アンソロピック、常勤1名の創薬企業ミスリル買収。クロード活用で希少疾患の治療薬開発

Claude活用の創薬企業を買収、自社で研究を継続

米AI企業アンソロピック(Anthropic)が、希少な筋ジストロフィーの治療薬を開発するミスリル・メディシン(Mithril Medicine)を買収したことを10月27日に発表した。買収は今年7月に実施されており、今回の発表では買収額は明らかにされていない。

ミスリル・メディシンは、買収前の常勤従業員が創業者のコーディ・トランバーガー(Cody Tranbarger)氏1名のみだった創薬企業だ。同氏は、非常勤のコンサルタントや外部研究機関の協力を得ながら、アンソロピックのAI「クロード(Claude)」を活用して研究を進めてきた。

発表によると、トランバーガー氏はクロードを使い、外部の11研究機関との契約や物流、実験の調整などを行っていた。研究データの分析や実験計画の作成にも活用する一方、研究方針の決定や実験を進めるかどうかの判断、最終的な承認は人が担うという。

研究対象は、「LAMA2関連先天性筋ジストロフィー」と「α-ジストログリカノパチー」と呼ばれる希少疾患だ。

LAMA2関連先天性筋ジストロフィーは、筋肉の細胞と周囲の組織をつなぐたんぱく質「ラミニンα2」が遺伝子の変化によって不足・欠損する疾患だ。出生時や乳児期から筋力低下や運動発達の遅れが生じ、呼吸や飲み込みに支障が出ることもある。

α-ジストログリカノパチーは、筋肉の細胞を周囲の組織につなぐたんぱく質「α-ジストログリカン」が正常に働かず、筋力低下を引き起こす遺伝性疾患の総称だ。病型によっては脳や眼にも異常が生じる。

ミスリル・メディシンは、このうちLAMA2関連先天性筋ジストロフィーについて、構想から18カ月未満で、マウスを用いた実験で有望な結果を得たとしている。

公開された技術報告書では、試作した抗体の一つを投与したマウスで、対照群の約2倍の握力と筋力が確認されたと報告されている。ただし、これは小規模な前臨床研究の結果であり、人での安全性や有効性を示すものではない。技術報告書は査読を受けていない。

買収後もトランバーガー氏はアンソロピックで両疾患の研究を続けており、新たな研究プログラムの開始も準備している。ミスリル・メディシンの研究は、アンソロピックにとって初の自社内の創薬プログラムになったという。

今後同氏は、2027年に両疾患の開発候補薬の選定を目指す。候補薬がその後の検証でも有望な結果を示した場合、LAMA2関連先天性筋ジストロフィーでは早ければ2028年後半、α-ジストログリカノパチーでは早ければ2029年に人を対象とする臨床試験の開始を目指すと伝えられている。

アンソロピックは同じ発表で、米製薬大手ブリストル・マイヤーズ スクイブ(Bristol Myers Squibb)など、新薬開発に取り組む6組織との研究提携の進捗も公表した。抗体の設計や製造関連文書の確認、臨床試験計画の評価など、創薬の幅広い工程でクロードの活用を進めている。

なおアンソロピックは10月26日、新規株式公開(IPO)に向けた登録届出書「フォームS-1(Form S-1)」を米証券取引委員会(SEC)に提出したと発表している。クラスA普通株式をナスダック・グローバル・セレクト市場に上場する計画で、ティッカーシンボルは「ANT」を予定している。発表時点では募集株数と公開価格の範囲は未定で、登録届出書も発効していない。

参考:アンソロピック・Mithril Medicine技術報告書
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

大津賀新也

「あたらしい経済」編集部
副編集長
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

「あたらしい経済」編集部
副編集長
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

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