オンラインサロンの産みの親が語るトークンエコノミーの可能性 / 田村健太郎

特集 あたらしい経済時代のコミュニティビジネス

「個人の発信者とファンをつなぐオンラインサロン・プラットフォーム」Synapse(シナプス)の生みの親である田村健太郎氏。今年の春から「自分だけのオリジナルトークン(ポイント)をファンに送れるアプリ・mint(ミント)」をスタートしました。田村氏がこれまでのコミュニティ運営で培ったノウハウで、どのようにトークンエコノミーを形成するサービスを提供しようとしているのかについてお話を聞きました。

コミュニティ事業として手がけたオンラインサロンについて

―まずは田村さんが2012年に立ち上げたオンラインサロン・プラットフォーム「Synapse」についてご質問します。そもそも当時なぜ「Synapse」をはじめたんですが?

2011年頃、僕はシェアハウスで暮らしていたんですが、炎上するブロガーさんや今で言うところのインフルエンサーの卵みたいな同世代の人がたくさんいました。彼らは「ブログが炎上して辛い」とか「ちゃんと文章読めない奴が適当なこと言って辛い」と話してたんです。その当時、ブロガーさんやインフルエンサーさんは理解してくれる人にだけ情報を届けたいという願望はあったけれども、その方法がなかったんです。

だったら、課金してくれた人だけに見てもらえるようなコミュニティとかブログとかを用意すればその悩みは少なくなるんじゃないかと思って、僕はあるブロガーさんの月額課金型のコミュニティを作るお手伝いをしたんです。

そうしたらそのブロガーさんは、すぐに有料課金のメンバーが100人くらいか集まって、それで月で10万とか稼げるようになりました。それをみて、これはいけるかも、ってことで事業化したのが「Synapse」です。

―「Synapse」を事業化していく上で、どこを重要視されていましたか? 課金しているユーザーでも、そのコミュニティが大きくなると一切トラブルが起こらないことはないですよね。

コミュニティは面倒くさい人が出て来た瞬間に、その人に悪意がなかったとしても崩壊するケースって非常にたくさんあります。サロンのオーナーさんが、そういう面倒くさい人に嫌われたり、ややこしいことになったりしないで、その面倒がプラットフォームに向けられれば持続していけるんじゃないかと、いうのはとても当時意識をしていたことです。

一般的にサークルとかだと、そういう人を追い出せないじゃないですか。だから、別に犯罪行為じゃなくても利用規約に反することがあるならば、場に介入するためのミニマムのコントロールをプラットフォームが行う仕組みにしていました。当時は中央集権型なほうが、最終的に小さなコミュニティが成立するんじゃないかっていう感じでやっていました。

―「Synapse」の事業が始まったのは2012年の春、堀江貴文さんが入られてブームが大きくなり、売却までの間オンラインサロンを運営されてよかったと思うことはありますか?

価値観やお金の使い方が多様化されていくなかで、みんなやっぱり孤独を感じているし、自分の好きな話をできる場所がないとか、こういう価値観について共有できる友達がいないとかっていう悩みはたくさんあると思っていました。そういう方々に対して居場所を提供できる、所属感を提供できるというのは幸せだと思っていました。

自分が信じているけど周りに話せないような考え方を、話せるコミュニティがあって、いろいろなユーザーが自分のことを理解してくれるような人が世の中に存在するんだっていう実感が持てるのは、本当にいいことです。そんな場を作れてよかったと思ってます。

―現在も多数のオンラインサロンが生まれていて、いわばブームのような状況になっています。田村さんが数々のオンラインサロンをみてきたなかで、オンラインサロンを成功させるために必要な要素は何だと思いますか。

いくつもの必要な要素があります。

まず1つ目は、明確なゴールがあること。オーナーやコミュニティが、目指す方向だけでもいいんだけど、「有名になりたい」「本を出したい」「こういうふうに世界を変えていきたい」というようなチームメンバーが共通して持てる目標があると強いですね。単純に仲良くみんなでワイワイやりましょうとかだと、目指すところがバラバラになるので足並みがそろわないんです。

そして2つ目は、隙があること。完璧なオーナーよりもちょっと抜けているところがあるくらいのほうが、メンバーがサポートしてあげたくなるんです。助けてあげられる余地があるほうが、コミュニティとしてはまとまりやすいですし、完璧な人の教えを守って頑張るとかだと、結構ついていけなくなっちゃうんですよね。

3つ目は、独自言語があること。サロンの名前やそのコミュニティだけで通用するキャッチコピーがあると一体感が生まれて、その言葉をSNSで発信していて、外から見ると、興味を引きます。その決まり言葉がサロンのコンセプトにマッチしてればより良いです。

そして4つ目が双方向であること。サロンオーナーから一方的に教えを受けるんじゃなくて、相互や横の関係があるのが盛り上がる秘訣だと思います。

ただそのためにできることはまだ現状でも少ないと思っています。ユーザーに横の関係をもっとやろう、といってもそう簡単にはいかないです。おそらく現在も多数のオンラインサロンが世の中でにありますが、その課題をもっているサロンは多数あるのではと思っています。

その4つ目の課題をどうにかできないかという想いが、今回僕が立ち上げた「mint(ミント)」というサービスに繋がっています。

コミュニティ事業からトークンエコノミー事業へ

昨年の6月にシナプスをDMMさんに売却したあと、新しい分野の事業をいろいろ勉強していました。そのなかでトークンエコノミーは、自分がこれまでコミュニティ事業で感じていた課題を解決するのに良いテクノロジーだなと思ったのがきっかけです。

そして海外に比べ日本はコミュニティ文化は成熟しているのに、そのビジネス化が遅れていると思いました。そこにチャンスがあると考えました。

−大きなビジネスになる可能性はありますか?

仮想通貨、ブロックチェーンの分野で、いま儲かっているのは取引業とICOぐらいですよね。なのでまだまだトークンエコノミーで儲かったという話はもちろんありません。

今までのインターネットサービスの事業者や起業家がこの分野に注目しづらいというのは仕方がないと思っています。この分野、収益化は長期戦にはなると思います。

ただ、すぐには儲からないけれど、今回トークンエコノミー事業として僕がはじめた「mint」は事業者さんと個人が繋がったうえで、決済を含めたすべてのやりとり自動化されている状態になることを目標にしています。

短期で儲けて事業を売却したり、手数料やデータで利益を得るようなビジネスではなく、まずは僕たちがトークンエコノミーという文化をつくっていくことが先決だと考えています。

この記事の著者

田村健太郎

1986年、神奈川県出身。一橋大学在学中にモバキッズ社を創業。モバイル向け受託開発、各種コンテンツ配信サービスの開発、運営・制作などを経て、2012年にオンラインサロンのプラットフォーム「シナプス」を立ち上げる。2017年にシナプスをDMM.comに売却。
現在は応援してくれる人に 感謝の気持ちをポイントで伝える「mint」のアプリサービスを運営。

1986年、神奈川県出身。一橋大学在学中にモバキッズ社を創業。モバイル向け受託開発、各種コンテンツ配信サービスの開発、運営・制作などを経て、2012年にオンラインサロンのプラットフォーム「シナプス」を立ち上げる。2017年にシナプスをDMM.comに売却。
現在は応援してくれる人に 感謝の気持ちをポイントで伝える「mint」のアプリサービスを運営。