ビットコイン現物ETFの米国承認前後の価格推移、ETFの重要性とBTC需給への影響など解説(暗号資産 市場レポート 1/15号)

1/7~1/13週のサマリー

  • ETF承認日前日、SECのX(旧Twitter)にてETF承認との偽投稿により市場が混乱
  • SEC(米証券取引委員会)は11件のビットコイン現物ETFを承認
  • ビットコイン現物ETF取引初日の売買代金は46億ドル超と盛況

暗号資産市場概況

1/7~1/13週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比▲1.69%の6,245,400円、ETH/JPYの週足終値は同+15.36%の374,040円であった(※終値は1/13の当社現物EOD[1/14 6:59:59]レートMid値)。

暗号資産の世界的普及という観点で歴史に残る一週間となった。週初は現物ETF承認期待を受けてBTCがETHをアウトパフォームする前週からの流れが継続し、騰勢。8日の米国市場開場後は、BTCの建玉が積まれながら2023年来高値を切り上げる展開を見せた。

ARK 21 SharesのBTC現物ETF承認可否の最終判断期限は1月10日(日本時間11日)であったが、前日9日(同10日6:11)、SNS(X)においてSEC(米証券取引委員会)のアカウントが何者かに侵害され、ETF承認との投稿がなされた。15分後にはゲンスラーSEC委員長が「ETFは承認されていない」旨を発信。SECがSNSアカウントの権限を回復し、誤投稿を削除・正式アナウンス(ETF未承認)を行うと事態は一旦収束したが、この日の市場は混迷を極めた。

翌日には正式にBTC現物ETFが承認されたものの、実際の承認前後も市場は疑心暗鬼であった。承認時は①SEC公式サイトで承認文書PDFアップロード②各社承認報道③SEC公式サイトからPDF削除④SEC公式サイトで承認のステートメント公開、という流れをたどったが、前日の誤報もあり、特にPDF削除前後においてはどの情報を信じるべきか市場参加者は確信が持てない状況であった。イベントの大きさに比して値動きは小さく(平時に比べれば大きな値動きであるものの)、前日の値動きによってロングポジションが整理されていたことに加え、公開情報の信ぴょう性が揺らいでいたことが影響したと考えられる。

前回の週間レポートでは「BTCの結果が確定した後は、市場の関心はETHの現物ETFへと移っていくことが想定される」としていたが、この契機は承認前日の誤報が担うこととなり、BTC・ETHの週間パフォーマンス差にも反映された。誤報のタイミングを示したBTC/USD, ETH/USD, ETH/BTC並列チャートを掲載したため、下図を参照されたい。

ETF取引開始初日はBTC現物ファンド全体で46億ドル超の出来高を記録。過去に上場してきたETFと比べても見劣りしない、暗号資産の主要アセットとしての台頭を予感させる華々しい幕開けとなった。翌日の米国市場開場後のBTC価格は週初水準まで下落。過去ETF承認前後で見られてきた「事実売り」に加え、現物転換前のGBTC(Grayscale社のBTCファンド。現物ETFへの転換前はBTCの償還ができず、ディスカウント価格で取引されていた)でポジションを構築していた投資家による退避(および、より管理手数料が安い他社への移転)が影響しているのではないだろうか。

GBTCからの資金流出は、BloombergのアナリストEric Balchunas氏が公開した1日目、2日目の各ファンドに対する資金流入出状況からも確認することができる。GBTCからの資金流出が顕著である一方、各ファンドを総合すると8億ドル以上の資金流入超となっており、取引開始直後のETF市場全体の受け止め方はポジティブであったとも捉えられる。

次週以降について、足もとでは米経済指標の動向(特に小売売上高)に注目したい。直近の経済指標では、CPIの鈍化や労働参加率の減少(フルタイム労働者の減少)などが示され、米経済の減速傾向が観察されてきた。一貫して堅調に推移していた消費(小売売上高)が弱まった場合、FRBによる利下げへの織り込みは強化されると考えられる。また、市場予測よりもはるかに消費が弱くなれば、リセッション懸念が再燃する可能性も懸念される。

中長期では、残り100日を切ったBTCの半減期に加え、第1四半期を見込まれている(延期の可能性も存在)次期ETHアップグレード「Dencun」、ETH現物ETFの承認可否判断(VanEckが申請しているETFの最終承認期限が5月23日)等のイベントが控えている。第3銘柄のETFが申請され、盛り上がることも十分に考えられるため、これらのヘッドラインには注意を払いたい。

BTC/USD週間チャート(30分足)

TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成

BTC/JPY週間チャート(30分足)

TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成

BTC/USD, ETH/USD, ETH/BTC週間チャート(30分足)

(チャート内破線はETF承認との誤報のタイミング)
TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成

GBTCのプレミアム / ディスカウント推移(2015年5月~現在)

Coinglass提供のチャートにて SBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成

各ETFの資金流入・流出状況(1日目、2日目)

Bloombergアナリストが公開した各ETFの資金流入出状況 / 単位は百万ドル

1/7~1/13週の主な予定

1/14~1/20週の主な出来事

今週のひとこと「ETFの重要性とBTC需給に及ぼす影響・ならびに米国のETFが他国に比べて重視される理由について」

暗号資産は歴史的に他の資産クラス(米ドル指数や債券、商品、株式等)との相関が低く、伝統的なポートフォリオにおいて、暗号資産を組み入れることでリターンを向上させることができる可能性があります(一例として、Coinbaseが行った研究が存在します)。

このことから、既存金融の世界において暗号資産をポートフォリオに組み入れることに一定の需要が常に存在していたといえるでしょう。一方で、年金基金や退職金口座、証券口座、機関投資家などは、未登録証券とみなされる可能性がある暗号資産をポートフォリオの一部とすることはできないというジレンマがありました。また、暗号資産取引所の不透明性を敬遠していた一般投資家にとっても、規制当局の監視を受けて運用されるETFは、今までよりも安心して投資することができる投資対象と見なされるようになります。

現物ETFが購入されると、ETFの管理者は市場に存在する原資産の現物を買い付けて保管するため、上記のような大口投資家・一般投資家による継続的な資金流入は、長期の暗号資産価格に対してプラスに働くのではないか、ということが、既存の暗号資産市場参加者がETFに期待していた内容なのです。

BTCもETHも、先物ETFは既に存在しますが、今回本文で取り上げたGBTCのように、償還(ETFを返還して原資産を受け取ること)することができない先物ETFは、原資産の価格とは乖離した値動きをしてしまうことがありました(これを「トラッキングエラー」と呼びます)。現物ETFが承認されたことで、米国のETF投資家は真の意味で暗号資産へのエクスポージャーを獲得した、というのが、今回の承認の重要性です。

米国のETFが他国のETFと比べて特別視される理由は、市場規模に占める米国の存在感の大きさによるものです。以下の表はヨーロッパ最大級のデジタル資産管理会社CoinSharesが公開している年次報告書における、各国 / 各暗号資産 / ETF運営者の内訳です。今後の現物ETFが全く同じ内訳になる保証はありませんが、先物ETF市場における米国の、そしてBTCの割合の大きさの一端が見えるのではないでしょうか。

CoinSharesの年次報告書よりSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成

BTCETFで最大のGrayscale社ETFの運用資産総額は金最大のETF「SPDR Gold Shares」の半分以下であり、株式最大のETF「SPDR S&P 500 ETF Trust」の6%以下であるのが現状です。そのように考えると、今後BTCの時価総額の拡大にはまだまだ上昇余地が残されているかもしれません。

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この記事の著者・インタビューイ

SBI VCトレード

SBIグループの暗号資産取引所「SBI VCトレード」。SBIグループの掲げる顧客中心主義の理念のもと、お客様の満足度向上に資する暗号資産取引に係るサービスをフルラインナップでご提供してまいります。

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