「信用」しているのです。信用しているから自分のデータを預けたり、お金を払ったりできるのです。

つまり、従来のサービスのようにパワーバランスが不平等なシステムの場合、「強い権力をもった人(組織)を信用する」というコストを支払う必要があるのです。

しかし、ブロックチェーンの場合は、ブロックチェーンを動かす人も利用する人も全て平等な力を持っているのでそのような信用が不要です。誰にも信用をゆだねずに利用できるので、ブロックチェーンはすべてのサービスのインフラとして利用されることに向いていると言えます。

このように中央管理者による攻撃に強いことを「非中央集権性が高い」と表現することが多いです。

システムがダウンしない

ブロックチェーンはデータも分散しているため、単一障害点を持ちません。

単一障害点とは、ある箇所を攻撃するとシステムに大きなダメージを与えられるような「弱点」のことです。従来のデータ管理システムではサーバに全てのデータを記録し、サーバがシステムを管理しています。つまり、サーバを攻撃されるとシステム全体に大きなダメージが発生してしまうということです。

一方で、ブロックチェーンは単一障害点を持たないので、そのような攻撃のリスクがありません。たとえブロックチェーンを構成する一つのコンピュータを攻撃したとしても、他の全てのコンピュータが正しいデータを保持しているので、ブロックチェーンへの影響はありません。

単一障害点をもたないことは、第三者による攻撃に強いということを意味し、それはすなわち「システムがダウンしづらい」ということを意味します。ブロックチェーンのシステムがダウンするのは、みんなが「このブロックチェーンは無意味である」と判断し、そのブロックチェーンを動かす人が地球上に1人もいなくなったときか、ブロックチェーンを構成するコンピュータがひとつ残らずハッキングされたときくらいです。

データが改ざんされない

ブロックチェーンはデータの改ざんに強いです。これは、記録されているデータを書き換えることが難しいという意味です。一度ブロックチェーンに「正しい取引」として記録されたものは変更できません。変更が不可能というわけではないですが、非常に難しいです。

どのくらい難しいかというと、そのブロックチェーンのネットワークに参加している全てのコンピュータのスペックを足し合わせたものと同等以上のスペックを持ったコンピュータを用意するくらい難しいです。つまり、ブロックチェーンに参加するコンピュータの数が増えれば増えるほど難しさも増すということです。

改ざんといっても、変えたい部分をただ書き換えるだけでは全く意味がないというところがブロックチェーンのミソです。このあたりは次回以降のコンセンサスアルゴリズムの部分で詳しく解説します。

ブロックチェーンは改ざんに強いので、契約書や公文書などの改ざんされてはいけないようなデータを保存するのにとても向いています。

このように第三者からの攻撃に強いこと、改ざんされにくいことを合わせて「安全性が高い」と表現することが多いです。

個人間取引が可能

中央で管理している人がおらず、かつ安全性が高いので、ブロックチェーンは個人間の取引に向いています。信用できる人同士での取引であれば特に問題ありませんが、初対面の人との取引を行う場合、今までは仲介業者が必須でした。そして仲介業者はその取引の手数料を取ることでビジネスを成り立たせていました。

しかし、ブロックチェーンが世の中に浸透し、個人間取引が簡単にできるようになると、そのような仲介業者のビジネスモデルは成り立たなくなるでしょう。生産者から消費者までが最短で繋がるようになり、適正価格で取引が行われる経済に向かっていくと思われます。

追跡可能性が高い

ブロックチェーンはそのチェーンが稼働し始めたときから現在に至るまでの全ての取引、データの移動が時系列順に記録されています。つまり、順を追ってデータの変遷を追跡することが可能です。

たとえば、お金を管理するブロックチェーンの場合、そのお金がどういう経緯で現在の所有者の手に渡ったのかが追跡できます。この追跡可能性を利用し、生産者から消費者へモノが渡るまでのサプライチェーンを可視化するというケースがたくさん出てきています。

ブロックチェーンを社会実装していくのは誰かではなく私たち

いかがでしょうか、今回紹介したようなメリットをブロックチェーンは持っています。

そしてさらにブロックチェーンは、うまく活用できれば今までのシステムよりもより社会最適に近い経済を生み出すことができる仕組みであると言えます。社会に実装されるまではもう少し時間がかかるかもしれませんが、社会に大きな変化をもたらしうる技術であることはご理解いただけたかと思います。

そしてそれらを社会に実装していくのは、一部の優秀なエンジニアだけではなく、多くのビジネスパーソンの仕事になっていくと私は思っています。もちろんコードまでかける必要はないですが、その仕組みを理解することは非常に大切なことです。

この連載を通して次回以降はより踏み込んでブロックチェーンがどのように成り立っているのか、詳しく解説していきたいと思っていますので是非お楽しみに。

(つづく)

←前回の記事「ブロックチェーンの仕組みを頭の中でざっくり理解してみよう〜ノンプログラマーでも解るブロックチェーン入門(1)」を読む

編集:設楽悠介(あたらしい経済)

images:iStock/Aluna1

この記事の著者・インタビューイ

小俣淳平

「あたらしい経済」編集部
一橋大学2年生
真面目で温厚な20歳。大学1年生のころにブロックチェーンに出会い、その革新性に衝撃を受け、ブロックチェーン業界に足を踏み入れた。勢いのままに学内で「OneLab」というサークルを立ち上げ、週一で活動している。

「あたらしい経済」編集部
一橋大学2年生
真面目で温厚な20歳。大学1年生のころにブロックチェーンに出会い、その革新性に衝撃を受け、ブロックチェーン業界に足を踏み入れた。勢いのままに学内で「OneLab」というサークルを立ち上げ、週一で活動している。