【独占取材】イーサリアム「ガス代ゼロ」実現しNFTの世界をアップデート、Immutable Xの分散化への想い(Immutable創業者Robbie Ferguson)

竹田匡宏

全世界をイーサリアムで取引可能にすること

「全世界をイーサリアムで取引可能にすること」

オーストリアを拠点とするImmutable社は、このようなビジョンで創業した。
Immutableが開発するImmutable Xはブロックチェーン 基盤のNFTマーケットプレイスなどの取引手数料やスピードなどの課題を解決しようとするNFT取引に特化したレイヤー2ソリューションだ。

Immutable X 公式サイト

2019年にImmutableはNFTトレーディングカードゲーム「Gods Unchained」を立ち上げ、当時最高取引高210ETHを記録するなど話題を呼んだ。

GODS UNCHAINED

そして4月1日には大手NFTマーケットプレイスのOpenSeaが、Immutable Xの統合の計画を明らかにしている。

なおImmutableはコインベース(Coinbase)やギャラクシーデジタル(Galaxy Digital)などから資金調達を行なっている。

今回、あたらしい経済はImmutable の創業者兼社長を務めるロビー・ファーガソン(Robbie Ferguson)へ取材し、NFT市場の動向やイーサリアムのLayer2に関する知見を語ってもらった。

Immutable Xの強み

―Immutable Xについて詳しく説明していただけますか?

Immutable Xは、イーサリアム上のNFTのための最初のレイヤー2スケーリングソリューションです。レイヤー2が意味することは、お客様の取引が常にイーサリアムによって保証されていることです。つまりセキュリティの担保。これはサイドチェーンソリューションと異なるところです。

NFTのためのレイヤー2スケーリングソリューションを提供できるのは今のところ私たちだけで、この現状にとても満足しています。

その他Immuable Xのサービスとしては、即時取引、巨大なスケーラビリティのサポートを提供していて、毎秒9,000件以上の取引を実現しています。

またガス代(Gas fees)ゼロでNFTを作成することができます。これは取引やNFTの作成をより効率的にするために、イーサリアムにアップロードされたゼロ知識証明(Zero Knowledge Proof)を作成するStark Ware社とのパートナーシップによって実現しています。

ガス代がゼロな理由、収益構造

―なぜガス代ゼロを実現できているのでしょうか?

私たちがガス代ゼロを実現できるのは、魔法のようにガス代を払っていないからというわけではありません。また独自のサイドチェーンを作ったからでもありません。

私たちがgas代ゼロで提供できている理由は、私たちが取引を行うからです。ユーザーはイーサリアムのメインネットで取引する代わりに、取引に署名し、その署名を元に数学的な証明が行われ、メインチェーンにアップロードされます。

この証明にはガス代がかかりますし、Immutable Xを運営していくためには最低でも1年間で200万から500万ドルの不変的なコストがかかります。その不変的なコストを私たちはユーザーに代わって支払うことで、ガス代がゼロになっているのです。

―では、どのようにして収益を上げていくのですか?

簡単に言うと、ユーザーがNFTを取引する際に少額の手数料をいただき、ユーザがNFTを売却する際にも少額の手数料をいただくモデルとなっています。ユーザーはイーサリアム・メインネットを使うよりもImmutable Xを使う方がずっと良いと思っています。

もちろんユーザーはイーサリアムメインネットかImmutable Xのどちらを利用するかはいつでも選択できるようになっています。なぜならユーザーはNFTを様々なプラットフォームで所有したいと考えているからです。

合理的なNFTの在り方とは

―いつNFTに関心を持ったのでしょうか?

私たちは2017年12月にNFTの事業を始めました。だから、ブロックチェーンにNF Tを載せたのは、私たちが3人目か4人目くらいだったと思います。なぜ私たちがNFTの存在に興奮していたかというと、NFTはブロックチェーンの未来を考える上で、多くの人にとって理解しやすいものだと感じたからです。

私たちは、NFTが将来的にビットコインやイーサリアムの価値、つまりハードキャップ供給、検閲、抵抗、自己管理を、あらゆる資産に適合させられると考えていました。そして、2017年には、それが世界を席巻することがわかっていました。

―現在のNFT市場をどのように捉えていますか?

NFTはすごく普及していると思います。ただ問題はNFTを取引したり、作成したりするのに非常にコストがかかるということです。また現在多くの人々は分散化を損なう解決策に向かっていますが、これは短期的には非常に悪い解決策だと思います。

なぜなら、重要なのは、人々が自分の資産を本当に所有できるようにすることだからです。あなたの100万ドルのゲームアイテムが侵害されたらどうなるでしょうか? 分散化がそこなえば、その可能性は大いにあります。

なぜなら、サイドチェーンのコンセンサス・メカニズムは、イーサリアムや私たちのようなレイヤー2のコンセンサス・メカニズムほど安全ではないからです。私たちは、この業界が成長していく中で、パブリックブロックチェーンの代表格であるイーサリアム上で成長していくことが非常に重要なことだと考えています。

大手ゲーム会社もImmutable Xを利用

―Immutable XはどのようにNFT市場を成長させていく予定ですか?

2つ方法を持っています。

私たちはユーザーの主要なニーズに対応していて、非常に使いやすいものになっていると思います。つまり、イーサリアムを聞いたことすらない人でも、フランスのユービーアイソフト(Ubisoft)やアメリカのブリザード・エンターテイメント(Blizzard Entertainment)のゲーム開発者であれば、すぐに私たちと一緒にサービス構築や連携などができます。

そして私たちはスマートコントラクトについても全く心配していません。私たちのAPIを使って、NFTをミントしたりトレードしたりするだけだからです。これはとても重要なことだと考えています。

そのNFTをどこでも好きな場所で取引することができます。ゲーム内のマーケットプレイスであるワールド オブ ウォークラフト(World of Warcraft)でもNFTを取引することができ、これは多くのNFT取引の未来になると思います。

2つ目は、私たちがNFT市場を安全かつ分散化された方法で成長させる戦略に忠実だということです。

私たちが市場を成長させている理由は、私たちを利用すれば、自分の資産が危険にさらされることはないと思ってもらうためです。私たちは長期的に守備範囲の広いソリューションであり、そうなるためにプロトコルを構築するのに18ヶ月もかかりました。

社会を分散化して、デジタル上で所有権を

―Immutable Xのビッグピクチャーを教えてください。

多くの人々が生活時間の大半をオンラインで過ごしている現代だからこそ、デジタル上での所有権を表現することに集中していきたいです。

現在、多くの人はゲームをしたり、ソーシャルメディアを利用したり、バーチャルリアリティを体験したりしています。

そして20年後、30年後、40年後、いつでも構いませんが、ある時点で人々は起きている時間のほとんどをデジタルの世界で過ごすことになると思います。これによってデジタル上の所有権の問題が発生します。なぜなら、人々にはデジタルアイテムを所有するための良い方法が現状、存在していないからです。

デジタル上では、現実の世界のように、物理的にアイテムの所有権が保証されているわけではありません。だから私たちは、デジタルの世界にも同じような管理とセキュリティレベルをもたらす必要があるのです。

私たちの使命は、安全で使いやすく、消費者にとって良いソリューションの上にそれらのデジタル世界を構築することで、デジタル世界を現実のものにすることです。

つまり、私たちはこの未来の世界のセキュリティをフェイスブックやベンチャーキャピタル、政府が所有するのではなく、世界が所有する本当の意味で分散型のものとして実現したいのです。

今、私たちがそれを実現するための方法は、分散型ソリューションをスケールアップすることです。だからこそ、私たちはイーサリアムをスケーリングしていかなければならないのです。

そして、「マティック・ネットワーク(Matic Network)」のようなサイドチェーンに移行するのではなく、またVCが所有する「FLOW」のような中央集権的なブロックチェーンに移行することもない、そんな世界を作ることが私たちの根本的なテーゼとなっています。

もちろん最終的には、消費者が好きなように取引するプラットフォームを選ぶことができます。そして選ぶ機会があることは非常に重要なことです。

ただ私たちは、株式会社や個人融資などのスタイルをなくすようにしていきたいと強く思っています。つまり分散化に徹底的にこだわって、「あたらしい社会」を生み出したいのです。

取材/編集:竹田匡宏

関連記事:特集「NFT大解剖」

特集「NFT大解剖」

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

竹田匡宏

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。
「あたらしい経済」の編集者・記者。

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。
「あたらしい経済」の編集者・記者。

この特集のその他の記事

デジタルデータの革命到来、 NFT(ノンファンジブル・トークン)とは何か?

「NFT(Non Fungible Token:ノンファンジブル・トークン)」は文字通り代替が不可能なブロックチェーン上で発行されたトークンのことを指す。NFTの規格で発行されたトークンは、そのトークン1つ1つで個別の価値を表現することができる。 暗号資産(仮想通貨)のトークンとして有名なビットコインや、イーサリアムのイーサなどとNFTの大きな違いはそれぞれが個別の価値を表現しているということだ。

【独占取材】NFTの次のフェーズはトークングラフ(Dapper Labs NBA Top Shot プロデューサー Benny Giang)

ブロックチェーンを活用したトレーディングカードゲーム「NBA Top Shot」は、2020年末にサービスを開始して以来の流通取引総額が約400億円と驚くべき実績を生み出している。この「NBA Top Shot」を開発・運営するのがブロックチェーン開発企業のダッパーラボ(Dapper Labs)だ。

【緊急取材】スクウェア・エニックスとの提携、そして思い描くブロックチェーンゲームとNFTが作る新たな世界(double jump. tokyo上野広伸)

ブロックチェーン技術を用いたアプリケーションやゲーム開発を行うdouble jump.tokyo株式会社と国内ゲーム開発販売大手である株式会社スクウェア・エニックスが、ブロックチェーン技術を活用したコンテンツ開発での協業を開始することを3月17日発表した

日本のクリプトアートの先駆者 mera takeru は今のNFTブームをどう見ているか?

今回「あたらしい経済」は、現在のNFTブームの前、2019年から日本でクリプトアーティストとして活躍しているmera takeru(メラ・タケル)氏にインタビューを実施。既に数百点の作品を発表し、昨今はクリプトアートのコレクターとしても活躍しているmera氏に、どのようにクリプトアートの世界に飛び込んだのか、そして現在のNFTブームをどう捉えているかについて語っていただいた。