ECB、デジタルユーロ検証第2弾で参加者募集

AI決済や公共サービスでの活用も検討

欧州中央銀行(ECB)が、デジタルユーロの新たなサービスやユースケースを民間企業などと共同で検証する「イノベーション・プラットフォーム」の新たな活動について、参加者の募集を9月28日に開始した。同活動は、デジタルユーロの導入準備の一環として行われる。

今回の取り組みは、2024年に始まった同プラットフォームの第2弾となる。応募締め切りは11月9日17時(中欧時間、日本時間11月10日1時)。選定された参加者は2027年1月にECBのウェブサイトで公表される予定だ。

今回の活動は、「実験(Experimentation)」と「探索(Exploration)」の2つの作業部会で進められる。実験では決済アプリなどの機能を検証し、探索ではAI決済や公共サービスでの活用を議論する。

「実験」部会は2027年1月から6月にかけて実施される予定。参加者はECBと契約を結び、ECBが用意するデジタルユーロの専用テスト環境に接続して、概念実証(PoC)や試作品を開発する。

重点分野は以下の4つだ。

1つ目は「電子レシート」。デジタルユーロの決済アプリ内で電子レシートを受け取れる仕組みを検証する。プライバシー保護やコスト、加盟店ごとのデジタル化の度合いなどを踏まえ、複数の方式を比較する。

2つ目は「複数支払者・複数受取人の取引」。割り勘や共同購入のように、複数人が1件の支払いに資金を出す取引や、1件の支払いを複数の受取人に自動で振り分ける仕組みを検討する。

3つ目は「条件付き決済」。あらかじめ定めた条件が満たされた場合に、自動で決済を実行する仕組みだ。資金を事前に拘束しない定期払いなどへの応用も検討する。

ECBは、条件付き決済は、資金の使途や相手、場所、時期などを制限する「プログラマブルマネー」とは異なるとしている。欧州委員会が提出したデジタルユーロに関する規則案でも、デジタルユーロをプログラマブルマネーとはしない方針が示されている。

4つ目は「フロントエンド機能」。行動バイオメトリクス、AIを活用した機能、家計管理ツール、アクセシビリティー対応など、PSPが自社アプリ上で提供する付加価値サービスを検討する。

AIエージェントや公共交通での利用も議論

「探索」部会では、2027年1月から6月にかけて、フランクフルトにあるECB本店でテーマ別のワークショップを開催する。

テーマは2つで、1つ目は、決済におけるAIの役割だ。AIを活用した決済体験やAIエージェント、AIエージェント間のやり取り、少額決済、機械同士の取引などが、将来のデジタルユーロの設計に与える影響を検討する。

なお、AIに関する今回の検討では、サイバーセキュリティー、不正対策、コンプライアンス、リスク管理などは対象外とされている。

2つ目は、公共分野でのデジタルユーロ活用だ。

公共交通、公共料金、スマートシティー、駐車場、電気自動車(EV)の充電、金融包摂、公共部門の自動化、国家レベルのレジリエンス確保などでの利用を検討する。

応募条件と選考基準

対象は、小売事業者、決済サービス事業者(PSP)、技術サービス事業者(TSP)、フィンテック企業、POS端末ベンダー、公的機関、研究機関、消費者団体などだ。

応募できるのは、EU域内で法的に設立・登録された企業や団体、公的機関、研究機関など。個人、個人事業主、未登録団体は対象外となる。なお、申請書は英語で提出する必要がある。

ECBは、加盟店とPSPなど、決済フローの中で異なる役割を担う組織による共同応募を特に歓迎するとしている。

選考では、参加の動機や提案内容の妥当性、デジタルユーロの設計原則との整合性、専門性などを評価する。

「実験」部会では、これらに加えて技術的な準備状況も審査対象となる。

またECBは、参加者を選定する際に、地域や業種の多様性にも配慮するとしている。

参加は任意で、ECBを含むユーロシステムから報酬や経費の補填は行われない。

ECBは、今回の活動で得られた知見を、今後のデジタルユーロの機能拡張やユースケース、実装面の検討に活用する方針だ。成果については、報告書としての公表や、参加者を招いた成果発表イベントの開催の可能性もあるという。

参考:発表
画像:Reuters

関連ニュース

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

合わせて読みたい記事