東宝のWeb3への挑戦、オリジナルIP「Mofu Mofu Music Caravan」で目指す、コンテンツビジネス新領域

東宝のWeb3への挑戦 / Sei Web3 Day for Japan

大手企業担当者やWeb3領域の国内外のプレイヤー/有識者らが多数参加したカンファレンス「Sei Web3 Day for Japan」が4月に東京・渋谷で開催された。レイヤー1ブロックチェーン「Sei(セイ)」と「KudasaiJP」、「あたらしい経済」「CryptoBase」の共催イベントだ(→イベント全体のレポートはこちら)。

この記事では「Sei Web3 Day for Japan」の中のコンテンツ業界におけるWeb3への挑戦事例をテーマにしたセッションをお届けする。東宝 エンタテインメントユニット開発チーム プロデューサー 栢木琢也氏、SaltSweeet 代表取締役 虞臻(ユ・ジェン)氏が登壇し、アクセンチュア 中谷踏太郎氏がモデレータを務めたセッションだ。

「Mofu Mofu Music Caravan」で目指す、コンテンツビジネス新領域

現在アクセンチュアでメディア・エンタメを担当する中谷氏は、コンテンツ業界でWeb3活用の事業に携わってきた経歴を持つ。中谷氏は自身の経験を交えつつ、東宝の栢木氏とSaltSweeetのジェン氏に、東宝が挑戦している新たなIP事業のWeb3活用について、複数の質問を行った。

東宝の栢木氏は、普段、映画や配信ドラマのプロデュースなどを行う開発チームに所属している。「原作ものを扱うことの多い東宝では、自社保有のIPが意外と少ないこともあり、かねてよりオリジナルIPの開発という命題が同チームへ出されていた」という。

そんな中栢木氏は「新しいオリジナルキャラクターをつくる上で、ファンコミュニティ創生やマネタイズの手段としてWeb3が有用なのではないか」と考えるようになったと述べた。

また「東宝単体ではWeb3マーケティングの組み立てが難しいため、SaltSweeetと協力した」とのこと。デジタルマーケティング会社であるSaltSweeetは、IPビジネスサポートを行う会社だ。東宝とは過去にも、Web3以外の取り組みで中華圏でのサポートを行った実績があるという。ジェン氏は新規IPビジネスサポートを行う以前は、中華圏でコミュニティを活用したIPサポートを行っていた経歴がある。

現在、両社が協力し推進しているIPが「Mofu Mofu Music Caravan(以下MMMC)」だ。このIPは音楽を軸に開発中のオリジナルIP。“もふもふ”という言葉を具現化した世界・モフワールドを舞台に、バーチャルキャラクターバンドが、自由な音楽を取り戻すために立ち上がるというファンタジーストーリーだ。

栢木氏は「今後マーチャンダイジングで露出を増やし、最終的には映画もしくはアニメシリーズにすることを目標にしている」と述べた。

日本市場におけるポジションの「空席」を狙う

中谷氏からNFTやWeb3活用でオリジナルIPをやっていこうと思ったきっかけを問われた栢木氏は、日本市場における同ポジションの「空き」を挙げた。

「日本市場において、Azukiなどの世界的NFTプロジェクトは入ってきているものの、日本企業でIPをつくっている会社がまだ少ないため、参入のチャンスがある」と栢木氏。また、グローバルで仕掛けていきたいという狙いもあり、国境のない領域であるWeb3で挑戦してみたいと感じたという。

登壇時点で、MMMCはコンテンツリリース前であったが、Xのプロモーションのみですでに約14000人のフォロワーがおり、内85%が英語圏ユーザーだという。「これは東宝保有のIPではあり得なかったことで、新しい広がりを見せているIPだ」と栢木氏は述べた。

SaltSweeetのジェン氏も、MMMCのWeb3戦略は数字から始めたと話す。

「日本は海外と比べまだウォレット数が少なく、特にNFTのアクティブなウォレット数は2000ほどであり、そこだけで盛り上がりを作るのは難しいと感じたと」と述べた。また「海外のNFT・Web3業界ではまだ著名でない東宝のIPを盛り上げていくためには、すでにNFTへの理解が深いユーザーから火をつけたいとの想いがあった」とのこと。

MMMCはNFTのアクティブユーザーへのアプローチからスタートし、MMMCを好きになってくれるユーザー獲得が最初の戦略だったという。

ジェン氏は「現在ではNFTプロジェクト「Azuki」の近くにいるホルダーやアニメ愛好家からの認知を獲得し始めており、その層にMMMCを届けながら次なるアクションを模索中だ」と述べた。

またジェン氏は「第一弾の施策として、MMMCのミュージックビデオの公開を重視している」と述べた。海外のNFTコミュニティのキーワードはカルチャーであり、カルチャーをちゃんと伝えるためにも物語(ストーリー)をちゃんと伝えられるアニメは有用だというのがジェン氏の考えだ。

「コンテンツとホルダーが繋がり、どういった化学反応を起こすかについても期待している」とジェン氏。

MMMCでは、Web3施策の第一弾としてユーザーコミュニティ向けに500枚のNFTをフリーミントで提供した。NFTのコンセプトは「限られた中でこそこそ聞けるラジオ」だ。ディスコード内でAMAを行い、期待されるコンテンツやユーティリティなどについてヒアリングを行ったという。また「コミュニティ内でキャラクター設計やストーリー展開の想像といったアイディア交換がなされる点も、IPコミュニティ特有の強みだ」とジェン氏は語る。

実験的PRにも挑戦

「今回のPR手法も東宝にとっては実験的試みとなる」と栢木氏。事前に全方位的に周知させる東宝の従来のPR手法とは異なり、同IPは登壇時点では、Web3ユーザー向けにはこっそりとしたPRを実施したのみで、Web2ファン層には全く情報が出ていない状況だ。

栢木氏は「今後Web2向けのプロモーションも仕掛けていくとのことで、Web2とWeb3のユーザーを融合させていく手法をとる」と述べた*。

また中谷氏は、二次流通は認める一方で二次創作には厳しいといったコンテンツ業界の風潮について質問した。

栢木氏は「MMMCを二次創作できるIPにしていきたい」と述べた。二次創作にあたるゲーム実況に関してガイドラインを設けて認めている任天堂などを例に挙げ、「エンタメ業界全体として二次創作には寛容になってきていると感じる」と述べた。「東宝では二次創作を認めるIPがまだないため、オリジナルIPであるMMMCで、そういった挑戦もしていきたい」と続けた。

「ブランド棄損の防ぎ方についても、既存やり方に加え、Web3ならではのアプローチをとっていきたい」と栢木氏。「NFTホルダーがブランディングについて考えてくれるメンバーになるため、コミュニティと協力し、違法なコンテンツを排除していく体制をとっていきたい」と考えを示した。

今後もたくさんの情報公開を予定していると栢木氏。まずはMMMCのXをフォローして欲しいと会場に呼びかけた。

*なお、5月10日には同IPの1stシングルのリリースが発表され、著名な声優・アーティスト陣の起用が発表されている。

→全体レポートはこちら <Web3に挑戦する日本企業が集結!「Sei Web3 Day for Japan」>

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取材/編集:髙橋知里

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あたらしい経済 編集部

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これから「あたらしい経済」時代を迎える すべての個人 に、新時代をサバイバルするための武器を提供する、全くあたらしいWEBメディア・プロジェクトです。

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