実装されなかった、IPアドレス宛へのビットコイン送金

小宮自由

実装されなかった、IPアドレス宛へのビットコイン送金

ビットコインを発明し、未だその正体が分かっていないサトシ・ナカモト。そんなサトシが残した約2年間の文章を、小宮自由氏の解説と共に紹介する連載「サトシ・ナカモトが残した言葉〜ビットコインの歴史をたどる旅」の第51回。

まずサトシのメールの前に、本連載の元になっている書籍『ビットコイン バイブル:サトシナカモトとは何者か?』の著者フィル・シャンパーニュ氏の解説も掲載する。

フィル・シャンパーニュ氏の解説

当初、ビットコインアドレスではなくIPアドレスに(もしくは、ビットコインアドレスとIPアドレスに)送金する可能性が考慮されていた。

サトシ・ナカモトの投稿

それではサトシの投稿をみていこう。

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IPアドレスへのビットコイン送金

投稿:lfm 2010年08月05日 午後02時22分14秒

(注:斜体部分は、サトシ以外の者の質問を指す)

ビットコインのコマンドライン・インターフェースからIPアドレスにどう送金するか、イメージが浮かびません。この機能はもう実装済みですか?(必要なら、Linuxの64ビット版を使っています)

Re:IPアドレスへのビットコイン送金

投稿:サトシ 2010年08月05日 午後05時28分40分

実装されていません。

その種の送金法を誰も望んでいないことが分かったので、開発段階で注目を集めなかったのです。

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解説

ビットコインをIPアドレス単位で送金できないのかというユーザの質問です。サトシはきっぱりと「実装しない」と言っています。IPアドレスは常に一人が独占して使う仕組みではなく、動的に変更されることもあり、プライバシーの問題も生じるため、採用するメリットは無いでしょう。

小宮自由

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小宮自由

東京工業大学でコンピュータサイエンスを学び、東京大学ロースクールで法律を学ぶ。幾つかの職を経た後に渡欧し、オランダのIT企業でエンジニアとして従事する。その後東京に戻り、リクルートホールディングスでAI(自然言語処理)のソフトウェア作成業務に携わり、シリコンバレーと東京を行き来しながら働く。この時共著者として提出した論文『A Lightweight Front-end Tool for Interactive Entity Population』と『Koko: a system for scalable semantic querying of text』はそれぞれICML(International Conference on Machine Learning)とACM(Association for Computing Machinery)という世界トップの国際会議会議に採択される。その後、ブロックチェーン業界に参入。数年間ブロックチェーンに関する知見を深める。現在は BlendAI という企業の代表としてAIキャラクター「デルタもん」を発表するなど、AIに関係した事業を行っている。 https://blendai.jp/ https://twitter.com/blendaijp

東京工業大学でコンピュータサイエンスを学び、東京大学ロースクールで法律を学ぶ。幾つかの職を経た後に渡欧し、オランダのIT企業でエンジニアとして従事する。その後東京に戻り、リクルートホールディングスでAI(自然言語処理)のソフトウェア作成業務に携わり、シリコンバレーと東京を行き来しながら働く。この時共著者として提出した論文『A Lightweight Front-end Tool for Interactive Entity Population』と『Koko: a system for scalable semantic querying of text』はそれぞれICML(International Conference on Machine Learning)とACM(Association for Computing Machinery)という世界トップの国際会議会議に採択される。その後、ブロックチェーン業界に参入。数年間ブロックチェーンに関する知見を深める。現在は BlendAI という企業の代表としてAIキャラクター「デルタもん」を発表するなど、AIに関係した事業を行っている。 https://blendai.jp/ https://twitter.com/blendaijp

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