各国の暗号資産ETFの状況は? 香港のビットコイン/イーサリアム現物ETF上場をどう捉える?

手塚康夫

各国の暗号資産ETFの状況は?

ビットコインとイーサリアムの現物ETFが新たに承認、そう発表があったのは近隣国の香港です。世界の金融ハブを目指すアジア地域で、暗号資産を戦略的に取り扱う事例が加速しています。しかしこの流れはいまに始まったものではありません。今回は世界の暗号資産ETFを振り返りましょう。

ETFに関する話題は暗号資産が世界の金融市場からどういう評価を受けているのかの「変化」を知るために非常に重要です。半減期を迎えたビットコインの資産性の向上を知るためにも、必ず押さえておきましょう。

まず一つ目は世界の金融の中心「アメリカ」です。今年始めに承認されたETFを発端に、暗号資産市場に多額の資金が流れこみ、大きなトレンド転換を迎えるきっかけになりました。他の国と比較しても多い11の事業者がビットコインの現物ETFを取り扱い、BrackRockのIBTCが取引量の上位を占めています。

次は「カナダ」です。実はビットコインETFが初めて承認されたのはこの国なんです。3年前の2021年2月にビットコインETFが、その翌々月の4月にはイーサリアムETFも承認されています。北米では大きな上場証券取引所でありながら、比較的チャレンジングで暗号資産にも積極的な国だといえますね。

しかしその点から当初は、審査が緩いのではないかと言われていましたが、カナダでは暗号資産の管理方法を踏まえて、適切なカストディアンと規制の整備はきちんと行われています。アメリカよりも早いスピード感を実現するために、審査を緩めるのではなく投資家保護と関連整備を進める姿勢は素晴らしいですね。

アメリカ、カナダの他にも、金融市場で存在感を示すために戦略的に暗号資産を取り扱う国も多く存在しています。スイス、そしてケイマン諸島がまさにその例です。法人税の無税化やゲーミングライセンスの発行も行っている典型的な戦略を取っているオフショア地域で、その他のオフショア地域はジャージー、リヒテンシュタイン、ガーンジーなどです。ビットコインETFを取り扱う全11カ国のうち4つが一般的にオフショア地域として知られてます。

またドバイでもビットコインETFが発行されていると言われることがありますが、実はETFとは少し違った仕組みのETPと呼ばれるものです。

次に他の国を見てみましょう。ブラジル、オーストリア、ドイツです。ドイツは去年時点でカナダに次ぐ取引量ですが、他の地域では目立った取引ではありませんでした。

このように小さな国から少しずつビットコインが投資対象に、そして資産性の向上が見えてきていたということですね。

普段ニュースを見ていると、アメリカの先物ETF上場や、大きな国での現物ETF承認の話しか触れられていないことも多いです。一方でその裏側では、ビットコインが資産としてのマスアダプションを進めていると捉えても十分良いでしょう。

最初は無価値だと思われていたビットコインが数百万人、数千万人の手にわたり、いまではETFに。更にビットコインの資産クラスが向上するためにはあと何が必要でしょうか? 暗号資産市場を牽引する存在のビットコインの動向については、引き続き発信していきます。

香港のビットコイン/イーサリアム現物ETF上場をどう捉える?

なお、香港ではビットコインとイーサリアムのETFが予定通りリリースされましたが、期待感と相場の盛り上がりとは裏腹に、取引量が伸びませんでした。

関係者からは1億ドルは堅いとされていた取引量は1,240万ドルにしか到達せず、期待との乖離が不安を呼びました。

今回香港でビットコイン、イーサリアムのETF発行に名乗り出たのは3つの事業者。いちばんの大手は華夏基金管理(ChinaAMC)で、2,600億ドルを超える運用資金と2億人超えの顧客基盤が活かされるかと思いましたが、規制の関係で中国マネーは流入しませんでした。

10万ドルまでノンストップか、と騒がれていたビットコインETFの米国資金流入も一段落し、流出資金もでてくる中で、その埋め合わせとしても期待されていた香港ビットコインETFですが、思いのほかETF市場への影響は小さい範囲で収まりました。

一方で、ブルームバーグのシニアETFアナリストであるエリック・バルチュナス氏は「香港市場の規模(米国の市場の1/168)を考えると高い数字であり、米国市場の規模の16億ドルの取引量に相当する」と指摘をしています。

このように、今回の香港での取り組みは長期的な市場では一切マイナスではなく、今後ビットコインのETF発行に取り組む国が増加することで、各国の機関投資家による資金流入は大いに見込めます。それによりビットコインやイーサリアムの長期的な価格の安定性や資産性にもつながるでしょう。

関連リンク

今後もこちらでの連載や、私のnote、XなどでWeb3に関する情報発信をしていきますので、ぜひフォローいただけると嬉しいです。

この記事の著者・インタビューイ

手塚康夫

株式会社クリプトリエ 代表取締役 CEO
2006年に株式会社ジェナを設立、2021年の株式会社マネーフォワードによるM&A後に同社を退任。現在は2023年に設立した法人向けにweb3ビジネスを展開する株式会社クリプトリエの代表取締役の他、複数のスタートアップの役員や顧問を務める。株式会社クリプトリエでは、NFTのビジネス活用を簡単かつ迅速に実現するプロダクト「MintMonster」を提供し、企業におけるWeb3活用の普及を目指す。

株式会社クリプトリエ 代表取締役 CEO
2006年に株式会社ジェナを設立、2021年の株式会社マネーフォワードによるM&A後に同社を退任。現在は2023年に設立した法人向けにweb3ビジネスを展開する株式会社クリプトリエの代表取締役の他、複数のスタートアップの役員や顧問を務める。株式会社クリプトリエでは、NFTのビジネス活用を簡単かつ迅速に実現するプロダクト「MintMonster」を提供し、企業におけるWeb3活用の普及を目指す。

この特集のその他の記事

各国の暗号資産ETFの状況は? 香港のビットコイン/イーサリアム現物ETF上場をどう捉える?

ビットコインとイーサリアムの現物ETFが新たに承認、そう発表があったのは近隣国の香港です。世界の金融ハブを目指すアジア地域で、暗号資産を戦略的に取り扱う事例が加速しています。しかしこの流れはいまに始まったものではありません。今回は世界の暗号資産ETFを振り返りましょう。