BISトップ「日常決済の大半はトークン化預金が担うべき」
63の中央銀行・通貨当局が加盟する国際決済銀行(BIS)のトップが、ステーブルコインが広範な規模で信頼できる決済手段として機能するとは言い難く、新たな技術の利点を活用するうえでは、トークン化預金の方がより有力な選択肢になるとの見解を示した。
ステーブルコインは、安定した価値を保つよう設計されたデジタルトークンで、主に暗号資産(仮想通貨)の取引で利用されているほか、決済での利用も広がっている。その利用拡大を受け、各国の主要当局者の間では、金融安定やマネーロンダリング(資金洗浄)を巡る懸念が強まっている。こうした懸念は、とりわけ米国外で目立っている。
一方、スコット・ベッセント(Scott Bessent)米財務長官はステーブルコインを支持している。同氏はステーブルコインについて、世界の主要準備通貨としてのドルの地位を支え、米国債への需要を大幅に押し上げる可能性のある「デジタル金融の革命」だと評価している。
米カンザスシティ連邦準備銀行がワイオミング州で開催したジャクソンホール経済政策シンポジウム(Jackson Hole Economic Policy Symposium)で講演したBISのパブロ・エルナンデス・デコス(Pablo Hernandez de Cos)総支配人は、ステーブルコインとトークン化預金は共存できると述べた。ただし、トークン化預金は、健全性規制の枠内で中央銀行マネーによる決済を前提に、日常的な決済とホールセール決済の大半を担い、ステーブルコインはより限定的な用途に使われるべきだと主張した。
デコス氏は、2027年に欧州中央銀行(ECB)のクリスティーヌ・ラガルド(Christine Lagarde)総裁の後任候補の1人に挙げられている。同氏はステーブルコインを巡る数多くの問題点を列挙した。
デコス氏によると、ステーブルコインはベッセント氏が主張するように、政府の資金調達コストを引き下げる可能性がある。一方で、資金が銀行などの貸し手から流出すれば、銀行の資金調達コストが上昇し、一般の借り手がより高い金利負担を強いられる可能性があるという。
また、顧客が異なるステーブルコイン間で資金を移すには二次市場での売買が必要となり、額面価格から乖離する可能性があるため、ステーブルコインは貨幣の「単一性」を確保できないと同氏は指摘した。
同じステーブルコインでも、異なるブロックチェーン間では十分な相互運用性が確保されておらず、マネーロンダリング対策を一貫して適用することも難しいとデコス氏は述べた。
「米ドル連動型ステーブルコインの利用拡大は、一部の国や地域で、通貨主権への影響や、デジタル・ドル化が進む可能性を巡る懸念も引き起こしている」と同氏は述べた。
デコス氏によると、米国外で米ドル連動型ステーブルコインの利用が急拡大すれば、通貨主権が損なわれ、国内における金融政策の伝達効果が弱まる可能性がある。また、国内の金融環境が国外の政策運営に、これまで以上に強く左右されるようになるという。
デコス氏は「トークン化預金は、通貨システムの基盤を維持しながら、トークン化の恩恵を取り込むためのより直接的な手段となる」と述べた。
ただし、トークン化預金についても、相互運用性やガバナンスを巡る課題に加え、決済のファイナリティ(最終性)とスマートコントラクトの法的執行可能性について、法的な明確性を確保する必要があると同氏は指摘した。
※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
Stablecoins not a credible means of payment at scale, BIS chief says
(Reporting by Balazs KoranyiEditing by Rod Nickel)
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
画像:Reuters