今週もSBI VCトレード提供の暗号資産(仮想通貨)に関するウィークリー・マーケットレポートをお届けします。
5/18~5/24週のサマリー
- 米上院がステーブルコイン規制「GENIUS法案」の審議進行を可決
- 米テキサス州、戦略的ビットコイン準備法案「SB21」が下院で承認
- ビットコインがドル建てで112,000ドルをタッチ、史上最高値を更新
- トランプ大統領推進の大型税制修正案が米下院で可決、米30年債利回りが5%を突破
- トランプ大統領、欧州連合(EU)に6月1日から50%の関税を課すと投稿
暗号資産市場概況
5/18~5/24週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比+3.1%の15,518,650円、ETH/JPYの週足終値は同▲0.06%の362,210円であった(※終値は5/24の当社現物EOD[5/25 6:59:59]レートMid値)。
先週の暗号資産市場は、米ドルに対する不安感とビットコインの将来的な需要期待が重なり、過去最高値を2度更新し、伝統的な金融資産をアウトパフォームする展開となった。ビットコイン先物市場でも、建玉残高が一時800億ドルを突破し、過去最大規模に達した。資金調達率もプラスで推移しており、ロングポジションの増加がトレーダーの強気姿勢を示唆している。
市場参加者の米ドルへの不安は週初から表面化した。先週土曜日に米格付け会社ムーディーズが米国債の格下げを発表した影響で、月曜の国債市場オープンとともに米30年債利回りは5%まで上昇。他の米大手格付け会社であるS&Pやフィッチはすでに格下げしており、ムーディーズもそれに追随した。これを受けてリスク資産である暗号資産には売りが入り、ビットコインは102,100ドル台までおよそ5,000ドル下落し、週中の安値を記録した。しかし、ベッセント米財務長官が今回の格下げを後方指標にすぎないものと位置づけたことで、米国市場がオープンすると株式市場と共に押し目買いが入り、ビットコインは105,000ドル台まで反発した。
週央以降は、ビットコインと伝統的金融資産との間で異なった値動きが見られた。米20年債入札の不調にもかかわらず、大型減税を掲げたトランプ大統領の発言はドル不安を再燃させた。のちに株式・ドル・米国債が同時に下落する「トリプル安」が見られたものの、ビットコインは市場クローズまでに下げ幅を巻き戻した。
この背景には、中央銀行や政府から独立した資産というビットコインの特性や、法制度整備の進展による需要期待があると考えられる。市場では、通商対立を契機とした米国売りの流れが払拭されない中、懸念されていた米国債需要の低迷や、米下院で大型減税案が可決されたことを受け、ドルに対する不安感が広がっている。なぜなら可決された税制法案の修正案には、米国の債務上限引き上げも含まれており、財政赤字や債務問題の抜本的解決には程遠いと捉えられているためだ。また、米国政府が価値を保証する法定通貨ドルの信用を揺るがしている要因とされている。
一方で、非中央集権的かつ独立した資産であるビットコインには投資家の関心が集まり、伝統的な金融資産とは異なる値動きが観察されている。また、米上院における「GENIUS法案」の審議進展や、テキサス州下院における戦略的ビットコイン備蓄法案「SB21」の可決といった法制度面での進展が需要拡大への期待を高め、ビットコインは新たな過去最高値である112,000ドルを記録した。
しかし、金曜日にトランプ大統領が欧州連合(EU)との貿易協議の進展が見られないとして、6月1日から50%の関税を課す方針を示したことで、ビットコインは111,000ドルを下回り、108,000ドル台で週末を迎えた。
今週は、FRBパウエル議長の発言をはじめ、米国第一四半期GDP確報値やPCEデフレーター、消費者信頼感指数など、ハードデータとソフトデータの両方が発表される予定だ。ただし、最近の市場はトランプ大統領の関税政策へ神経質に反応しており、新たな交渉動向には引き続き注視する必要がある。トランプ大統領は高い関税率を交渉用の手札としており、今回の50%関税案に対するEU側の対応次第では高いボラティリティが予想される。不確実性が収まらない今のような市場では、暗号資産を含む様々なアセットクラスでポートフォリオを多角化する重要性が一層高まっている。
1) BTC/USD週間チャート(30分足)

2) BTC/JPY週間チャート(30分足)

3) ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格

4) イーサリアム現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、イーサリアム価格

5/18~5/24週の主な出来事
5/25~5/31週の主な予定
【今週のひとこと】トランプ大統領の大型減税法案
5月22日(現地時間)、米下院は大型減税を含む税制・歳出法案を215対214の僅差で可決し、上院に送付しました。これはトランプ大統領の主要な経済政策であり、2017年の減税措置の恒久化に加え、グリーンエネルギー優遇策の廃止、低所得者層向け福祉予算の削減、チップ・残業代の非課税化、国境警備予算の増額などが主な内容です。
この法案は、個人消費や企業投資を刺激し、経済成長や雇用創出に繋がる可能性があります。一方で、大規模な減税は財政赤字の拡大と政府債務の増加を招くと懸念されています。米議会予算局(CBO)は、今後10年間で連邦債務が数兆ドル増加すると試算しています。現在、米国の政府債務はGDP比で124%(2024年12月時点)と歴史的な高水準にあり、これがさらに悪化すれば、米国の財政健全性に対する市場の信認が揺らぐ可能性があります。
財政赤字を補填するための米国債発行が増加すると、市場での供給過多により米国債の価値が下落し、金利が上昇する圧力がかかります。また、財政規律への懸念から格付け会社が米国債の格下げを実施する可能性があり、実際に信用格付け機関のMoody’sは5月16日(現地時間)、債務膨張を理由に米国債の格下げを行いました。これにより米国債の信認が低下すれば、さらなる金利上昇を招き、米国債の魅力が薄れることで、ドル安が進む可能性も考えられます。
このような状況は、投資家が特定の国家に依存しない「無国籍資産」や「デジタルゴールド」としてのビットコインに資金を移す傾向を強める可能性があります。実際に、今回の減税法案可決報道後、ビットコインが金(ゴールド)とともに逃避的な買いを集めたとの分析も出ています。
今回の下院での可決は、トランプ大統領の主要公約実現に向けた重要な一歩です。減税による経済成長効果と財政悪化という副作用が市場にどのような影響をもたらすのか、今後の動向が注目されます。
このレポートについて
国内の暗号資産(仮想通貨)取引所「SBI VCトレード」提供の週間マーケットレポートです。毎週月曜日に最新のレポートをお届けします。
<暗号資産を利用する際の注意点>
暗号資産は、日本円、ドルなどの「法定通貨」とは異なり、国等によりその価値が保証されているものではありません。
暗号資産は、価格変動により損失が生じる可能性があります。
暗号資産は、移転記録の仕組みの破綻によりその価値が失われる可能性があります。
当社が倒産した場合には、預託された金銭及び暗号資産を返還することができない可能性があります。
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暗号資産は支払いを受ける者の同意がある場合に限り、代価の支払いのために使用することができます。