QRコードでビットコイン決済、そのアイデアが生まれた瞬間

小宮自由

QRコードでビットコイン決済、そのアイデアが生まれた瞬間

ビットコインを発明し、未だその正体が分かっていないサトシ・ナカモト。そんなサトシが残した約2年間の文章を、小宮自由氏の解説と共に紹介する連載「サトシ・ナカモトが残した言葉〜ビットコインの歴史をたどる旅」の第34回。

まずサトシのメールの前に、本連載の元になっている書籍『ビットコイン バイブル:サトシナカモトとは何者か?』の著者フィル・シャンパーニュ氏の解説も掲載する。

フィル・シャンパーニュ氏の解説

携帯電話のQRコードに関連する会話が二つあった。フォーラムでユーザー「ec」が出した提案を元に、サトシはQRコードをビットコインアドレスに用いて販売時の支払に利用することを提案した。これは今日では普通に行われていることである。

【訳注】
*1 過去の記事「ビットコイン・マイニングの難易度、どう調節されている?」を参照。

サトシ・ナカモト 2010年02年24日 午前05時57分43秒

それではサトシの投稿をみていこう。

========================

Re:ビットコインのURI(Uniform Resource Identifier、「統一資源識別子」)スキーム
(注:斜体部分は、サトシ以外の者の質問を指す)

販売時にそれがあると便利です。ビットコインアドレスを暗号化したQRコードがスクリーン上の総額と一緒にレジで提示されたら、携帯電話でスキャンして支払います。
https://bitcointalk.org/index.php?topic=177.msg1814#msg1814

Re:ビットコイン モバイル端末
サトシ・ナカモト 2010年02月24日 午前05時57分43秒
引用:sirius-m 2010年06月10日 午後01時51分16秒

モバイル端末のブラウザーで vekja.net や mybitcoin.com のようなサービスに信用できる範囲でお金を貯めて利用するのも可能です。

今のところそれが最善の選択肢だと思います。現金と同じで、ポケットに全額を入れず、偶然の出費のためのお金だけを持ち歩きます。

モバイル端末に最適化された縮小バージョンのサイトを作れるかもしれません。アプリがあればフロントエンドにしてQRコードリーダーをメインの機能にするか、あるいは、すでに普及版のQRコードリーダー・アプリがあるので、ウェブサイト側ではアプリからのスキャンを実行できるように設計できます。

大規模に関わるピアツーピアではなく vekja や mybitcoin のフロントエンドのアプリがiPhoneアプリにあれば、アップルは承認するかどうか。もし無理ならそれはなぜか? 大抵普及するのはアンドロイド・アプリでしょう。アプリは必須というわけではなく、モバイルサイズのウェブサイトがあれば十分です。

家で使う自分のビットコイン・サーバーのウェブ・インターフェースがみんなの解決策になるわけではありません。大半の利用者は静的IPを持っておらず、ポート・フォワーディングの設定は面倒すぎます。

========================

解説

現在はQRコードでのビットコイン決済は頻繁に行われています。飲食店や(ECではない)小売店で買い物する際のデファクトスタンダードと言えるでしょう。そのアイデアが生まれた瞬間です。

小宮自由

→この連載の他の記事を読む

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

小宮自由

東京工業大学でコンピュータサイエンスを学び、東京大学ロースクールで法律を学ぶ。幾つかの職を経た後に渡欧し、オランダのIT企業でエンジニアとして従事する。その後東京に戻り、リクルートホールディングスでAI(自然言語処理)のソフトウェア作成業務に携わり、シリコンバレーと東京を行き来しながら働く。この時共著者として提出した論文『A Lightweight Front-end Tool for Interactive Entity Population』と『Koko: a system for scalable semantic querying of text』はそれぞれICML(International Conference on Machine Learning)とACM(Association for Computing Machinery)という世界トップの国際会議会議に採択される。その後、ブロックチェーン業界に参入。数年間ブロックチェーンに関する知見を深める。現在は BlendAI という企業の代表としてAIキャラクター「デルタもん」を発表するなど、AIに関係した事業を行っている。 https://blendai.jp/ https://twitter.com/blendaijp

東京工業大学でコンピュータサイエンスを学び、東京大学ロースクールで法律を学ぶ。幾つかの職を経た後に渡欧し、オランダのIT企業でエンジニアとして従事する。その後東京に戻り、リクルートホールディングスでAI(自然言語処理)のソフトウェア作成業務に携わり、シリコンバレーと東京を行き来しながら働く。この時共著者として提出した論文『A Lightweight Front-end Tool for Interactive Entity Population』と『Koko: a system for scalable semantic querying of text』はそれぞれICML(International Conference on Machine Learning)とACM(Association for Computing Machinery)という世界トップの国際会議会議に採択される。その後、ブロックチェーン業界に参入。数年間ブロックチェーンに関する知見を深める。現在は BlendAI という企業の代表としてAIキャラクター「デルタもん」を発表するなど、AIに関係した事業を行っている。 https://blendai.jp/ https://twitter.com/blendaijp

この特集のその他の記事

経済的ディスインセンティブが、ビットコイン51%攻撃を防ぐ

ビットコインネットワークに対する著名な攻撃(取引履歴を不正に改ざんすること)に、51%攻撃というものがあります。ビットコインは世界中のコンピュータがその計算能力を使い、取引履歴をブロックとして保存しています。この計算能力・処理能力の51%、つまり過半数を占めてしまえば、不正な取引履歴を正当とみなせるようになります。この問題は理論上取り除くことはできず、サトシもそれを認めています(ビットコイン以外の多くのブロックチェーンも、同じ問題を有しています)。