【独占取材】ポリゴンが目指す、人々がブロックチェーンをストレスなく使える世界(Polygon VP-Growth Arjun Kalsy)

昨今のNFTブームの中、日本でも注目を集めている1つのブロックチェーンプロジェクトがある。 Cryptogames株式会社の「NFT Studio」や株式会社スマートアプリの「nanakusa」などのNFTマーケットプレイスでも採用されている、ポリゴン(Polygon:旧Matic Network)だ。

ポリゴンはイーサリアムに特化したスケーリングの課題を解決するソリューションを開発しているインド発のプロジェクトだ。ポリゴンという名称は「どんな形や大きさにも対応できるN辺の図形」を意味している。

このプロジェクトは以前はマティックネットワークという名称だったが、今年現在のプロジェクト名に変更。

この名称には、「ポリゴンが開発者に対して最大限の開発に関するフレキシビリティを提供することで、開発者らがどんな技術を使ったとしても、しっかり開発できる環境を生み出したい」という想いが込められているとのことだ。

Polygon公式サイト

「あたらしい経済」は、インド市場から世界に挑戦するポリゴンのビジネス執行役員アルジュン・カルシー(Arjun Kalsy)氏へ取材を行った。

ポリゴンを作ったきっかけ

-ポリゴンプロジェクトをスタートさせたきっかけはなんですか?

ポリゴンのビジネス執行役員アルジュン・カルシー(Arjun Kalsy)氏

2017年ごろ、Dapper LabsのNFTゲーム「CryptoKitties」で一時期みんながNFTの取引に殺到し、イーサリアムネットワーク全体のトランザクションを詰まらせていたことがありました。

その当時私たちはスケーリングの重要性を認識し、「どうすればイーサリアムがもっとスケーリングするのか」の議論しはじめました。そして「将来はどのようになるのか?」という問いを持ったことが、私たちがプロジェクトをはじめたきっかけ、ポリゴンの旅のはじまりでした。

-その当時から現在まで、イーサリアムを取り巻く環境にどのような変化があったとお考えか教えてください。

これまでに起こった代表的な変化の1つに、イーサリアムのスケーリングソリューションの数が増えたことがあげられます。

OptimistcやZK-Rollup系のソリューションが相次いでデプロイされました。そして将来的には新しいスケーリングソリューションが出てくるかもしれません。

今後は1つのスケーリング技術だけではなく、複数のスケーリング技術が存在するようになると考えています。そしてそれぞれのスケーリング技術には長所と短所があるので、開発者はどのスケーリングソリューションを使用するべきかを判断する必要が出てきます。

ポリゴンでは、Optimistc RollupとZk-Rollupを提供しています。すでにZk-Rollupは生産準備が整っていて、テスト済みのプラズマチェーンになっています。

-なぜイーサリアムのスケーリング課題を解決したいと考えたのでしょうか?

ポリゴンはブロックチェーン技術に対して、強い情熱を持っています。そしてその中でも、特にイーサリアム・エコシステムにとても情熱を持っているんです。

イーサリアムは最高のエコシステムだと考えています。現在でもイーサリアムは多様で、世界でも最大規模の開発者がいて、優れたドキュメントがあり、たくさんのアプリがあります。

そしてこれから何百万人もの人々がイーサリアムを利用する未来を築くためには、スケーラビリティ課題を解決することが非常に重要です。私たちは何百万人もの人々が、例えばマスターカードを利用するのと同じように、ブロックチェーン技術を使って欲しいのです。

多くの人々がゲームをしたり、NFTを利用したり、投資をしたり、貸し借りをしたりと、大規模なことを可能にするために、私たちはスケーラビリティ課題を解決するためのインフラを構築しはじめたのです。

ポリゴンの特徴

−ポリゴンの特徴はなんでしょうか?

ポリゴンはイーサリアムのレイヤー2ソリューションです。

そして特徴は取引手数料が安いことですね。ネットワークにおける取引手数料はほとんどゼロに近い状態で、現在の平均取引手数料は0.00002ドルです。そして手数料は非常に低いのですが、取引スループットは非常に高く、ブロックタイムは2秒です。

またポリゴンはプルーフオブステーク(PoS)のネットワークでもあります。つまりバリデータになるためにインフラとして費やす必要のある金額は非常に少ないのです。

PoSのネットワークでは、大量の取引があってもトランザクション確認数が少ないというコンセプトにより、ネットワークが拡大成長しやすくなっています。

レイヤー2ソリューションとサイドチェーンの相違点

-今ポリゴンはレイヤー2というお話がありましたが、レイヤー2とサイドチェーンの違いはなんですか?

この違いについては、非常にホットな話題ですね。人々はツイッターで議論を交わし互いに非難し合っているような状況をよく目にします。

私は、レイヤー2ソリューションとサイドチェーンの違いについて、非常にシンプルな考え持っています。

レイヤー2ソリューションは、レイヤー1ネットワークのパフォーマンスを向上させるためのものです。つまりレイヤー1があってこそ、レイヤー2が存在するわけです。

そして真のレイヤー2ソリューションはトラストミニマム運用方法を採用するべきだと考えてます。トラストミニマムとは、レイヤー1のイーサリアムブロックチェーン側に信頼があるネットワークのことを指します。つまり、レイヤー2のチェーンオペレーターを信頼する必要がないことです。

一方でサイドチェーンとは、レイヤー1のエコシステムの存在を必要としないチェーンです

例えば、トロンです。トロンはイーサリアムやビットコインが機能しなくなっても、存在し続けることができます。ただイーサリアムと互換性があるので、スマートコントラクトを書くためにSolidityを使うことはできます。同じように、Binance Smart Chain(BSC)も純粋なサイドチェーンです。

そして前述の通り、ポリゴンは前者のレイヤー2ソリューションです。

私たちのネットワーク運営方法は、私たちのチェーン上で256ブロックごとに、私たちがトランザクションをマークルルートして、イーサリアムネットワークにチェックポイントを置く設計になっています。そうすることで、資産、流動性、NFTのすべてが、イーサリアムのセキュリティによって守られているのです。

ポリゴンを使って開発、運営するユーザーは、チェーンオペレーターであるポリゴンを信頼しているのではなく、レイヤー1のイーサリアムを信頼していることになります。そしてもちろんポリゴンはイーサリアムなしでは存在できません。

いま人々がレイヤー2関連で論争をしていますが、重要なのはレイヤー1のソリューションが存在する必要があるのかどうかを考えることだと思っています。

-ポリゴンは独自トークン「Matic Token」をどう捉えているのでしょうか?

私たちが開発した「Matic Token」は主に手数料支払いのために作られたものです。またバリデーターにインセンティブを与えるためでもあり、トークン自体をペイメントソリューションとして設計したわけではありませんでした。

一般的に決済にはUSDC、USDT、DAIのようなステーブルコインが使われると思います。USDCなどのステーブルコインは、ポリゴンでネイティブに利用することができます。

Web2.0の便利さをWeb3.0で実現

-ポリゴンはどんな社会発展に寄与していきたいと考えていますか?

私たちは、互いの信頼を必要としない社会、トラストレスな社会を作ることが大切だと感じています。それは「人々がテクノロジーを活用し、信頼判断をする必要がなくなる社会」です。そうなれば、いろいろなものが第三者を介さずに簡単に取引を行うことができます。

そして私たちはブロックチェーンやWeb3.0の技術を使いトラストレスな状況でありながらも、まずは現在のWeb2.0の技術で生み出されている社会と同じレベルの、社会を作りたいと思ってます。

ユーザーがブロックチェーンを採用するには、技術が非常に高速で安価になる必要があります。私たちがポリゴンで構築したいのは、Web2.0でのユーザ体験をWeb3.0の環境でも得られるようにすることです。

人々がブロックチェーンの概念を理解していなくても、人々がブロックチェーン技術を使って取引を行うような、そんな未来を作りたいと考えています。

-ポリゴンが理想の社会を創出するためにはどれくらい時間がかかると考えていますか?

すぐにでも実現したいと私は思っていますが、少し時間がかかる気もしています。

なぜならそのためには政府規制の課題を乗り越えなければならないからです。実現には政府がブロックチェーン技術を適切に受け入れる必要がります。適切に規制されれば、人々の投資はより安全になり、より多くの人々が投資に参加するようになるでしょう。

アメリカ、EUなど各国政府はブロックチェーンに関する適切な規制を設けるべきです。この点では日本は世界の誰よりも先を行っているといえるかもしれませんね。

でも最近は政府による規制は思ったよりも早く実現されるかもしれないとも感じます。コインベースがNASDAQに上場しました。それも一つのきっかけになるかもしれません。

だから私は今後4~5年のうちにブロックチェーン技術は非常に一般的な技術として受け入れられるようになると考えています。その間にポリゴンは実現すべき社会を作っていきたいと思っています。

かならずポリゴンが重要なポジションを築き上げ、人々にとってかけがえのないものになると、私は楽観的に考えています。

-日本市場にどのようにアプローチしたいと考えていますか?

私は子供の頃から漫画を読んだり、アニメを見たりしていたので、日本の文化にとても興味を持っていました。日本のマーケットにもとても興味があります。まず日本には非常に優れた開発者がいます。これはブロックチェーンのエコシステムを構築する上で非常に重要なことです。

また日本はテクノロジーに対して非常にポジティブだと感じています。日本政府や国民は、テクノロジーを採用することに関して世界の他の政府よりも少なくとも5年、10年先をいっていると私は思っています。

日本市場は私たちにとって最も重要な市場の一つであることを認識しています。これまでも日本のエコシステムにおける重要な大手プレイヤーに接触するために特別な努力をしてきました。

例えばいま日本でも盛り上がっているNFTの分野ではdouble jump.tokyoやスマートアプリと話をして、実際に彼らにポリゴンを採用してもらっています。

今後も日本の大手企業やポリゴンでの開発を希望する開発者に積極的に接触したいと考えています。

取材/編集:竹田匡宏

この記事の著者・インタビューイ

あたらしい経済 編集部

「あたらしい経済」 はブロックチェーン、暗号通貨などweb3特化した、幻冬舎が運営する2018年創刊のメディアです。出版社だからこその取材力と編集クオリティで、ニュースやインタビュー・コラムなどのテキスト記事に加え、ポッドキャストやYouTube、イベント、書籍出版など様々な情報発信をしています。また企業向けにWeb3に関するコンサルティングや、社内研修、コンテンツ制作サポートなども提供。さらに企業向けコミュニティ「Web3 Business Hub」の運営(Kudasaiと共同運営)しています。

これから「あたらしい経済」時代を迎える すべての個人 に、新時代をサバイバルするための武器を提供する、全くあたらしいWEBメディア・プロジェクトです。

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