マルチインカム時代が来る〜Aerial Partners 代表取締役 沼澤健人氏インタビュー(3)

沼澤健人

前回の記事はこちら
仮想通貨(暗号資産)やその秘密鍵をどう相続するか?〜Aerial Partners 代表取締役 沼澤健人氏インタビュー(2)

エアリアルパートナーズの事業

−現在エアリアルパートナーズさんが取り組まれている事業について教えください

まずは仮想通貨取引に関する会計・税務支援事業です。仮想通貨の税務に関しては法整備がまだまだ追いついておらず、さらに複雑な税務計算が必要となります。それをサポートするために仮想通貨の税金計算を簡単に誰でも無料でできるサービス「Gtax(ジータックス)」、そしてそういった税金計算や申告を全部丸投げしたいというニーズにお答えする、仮想通貨に精通した税理士の紹介サービス「Guardian(ガーディアン)」を展開しています。

「Gtax」においては、仮想通貨交換業者やDapps提供者の他、クリプトファンド等の事業者のバックオフィス業務にもご利用いただいています。

またウェルス・マネジメント事業として法人・個人の仮想通貨のキャピタル・ゲインを中心としたクライアントの資産効率的に運用するサポートもしています。

そして、エアリアルパートナーズのもつ専門的・技術的ナレッジを活かして、企業向けにファイナンスや、会計を中心とした内部統制構築のためのコンサルティングを行うこともあります。制度的にも技術的にもまだまだ課題の少なくない業界なので、今後もいろいろな分野の企業様のお手伝いをできると思っています。

個人としても、エアリアルパートナーズの所属している一般社団法人日本仮想通貨ビジネス協会(JCBA)で税制検討部会の部会長を務めており、前向きで健全な税制のあり方について日々議論をさせていただいています。

確定申告までに準備しておくべきこと

−前年の確定申告を3月に終えて数ヶ月たったちょうど今ぐらいの時期は、どうしてもまだ先のこととして税金に関して意識が難しい時期だと思います。ただ取引をしていればまた来年バタバタするわけで、そういった意味では日々心がけておいたほうがいいことがありますか?

そうですね。まずこの時期は複雑な仮想通貨の税金がどのようなものなのか体系を理解しておくのがいいのではと思っています。仮想通貨の税金計算については複雑な部分も多いので、時間があるうちうちに学んでおくと、あとからバタバタしないでよくなります。弊社サイトでも基礎から個別論点の解説まで情報発信していますので、ぜひ参考にしてください。

参考:【基本の「き」】仮想通貨・暗号資産の税金 ~雑所得とは~

現在日本国内の主要な仮想通貨取引所で取引をしている方は、確定申告に必要なデータなどはそれぞれのサービスからダウンロードすることができます。基本的には、年間の取引、そして年末の保有数量が確認できる年明けから準備を始めていただければいいかと思うのですが、税金の仕組み上、さかのぼって対策できないことも多いため、日頃から自身の取引から生じる損益計算結果を把握することを推奨しています。実際に、昨年以前のエアリアルパートナーズの提供するサービスのユーザーの中にも、年内から取引履歴を管理し、損益状況を把握していればかなりの金額を節税できた… という方も多くいらっしゃいました。

そして、ご自身の損益状況を把握していただくには、取引所から必要なデータをダウンロードしていただいて、「Gtax(ジータックス)」に取り込んでいただくことで税金の計算ができるようになります。現在は取引履歴の取得に関し、損益計算に必要なすべての情報に関するAPIを公開している取引所が少ないのですが、近日中にAPIを通じての自動履歴取得機能の提供もスタートします。

その他の留意点としては、海外取引所を使っている方やDappsなどを使っている方は、まずこの時期は自分が仮想通貨をどのようなサービスで使っているかを把握しておき、それらのサービスのログイン情報や秘密鍵などを来年必要になった時に使えるように安全に管理しておくのがいいと思います。時間がない時に「あれログインできない?」みたいになると結構焦るものですので。

マルチインカム時代が来る

−確かに仮想通貨に関してはさまざまなサービスがあるので複雑ですね。また昨今は仮想通貨に限らず、個人が確定申告に必要なさまざまな収入があることも増えてきていると思います。

そうですね。正確には他にも申告が必要なケースがあるのですが、会社員の方でもその会社の給料所得以外に雑所得が20万円を超える場合は確定申告が必要になります。仮想通貨取引に係る所得は現状雑所得に分類されていますので、仮想通貨の利用者が確定申告をしなければならないのは、仮想通貨投資により20万円を超える利益が出ている場合になります。

最近は副業が解禁されてきているので、一定の要件にあたる場合はその副業での収入も申告が必要になります。そしてクラウドファンディングや、ブログやSNSでのアフィリエイト広告収入、ネット上で課金できるnoteのようなサービスでの収入、メルカリなどの販売収入など、インターネット上で個人がいろいろな種類の収入を得られる時代になってきています。まさにマルチインカム時代が始まっていると言っていいのではないでしょうか。

−そういった活動をしつつ、仮想通貨投資もしていると確定申告はかなり大変になりそうですね。

はい、それほどそれぞれの収入が多くなくても、合計で一定額を越えれば申告が必要になりますので金額にかかわらずチャネルが多い分、煩雑になります。

昨年もそういったご相談を頂く機会がありました。私たちの提供する「Guardian(ガーディアン)」では仮想通貨はもとより、その辺りのネットでの新しいさまざまな収入にも精通した税理士をご紹介できます。

そして仮想通貨・暗号資産の確定申告からライフプランや資産運用、相続など、仮想通貨・暗号資産に限らない「お金の悩み」全般に関するファイナンシャルサポートまでを専門家が提供する「Guardianプレミアム」というサービスも今年から開始しました。通常の「Guardian」のプランに加え、全般的なお金の悩みについて専門家がファイナンシャルサポートを行う専属サービスです。7月から9月末までの期間限定で受付開始しておりますので、お金について全般的にお悩みがある方はぜひご相談ください。

Web3時代に起きる社会的摩擦を解消したい

これからWeb3の時代になれば、今よりももっと自分の資産を管理するのが複雑になってきます。前回お話しした通り、その資産というのは「お金」以外にも、暗号資産や自分にまつわる情報のようなものまで、多岐に渡ってきます。

でもその管理が煩雑だったり大変だったりするという理由でイノベーションの速度が遅くなるのは本末転倒です。だからこそエアリアルパートナーズは、そういったテクノロジーの発展に合わせて起こる社会的な摩擦を解消することを通じてイノベーションを加速させ、今よりも幸せで便利な世界への発展に寄与していきたいと思っています。

(おわり)

→第1回はこちら「Web3時代のブラウザにあたるものを発明する〜Aerial Partners 代表取締役 沼澤健人氏インタビュー(1)」
→第2回はこちら「仮想通貨(暗号資産)やその秘密鍵をどう相続するか?〜Aerial Partners 代表取締役 沼澤健人氏インタビュー(2)」

 

編集:設楽悠介/大津賀新也(あたらしい経済)
撮影:大津賀新也

この記事の著者・インタビューイ

沼澤健人

株式会社Aerial Partners 代表取締役
仮想通貨取引計算サポートと税理士紹介を行う『Guardian』、仮想通貨取引計算ツールである『G-tax』を提供。Twitterの仮想通貨アカウント「二匹目のヒヨコ(@2nd_chick)」中の人としてブロックチェーン業界の会計・税務領域を中心に啓蒙活動を行っている。会計コンサルティングファームであるAtlas Accounting代表として、仮想通貨交換業者やブロックチェーンプロジェクトの顧問を務めており、一般社団法人日本仮想通貨税務協会理事も兼任。

株式会社Aerial Partners 代表取締役
仮想通貨取引計算サポートと税理士紹介を行う『Guardian』、仮想通貨取引計算ツールである『G-tax』を提供。Twitterの仮想通貨アカウント「二匹目のヒヨコ(@2nd_chick)」中の人としてブロックチェーン業界の会計・税務領域を中心に啓蒙活動を行っている。会計コンサルティングファームであるAtlas Accounting代表として、仮想通貨交換業者やブロックチェーンプロジェクトの顧問を務めており、一般社団法人日本仮想通貨税務協会理事も兼任。

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実は創業の時からチーム内では目標として掲げていたのですが、今年改めて「Web3.0時代の新しい情報管理インフラをつくる」つまり「Web3時代のブラウザにあたるものを発明する」という目標を強く打ち出しました。 現在に至るいわゆるWeb2までのインターネットでは、根幹技術として高速インターネットがあり、インタラクティブなコミュニケーションが可能になりました。そして、ここまでのインターネット史における最大の発明は、インターネット上の大量の情報の中で、ITリテラシーが低い人でも自分が欲しい情報にアクセスできるようにした、モザイクから発展していったWebブラウザだと思っています。

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具体的には個人の利用者がDappsゲームの利益やDEXでの取引を管理する仕組みなどを構築しています。また、事業者向けにはイーサリアム上で構築されるDapps提供者を対象にオンチェーンのトランザクションを管理・損益計算して、会計上の仕訳データを自動排出する仕組みの提供もスタートしています。

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