ビットフライヤー、ビットコインの「ECX」ハードフォークへの対応方針公表

ECXハードフォークへの対応を第一報として公表

国内暗号資産(仮想通貨)取引所ビットフライヤー(bitFlyer)が、ビットコイン(Bitcoin)から新たなブロックチェーンを分岐させ、暗号資産「イーキャッシュ(eCash:ECX)」を発生させるハードフォーク計画への対応方針を8月10日に公表した。同社は別件として、ビットコイン改善提案(Bitcoin Improvement Proposal:BIP)「BIP-110」を巡る動向にも言及した。

今回の発表の中心となるのは、ECXハードフォークへの対応だ。ECXは、ビットコインのブロックチェーンから新たなブロックチェーンを分岐させることで誕生が計画されている暗号資産だ。

ハードフォークは、従来のルールと互換性のない形でブロックチェーンのルールを変更する仕組みを指す。旧ルールと新ルールを採用する参加者がそれぞれチェーンを維持した場合、ブロックチェーンが分岐する。今回のECXでは、その分岐によってBTCとは別のブロックチェーンと暗号資産が誕生することが計画されている。

なお、今回のECXは、既存の暗号資産「イーキャッシュ(eCash:XEC)」とは異なる暗号資産である。

ECX計画を主導するビットコイン開発者のポール・シュトルク(Paul Sztorc)氏は8月7日、ECXのローンチを3段階で実施する計画を公表した。アルファ版はブロック高963,648(8月23日ごろ)、ベータ版はブロック高967,680(9月20日ごろ)、恒久版はブロック高973,728(10月31日ごろ)に開始する予定だ。日付はビットコインのブロック生成状況によって前後する可能性がある。

アルファ版とベータ版で取得した試験用のECXについては、恒久版の公開後に焼却し、正式なECXと交換できる予定だという。

ECXハードフォーク計画を受け、ビットフライヤーは現時点での対応方針を公表した。同社によると、8月10日時点ではBTCの売買、受取、送付はいずれも通常どおり利用できる。一方、ECXを利用者へ付与するかについては未定であり、同社の暗号資産取扱方針に基づいて判断するという。

またビットフライヤーは、ECXの技術仕様やネットワークの安定性、リプレイ攻撃などのリスク、顧客資産への影響を確認しているとのことだ。

ECXではBTCと同一のアドレス形式が使用され、リプレイプロテクションが任意となる予定だ。リプレイ攻撃とは、ハードフォーク後に片方のチェーンで行われた取引が、もう一方のチェーンでも再利用され、意図しない資産移動につながる可能性がある問題を指す。

このためビットフライヤーは、顧客資産保護を目的として、BTCの受取・送付を一時停止する可能性があると案内した。BTC売買については8月10日時点で停止する予定はないものの、ビットコインネットワークや市場の状況によっては、売買を含む一部サービスを制限する可能性もあるとのことだ。

別件としてBIP-110の動向にも言及

今回の発表では、ECXハードフォークとは別件として、BIP-110についても言及された。ECXが新たなブロックチェーンと暗号資産を生み出すハードフォーク計画である一方、BIP-110はビットコインのコンセンサスルール変更を提案するソフトフォーク案であり、目的や仕組みは異なる。

BIP-110は、画像やテキストなどの任意データ記録に利用される一部の仕組みを、約1年間制限するソフトフォーク提案だ。ソフトフォークは、従来よりも有効な取引やブロックの範囲を狭める形でルールを変更する仕組みを指す。ただし、ネットワーク参加者の支持が広がらないまま新ルールを強制した場合、チェーンが分岐する可能性がある。

その背景には、近年「オーディナルズ(Ordinals)」などを通じて、画像やテキストをビットコインへ記録する利用が広がったことがある。提案者らは、こうしたデータが送金と同じブロックスペース(1ブロックに記録できるデータ容量)を消費し、送金・決済用途と競合していると主張している。

このためBIP-110では、任意データ記録に利用される一部機能へ一時的な制限を設けることが提案された。一方、反対派は、現在有効な取引をコンセンサスルールによって制限する前例となることや、十分な支持を得ないまま新ルールを強制すればチェーン分岐を招くことなどを懸念していた。

BIP-110では、2,016ブロック中1,109ブロック(55%)の支持シグナルによって早期にロックインする仕組みが採用されていた。早期ロックインに至らなかった場合は、ブロック高961,632から強制シグナリング期間へ移行し、BIP-110を適用するノードが支持シグナルを含まないブロックを拒否する設計となっていた。

実際には、直前の2,016ブロックにおける支持シグナルは51ブロック(約2.5%)にとどまった。日本時間8月9日に強制シグナリング期間へ入ると、BIP-110を適用するノードが非シグナルブロックを拒否した結果、大多数が維持するメインチェーンから分岐し、少数派チェーンを形成した。

少数派チェーンのブロック生成は2ブロックで停滞し、大多数の参加者は従来ルールのメインチェーンを維持している。また、BIP-110の公式文書は8月9日付で、ステータスが「クローズド(Closed)」に更新された。

ビットフライヤーは8月10日付の発表で、BIP-110について有効化に向けた過程にあると説明していた。同社は今後も、BIP-110を巡る動向や、ビットコインネットワークおよび同社サービスへの影響を確認する方針だ。

参考:ビットフライヤー
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

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