今週もSBI VCトレード提供の暗号資産(仮想通貨)に関するウィークリー・マーケットレポートをお届けします。
6/22~6/28週のサマリー
- イランがカタールとイラクの米軍基地に事前通告の上でミサイルを発射
- トランプ米大統領がイラン・イスラエルの全面停戦を発表
- 米中が貿易協議に正式署名
- RippleのCEOが控訴取り下げを発表し、SECも同様に控訴取り下げの見通しと発言
暗号資産市場概況
6/22~6/28週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比+4.66%の15,539,150円、ETH/JPYの週足終値は同+5.64%の352,750円であった(※終値は6/28の当社現物EOD[6/29 6:59:59]レートMid値)。
先週の暗号資産市場は中東情勢の緊張高まりの緩和と米国発の通商対立に関する楽観的な見方を背景に、108,000ドル台まで回復したものの、米株式市場の史上最高値更新ラリーには追随できずやや弱含む展開となった。
週初は、イランとイスラエルの対立に米国が直接関与し、さらにイラン議会が世界の原油輸送の要衝であるホルムズ海峡の封鎖を承認する決議をしたことで緊張感が一気に高まった。これを受け、リスク資産である暗号資産は売り優勢でスタートした。イランは米国への報復攻撃を示唆し、複数メディアがイランの攻撃兆候を報じる中、最終的にはカタールとイラクの米軍基地にミサイルを発射。しかし、その多くが迎撃され、市場では「示威的な攻撃に過ぎない」との見方が暗号資産を再び反発させた。
ビットコインはイラン議会によるホムルズ海峡封鎖承認決議と米軍のミサイル迎撃までの間、節目となる100,000ドルを割り込んだ98,000ドル台まで下落したが、決議前の102,000ドル台へ値を戻す高いボラティリティを見せた。月曜朝7時に先物市場がオープンすると、株式市場と共にビットコインも上昇。市場参加者はイランが海峡封鎖を実行する可能性は低いと判断し、リスク資産である暗号資産への買いが入ったと見られる。
火曜朝7時にはトランプ米大統領がイラン・イスラエル間の全面停戦を発表。ビットコインは106,000ドルまで急騰した。数日前までB-2爆撃機によるイラン核施設への空爆を実施していた米国が停戦を表明したことで投資家心理が改善。停戦発表後も、イランとイスラエルは局地的な攻撃を続けたが、原油価格が24時間で13%以上下落するなど、緊張感の和らぎに繋がった。
その後、投資家の関心は中東情勢から、まもなく期限を迎える貿易関税協議へと移った。ラトニック商務長官やベッセント財務長官は「複数国との関税協議の最終調整をしており、9月1日までに合意できる可能性がある」と発言。一方でカナダとは、米テック企業に対するデジタルサービス税を理由に貿易協議を中断すると発表。カナダとの貿易交渉中断のヘッドラインを受けても株式市場は堅調で、金曜日にはS&P500およびナスダックが史上最高値を更新した。一方で暗号資産市場は株式市場ほどの勢いは見られず、やや軟調なまま週末を迎えた。
今週は、製造業関連指標と雇用統計が公表される予定だが、7月4日を期限とする「一つの大きな美しい法案(One Big Beautiful Bill Act)」の修正内容や採決結果、貿易協議に関する報道に注目が集まる見通しだ。現在トランプ政権は、関税・減税・規制緩和を柱に主要政策を推進しており、今週はそのうちの二つが山場を迎える重要局面である。なお先週木曜には、米連邦準備制度理事会(FRB) が銀行資本規制の緩和を決定・発表し、米国債に対する潜在的な需要確保へ向け、伝統金融での動きも見られた。
これらの政策が暗号資産市場にどのような影響を及ぼすかは現時点で断定しがたいものの、過剰流動性相場の局面では、暗号資産を含むリスク資産の価格が上昇しやすい。貿易関税による物価上昇を一過性と捉えつつ、国債需要を銀行資本規制の緩和とステーブルコインの制度化で下支えしようとするトランプ政権のスタンスは、引き続き暗号資産市場にとって追い風と言えるだろう。
1) BTC/USD週間チャート(30分足)

2) BTC/JPY週間チャート(30分足)

3) ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格

4) イーサリアム現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、イーサリアム価格

6/22~6/28週の主な出来事
6/29~7/5週の主な予定
【今週のひとこと】WLFIの譲渡性
トランプ氏とその家族が支援する暗号資産プロジェクト「ワールド・リバティ・ファイナンシャル(以下、WLF)」が、2025年6月26日(日本時間)、新たに発行するステーブルコイン「USD1」の準備金に関する監査結果の公開と、関連アプリの正式リリースに関する進展を発表し、暗号資産市場で大きな注目を集めています。共同創業者のザック・フォークマン氏は、暗号資産メディア「ブロックワークス」主催のカンファレンスで、独立した第三者による監査を通じてUSD1の準備金の裏付けを明確にし、プロジェクトの透明性を一層強化していくとの考えを示しました。
WLFを象徴するトークン「WLFI」は、当初は譲渡性を持たず、保有者にはプロジェクト運営に関する投票権のみが付与されるという、特殊な設定がなされていました。しかし今回、コミュニティからの強い要望や、機関投資家からの圧力を受け、譲渡性の付与を含めた方針転換が図られる見通しも示唆されています。
こうした動きの背景には、トランプ氏の大きい政治的影響力や、同氏が暗号資産投資で得た5,700万ドルの利益があると見られています。しかしながら、ブロックチェーン分析企業チェイナリシスの2025年レポートでは、違法取引の約63%にステーブルコインが関与しているとのデータもあり、準備金の監査や透明性の信頼性が重要な焦点となっています。また、WFLは機関投資家向けに対応を拡大するとともに、個人ユーザーがDeFiにアクセスできるようにプロジェクトを推進していますが、規制遵守リスクも指摘されています。
WLFのUSD1は、米ドルに価値を連動させることで国境を越えた決済や取引の利便性を高め、既存の大手ステーブルコイン発行社であるCircleのUSDCなどと同様、ステーブルコインの普及促進を目指しています。WLFのガバナンストークンである「WLFI」も譲渡性の解禁により、取引所への上場も視野に入り、個人投資家、機関投資家からの期待も強まっています。また米上院では、ステーブルコイン規制確立法案の「GENIUS Act」が可決され、トランプ政権の暗号資産推進姿勢と相まって、今後の展開が市場の注目を集めそうです。しかし、トランプ一家の暗号資産事業やラトニック商務長官のCantor社といった利益相反の課題も依然として残ります。今後は利害関係の透明性の確保と厳格な監査体制の構築や規制遵守リスクの管理がプロジェクトの成否を左右する鍵となるでしょう。
このレポートについて
国内の暗号資産(仮想通貨)取引所「SBI VCトレード」提供の週間マーケットレポートです。毎週月曜日に最新のレポートをお届けします。
<暗号資産を利用する際の注意点>
暗号資産は、日本円、ドルなどの「法定通貨」とは異なり、国等によりその価値が保証されているものではありません。
暗号資産は、価格変動により損失が生じる可能性があります。
暗号資産は、移転記録の仕組みの破綻によりその価値が失われる可能性があります。
当社が倒産した場合には、預託された金銭及び暗号資産を返還することができない可能性があります。
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暗号資産は支払いを受ける者の同意がある場合に限り、代価の支払いのために使用することができます。