サム・アルトマンのワールド、銀行・金融機関向け「World ID」提供開始

AIによるなりすまし対策で顧客や従業員の認証を支援

人間であることを証明するデジタルID基盤「ワールド(World)」を支援するワールド財団(World Foundation)が、銀行・金融機関向け認証機能群「World ID for banking and finance」の提供開始を10月19日に発表した。

ワールドは、対話型AI「チャットGPT(ChatGPT)」を提供する米オープンAI(OpenAI)の最高経営責任者(CEO)であるサム・アルトマン(Sam Altman)氏らが共同創業したプロジェクトだ。生体認証端末「オーブ(Orb)」を使い、個人情報を開示せずに実在する一人の人間であることを証明する「World ID」などを展開している。

今回の機能群は、顧客アカウントや従業員の業務、AIエージェントとのやり取りにおける、ディープフェイクやAIによるなりすましへの対策を目的とする。「World ID app」、「World ID for Agents」、「World ID for Zoom」の3つを組み合わせる。ワールドにとって、特定業界に焦点を当てたWorld IDの展開は初めてという。

「World ID app」は、自分に関する各種証明を取得・管理・提示できるアプリだ。オーブでの認証による「実在する一人の人間であること」の証明に加え、スマートフォンを使って実在する人がその場にいることを確認する機能、政府発行の身分証明書に基づく年齢・国籍などの属性の証明を扱う。

属性の証明では、求められた情報だけを提示する。金融機関は、書類や個人を特定できる情報を収集・保存せずに、必要な属性を確認できるという。公式ブログでは、口座開設や多額の送金、口座へのアクセスを復旧する際の認証などを活用例として挙げている。

「World ID for Agents」は、利用者が自分に関する証明の一部をAIエージェントに委任し、エージェントが第三者のサービスにその証明を提示できるようにする仕組みだ。エージェントは、利用者の個人情報を明かさずに、実在する人間の依頼で行動していることを示せるという。

この仕組みを開発者が実装するためのツールが「エージェントキット(AgentKit)」だ。現在はベータ版で提供されている。

「World ID for Zoom」は、ビデオ会議サービス「ズーム(Zoom)」の参加者が、オーブで認証した人物と一致するか確認する機能だ。今回、一般提供が始まり、Zoom Marketplaceを通じて世界の法人顧客が利用できるようになった。

具体的には、オーブによる認証時の顔画像、World ID appで撮影した自撮り画像、Zoom会議中に表示される映像の3つを照合する。認証に成功すると、参加者の映像に「Human Badge」が表示され、他の参加者もその認証結果を確認できるという。

同財団は、金融分野での活用を検討するパートナーとして、ベイン・キャピタル(Bain Capital)、オープンエクスチェンジ(OpenExchange)、アウトテイク(Outtake)、パンテラ・キャピタル(Pantera Capital)、ヴァンエック・ファンズ(VanEck Funds)の5社を挙げている。

なお同財団は発表で、AIを利用した詐欺被害の拡大にも言及した。デロイト(Deloitte)が2024年5月に公表した予測によると、米国の生成AIを利用した詐欺被害額は、2023年の推計123億ドルから2027年には400億ドルに達する可能性があるという。

同財団は7月24日、戦略的投資家への暗号資産(仮想通貨)「ワールドコイン(WLD)」の販売の初回クローズで、5,250万ドル(当時約86億円)を調達したと発表している。調達資金は、企業や消費者、AIエージェントへのWorld IDの世界展開に活用する方針だ。

この資金調達はパンテラ・キャピタルが主導し、ベイン・キャピタル・クリプト(Bain Capital Crypto)などが参加した。販売されたすべてのWLDには、12カ月間のロックアップが設定された。

 

参考:プレスリリース・ブログ1・ブログ2
画像:Reuters

関連ニュース

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

大津賀新也

「あたらしい経済」編集部
副編集長
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

「あたらしい経済」編集部
副編集長
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

合わせて読みたい記事