ヴィタリック、「L2の役割に新たな方向性が必要」との見解

メインネットの進展とL2分散化の遅れを背景に

イーサリアム(Ethereum)の共同創設者であるヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏が、イーサリアムにおけるレイヤー2(L2)の役割について新たな方向性が必要だとの見解を2月4日に自身のXアカウントで示した。

ブテリン氏は、L2をイーサリアムのスケーリング手段として位置付けてきた従来の考え方が現在の状況では成り立たなくなっていると指摘した。その理由として、L2の分散化や相互運用性の整備が当初の想定よりも大幅に遅れている点を挙げている。

これまでイーサリアムでは、トランザクションの処理と実行をメインネットの外(L2チェーン)で行い、最終的な正当性を「ロールアップ(Rollup)」を通じてメインネットが担うことで、メインネットの技術的な処理能力の限界や手数料の制約を緩和するスケーリングソリューションとしてL2を位置付けてきた。

こうした考え方は、いわゆる「ロールアップ中心ロードマップ」として、イーサリアムの長期的な拡張戦略の柱とされてきた経緯がある。

一方でブテリン氏は、「多くのL2チェーンがトランザクションの順序付けや最終的な制御をそれぞれの仕組みに依存しており、『イーサリアムの信頼に裏付けられたブロックスペース』を十分に提供できていない」と指摘した。このため、L2をイーサリアムの一部として扱う前提そのものに見直しが必要だとの認識を示している。

加えて、イーサリアムメインネット自体がスケーリングを進めている点にも同氏は言及した。継続的なアップグレードにより、メインネットの処理能力は着実に拡張されており、今後さらに大きな増加が見込まれるとした。

こうした状況から、L2チェーンがイーサリアムの信頼を前提とした存在として扱われてきた点に対し、現実との乖離が生じているとの認識を同氏は示した。

このような認識を踏まえブテリン氏は、「L2チェーンを一律に定義するのではなく、イーサリアムとの関係性が一様ではない多様なチェーンの集合体として捉えるべき」だと提案した。つまり、イーサリアムの全面的な信頼に裏付けられたチェーンもあれば、イーサリアムから一定の距離を保ち、特定の用途や要件に応じてより高い独立性を持つチェーン設計もあり得るとのこと。ブテリン氏は、このような新たなL2の位置付けを「スペクトラム(連続体)」という言葉で表現している。

その上で、今後のL2チェーンには単に「安くて速い」こと以外の付加価値が求められるとも同氏は述べた。具体例として、プライバシーや非金融分野に特化した設計、超低遅延を重視した構成、あるいは将来的に大幅に拡張されたメインネットでも実現できないレベルの処理能力などが挙げられている。

ただし、ETHやイーサリアム発行資産を扱うL2チェーンについては、問題が起きた際に最終的にメインネットのルールで処理できる構造が必要だとも述べられた。そうした仕組みがない場合は、事実上イーサリアムエコシステムから独立したブロックチェーンとして扱うべきだとの認識が示されている。

またイーサリアム側の技術的な取り組みとして、ロールアップの検証をプロトコルレベルで支える構想にもブテリン氏は触れた。ゼロ知識EVM証明を検証する「ネイティブ・ロールアップ・プリコンパイル(Native Rollup Precompile)」をメインネットに組み込むことで、L2チェーンの検証をメインネットが担い、特定主体への依存を減らす狙いがあるという。

ブテリン氏の今回の発言は、L2の存在意義そのものを否定するものではなく、その役割や位置付けを現実に即して見直そうとする動きと位置付けられている。メインネットの進展を踏まえ、イーサリアムが今後どのように多様なL2を内包していくのかが注目される。

コミュニティ内でも活発化するL2の議論

なおブテリン氏は今回の提案にあたり、技術的な背景として「イーサリアム・リサーチ(Ethereum Research)」に投稿されたL2設計に関する議論も引用した。この中では、現在主流となっているロールアップの設計を大きく二つに整理している。

一つは、トランザクションの順序付けをオフチェーンのシーケンサーに依存する「シーケンサー型ロールアップ」だ。低レイテンシを実現できる一方、メインネットとの強い同期は難しいとされる。

もう一つは、L2チェーンの順序付けをメインネット上で行う「ベースド・ロールアップ」だ。メインネットとL2を同時に扱える「同期的コンポーザビリティ」が可能になる利点があるものの、実装やレイテンシ面での課題が残るという。

同投稿では、こうした両者のトレードオフを踏まえ、L2とメインネットの関係性は単純に処理速度だけで評価できるものではなく、設計次第で多様な形があり得るとの認識が示されている。

ブテリン氏の今回の提案は、このようなコミュニティ内での設計議論を踏まえたものと位置付けられる。

 

参考:イーサリアム・リサーチ
画像:大津賀新也(あたらしい経済)撮影

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