デジタルデータの革命到来、 NFT(ノンファンジブル・トークン)とは何か?

竹田匡宏

デジタルのアートやアイテムに活用されるNFT

「デジタルアート」やブロックチェーンゲーム上の「デジタルアイテム」などの流通が加速している。

古くはクリプトキティーズというブロックチェーンゲームにおいて、2018年9月当時、あるネコのデジタルデータが600ETHで販売されたことが話題を呼んだ。ちなみに現在の価格だと600ETHは約1億1,000万円になる。

そして最近でも2月にはアクシス・インフィニティというゲーム上の、バーチャルな土地が約1億6580万円(888.25ETH)で購入された。

また先日2月8日には北米男子プロバスケットボールリーグNBAプレイヤーのプレイがデジタルカード化されているトレーディングゲーム「NBA Top Shot」で、そのアイテムパックが発売30分で約2億6,000万円の売上を記録して話題を呼んだ。この「NBA Top Shot」は選手のダイナミックな動きがデジタル作品になっており、そのユニークさから日本でもファンがいる。

さらにゲームに限らずデジタルアートを使ったチャリティーオーククションでは、米ロックバンド「リンキン・パーク」のボーカルマイク・シノダ(Mike Shinoda)氏のデジタルアートが30,000ドルで取引されたことも話題となった。

ここまで紹介したのは比較的金額の大きく代表的な事例ではあるが、もう少し小さき規模のものを含めるとクリプトキティーズ以降、世界各国でこのようなデジタルデータ、デジタルアートのやりとりが活発になってきている。

そしてこれらのデジタルデータ、デジタルアートの売買には「NFT(Non Fungible Token:ノンファンジブル・トークン)」というブロックチェーンの一部の技術が活用されている。

NFTとは何か?

この「NFT(Non Fungible Token:ノンファンジブル・トークン)」は文字通り代替が不可能なブロックチェーン上で発行されたトークンのことを指す。NFTの規格で発行されたトークンは、そのトークン1つ1つで個別の価値を表現することができる。

暗号資産(仮想通貨)のトークンとして有名なビットコインや、イーサリアムのイーサなどとNFTの大きな違いはそれぞれが個別の価値を表現しているということだ。

例えば私が友人とそれぞれが持っているビットコイン(1BTC)を、同じ数、互いに交換しても、その価値は変わらない。

トークンに限らず、例えば私の100円玉と、友人の100円玉を交換しても、その価値は同じであり、お互いその硬貨を使って買い物ができる(100円玉を友達と交換したことで、その交換した100円玉で、100円のものが買えなくなることはない)。

一方NFTは、それらと違って、それぞれのトークンに唯一無二の価値を表現することがプログラムされている。1点もののアート作品やサイングッズなどをイメージしてもらえるとわかりやいかもしれない。それをデジタル上で実現でき、改ざんされず、安全にブロックチェーンで管理できるのがNFTだ。

このNFTを活用すればブロックチェーン上で転々流通しても、そのトークンは固有の価値を表現でき、来歴の管理(誰から誰に所有権が移転したか)なども可能だ。

説明が少々長くなったので、まず実際にどういった作品などにNFTが利用されているか、その事例を紹介する。

NFTの具体例

●米ロックバンドリンキンパークのマイク・シノダが創作した作品「One Hundredth Stream」

●NBA Top Shot

●NFTのアートギャラリー「ハッシュマスク(HashMask)」

マスク、目、肌の色、所有アイテムによってデジタルアートを変化して掲示するNFTアートギャラリー。

Hashmask

上記で紹介したマイク・シノダとハッシュマスクで掲示されているNFTは、イーサリアムのブロックチェーンで管理されている。よって対応の暗号資産ウォレットを使って友人に譲渡することもできる。

またこういったNFTを取り扱う2次流通マーケットもある。「OpenSea」などが有名だが、それらのプラットフォームを使えば、自分の持っているNFTを自ら第三者に転売することも可能なのだ。

※なお「NBA Top Shot」はFLOWというブロックチェーン基板で実装されているので、イーサリアムとの互換性は現状ない。

なぜNFTは固有の価値を表現できるのか?

このように現在NFTを使ったゲームアイテムやデジタルアート作品は数多く流通している。それではなぜNFTが個別の価値を表現できるのか、その仕組みを解説していこう(以下説明する仕組みはイーサリアムのNFTの規格であるERC721に限定する)。

NFTは1つのトークンごとにトークンIDとURI(Uniform Resource Identifier/ユニフォーム・リソース・アイデンティファイア))を紐付けて管理・運用されることで、固有の価値を表現できる仕様だ。URIとはWeb上のあらゆるファイルを認識するための識別子の総称のこと。

先に紹介したマイク・シノダ氏のアート作品はURIが指定するJSONファイルで管理されている。つまり全てのコンテンツデータはテキスト化されJSONファイルで管理され、トークンIDと紐付き、NFTとなっている。

この仕様はイーサリアム・パブリック・ブロックチェーン上でNFTを作成できる標準規格ERC721で利用されることが多い。またURIにはそれぞれのコンテンツのメタデータを記載することができる。

メタデータとは、データの作成日、作成者、所有者など付随する重要なデータのことである。例えばこの記事であれば「あたらしい経済」というメディアの記事タイトル、更新日時、最終更新日時、投稿者、執筆者などがメタデータにあたる。

このようにしてNFTはトークンの移転ロジック、データの構造など総じて固有の価値を表現することができるのだ。

デジタルデータに新たな価値をもたらす革命

デジタルデータにNFTを紐付けて製作、流通、管理をするメリットは、そのデータの所持者を明確に証明できることだ。ブロックチェーン上で流通するNFTは、誰から誰の元に、そのデータが生まれてから現在まで辿ることができる。また発行されたNFTの数を固定し、原則発行者であっても後からその数を変更することができないようなルールをブロックチェーン技術のスマートコントラクトを使って定義することができる。つまりNFT自体は勝手に複製ができないわけだ。

これを利用することで、例えば実物の絵画と違って本来はコピーし放題なデジタルのアート作品なども、その所有権を明確にできる。そしてそこにブロックチェーンの技術であらかじめプログラムしておけば、その所有権が転売された時なども、データの創作者に転売毎にロイヤリティを自動支払いするような仕組みも構築が可能だ。

アートに限らず、今まで限られた市場もしくはマスマーケット、または広告など付随するビジネスモデルに依存して創作費用を捻出しなければいけなかった多くのクリエイターにとっても、大きく可能性を広げるに違いない。

デジタルデータに新たな価値の表現をもたらす革命といっても大袈裟ではないだろう。

NFTを巡る動き

日本では暗号資産取引所のコインチェックが、今年NFTマーケットプレイスを作ることを発表し、企業買収や海外プロジェクトの提携を進めている。

また日本初のNFTゲーム「My Crypto Heros」を運営するdouble.jump.tokyoもNFTの相互利用の共通基盤「Oct-Pass」の策定し、新たにNFTを活用したカードゲーム「マイクリプトサーガ」の正式ローンチを準備している(現在完全招待制でプレミアβサービス中)。

そしてアート×ブロックチェーン企業スタートバーンはNFTを活用したアート作品の証明書や来歴の管理などアート市場を支えるブロックチェーンインフラ「Startrail」の開発・運用を進めている。

そして記事ではゲームアイテムやアートジャンルの事例を紹介して行きたが、NFTの活用領域はもっと広い。例えばなんかの安全な方法で現実の物質などと紐づけることができれば、モノの管理にも活用ができる。現在高級ブランド品に個別のNFTを付与したデジタル保証書を発行しているラグジュアリーブランドもある。

今回紹介したようにNFTは様々なビジネスにおいて活用の可能性がある。この特集ではNFTを活用した様々な事例を今後紹介していく。

 

(※「デジタルデータに新たな価値をもたらす革命」の部分に関し、初回原稿ではデジタルデータのDRMとNFTを比較した表現がありましたが、一部内容に誤りがありましたので上記のように修正させていただきました。ご指摘いただきました読者の方に、心より御礼申し上げます。)

(images:iStocks/Nuclear_lily)

この記事の著者・インタビューイ

竹田匡宏

兵庫県西宮市出身、早稲田大学卒業。
幻冬舎で「あたらしい経済」の編集者・記者。
また個人活動としては「死ぬまで毎日ブログを書く」という約束をもとにブログ「たっけのメモ」を4年間運営。ラジオ番組「ミレニアル世代のアタマの中」のパーソナリティー。

兵庫県西宮市出身、早稲田大学卒業。
幻冬舎で「あたらしい経済」の編集者・記者。
また個人活動としては「死ぬまで毎日ブログを書く」という約束をもとにブログ「たっけのメモ」を4年間運営。ラジオ番組「ミレニアル世代のアタマの中」のパーソナリティー。