AIで米経済規模が2030年までに現状比50%近く拡大する可能性=アンソロピック共同創業者

AIの急速な進歩を前提に、米経済への影響を試算

アンソロピック(Anthropic)の共同創業者ジャック・クラーク(Jack Clark)氏が、「人工知能(AI)の能力が急速に向上することで、あらゆる分野の変化がこれまでよりはるかに速くなる」と10月17日に述べた。同社内の経済モデルの1つは、一定の条件下では、AIが2030年までに米国の経済規模を現状比で50%近く拡大させる可能性があると予測しているという。

バンコクで開催された国際通貨基金(IMF)・世界銀行(World Bank)の年次総会で講演したクラーク氏は、社会を変革するこの技術に「従来とは異なる、本格的なルール」を設けるには国際協力が必要だと述べた。また、政策担当者が行動を起こせる時間は短くなっていると指摘した。

クラーク氏は、現在30兆ドル(約4,744兆円)強の米国の国内総生産(GDP)が44兆ドル(約6,958兆円)に達する可能性があるとの試算について、「非常に突拍子もない話に聞こえることは承知している」と述べた。ただ、AIは科学的発見を大幅に増やしていると付け加えた。

同氏は、この予測は「技術が改善し続けること」を前提としていると説明。「そして、GDPがこれほど成長するのであれば、経済理論上、それほど大規模な経済拡大を支える新たな産業や発明が生み出されている必要がある」と述べた。

クラーク氏の発言は、アンソロピックが11月に見込まれる新規株式公開(IPO)に向けて準備を進める中で出た。IPO時の企業評価額は最大2兆ドル(約316兆円)に達する可能性がある。

現時点では人間が制御

クラーク氏は、AIの発展が人間の制御能力を上回る「シンギュラリティー(技術的特異点)」を示す証拠が増えているとし、AI開発の速さについて政策担当者に警鐘を鳴らした。

「今後数年のうちに、AIだけでなく科学全体の進歩のペースが速まると考えるべきだ。私たちは混乱し、方向感覚を失うように感じるだろう。そして、莫大な富がもたらされるとともに、重大な危険が伴う可能性もある」。同氏は、数百人の政府・金融関係者を前にした講演でこう述べた。

IMF・世界銀行の年次総会では、AIが主要な議題となった。AIはエネルギー価格の高騰による影響を相殺する成長の源泉として注目される一方、生産性を一変させるとの期待に応えられず、株価が急落した場合には、安定を脅かす要因にもなり得ると受け止められた。

当局者らは、AIが特定の雇用を奪い、一部の国を取り残すことへの懸念も示した。

しかし、元記者で、アンソロピックの「公益担当責任者(head of public benefit)」を務めるクラーク氏は、AIが科学的発見を進める力を何倍にも高める明るい未来像を描いた。人間の研究者を数百、数千ものAIアシスタントが支援し、新薬の発見を含め、数学、工学、生物学の問題を解決していくという。

同氏は、AIの稼働に必要なデータセンターの計算能力の整備に貢献することで、より多くの国がAI革命に参加できると述べた。

生物学研究には最も厳格な管理を

クラーク氏は、世界の指導者はAIがどれほど強力になるかを理解し、この技術をどのように規制するかについて早急に判断する必要があると警告した。

また同氏は「AIを科学に活用できるようになることで、生物兵器やサイバー兵器、さらにはまだ想像できないものなど、科学が悪用される危険にも私たちはさらされる。私たちは多くの選択をしなければならない」と述べた。

研究者がAIを活用して新たなウイルスをすでに設計している生物学研究については、「安全性を維持するため、人間による最も厳格な監督と透明性を確保したい領域だ」と語った。

最近、制御を逸脱したAIシステムが試験環境から抜け出し、ウェブサイトやデータベースをハッキングした複数の事例が大きな注目を集めたものの、クラーク氏は、AIは依然として人間の制御下にあると述べた。ただ、AIの能力が高まるにつれて安全策を導入できる時間は短くなっており、今や「数年程度」しか残されていないとした。

クラーク氏はまた、コールセンターや顧客サービスなど「AIの影響を大きく受ける」分野では、AIによる雇用の喪失が起きていることも認めた。一方、科学研究などの分野では、AIが雇用を後押ししていると述べた。AIが全く新しい産業で雇用を創出する可能性は、大きな未知数だとした。

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
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(Reporting by Summer Zhen. Editing by Jane Merriman)
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
参考:香港SFC
画像:Reuters

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大津賀新也

「あたらしい経済」編集部
副編集長
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

「あたらしい経済」編集部
副編集長
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

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