アンソロピック、米国防総省の排除措置を支持した判決に再審理請求

AIの軍事利用制限を巡る対立で

米AI開発企業アンソロピック(Anthropic)が、米国防総省による同社の「安全保障上のサプライチェーンリスク」指定を支持した判決について、再審理を10月13日に申し立てた。米コロンビア特別区巡回区連邦控訴裁判所への提出書類で明らかになった。

同社が見直しを求めているのは、同控訴裁が9月25日に2対1で下した判決だ。今回の申立書では、判決を下した合議体、または同控訴裁の大法廷による再審理を求められている。

アンソロピックは申立書で、敵対的な外国勢力などへの対応を目的とした法律について、裁判所が政府と取引するあらゆる企業に適用できるように広く解釈したと主張した。こうした解釈により、悪意がなくても、AIモデルの提供前の訓練や利用制限の設定を理由に、サプライチェーンリスクに指定され得ると同社は批判している。

さらに同社は、指定前に通知や反論の機会が与えられなかったと指摘した。AIの安全性に関する同社の発言への報復を示す証拠があるにもかかわらず、裁判所が指定を支持したとして異議を唱えている。

アンソロピックは2025年7月14日、国防総省から期間2年のAI試作開発契約を獲得したと発表していた。契約上限は2億ドル(約317億円)とされていた。

今回の対立の発端は、同社の生成AI「クロード(Claude)」の軍事利用に関する制限だ。国防総省は合法的なあらゆる用途への利用を認めるよう要求した。一方、アンソロピックは米国人に対する大規模監視や、完全自律型兵器への利用を禁じる条件を維持した。完全自律型兵器は、人間が介在せずに標的の選定や攻撃を行う兵器を指す。 

同社は2月27日付の声明で、現在の最先端AIモデルには完全自律型兵器への利用に必要な信頼性がなく、軍人や民間人を危険にさらすおそれがあると説明した。また、米国人に対する国内の大規模監視は、基本的権利を侵害するとの見解を示していた。

ピート・ヘグセス(Pete Hegseth)国防長官は2月27日、同社をサプライチェーンリスクに指定するよう国防総省に指示したと公式Xで発表した。その際、別のサービスへの移行に向け、同社によるサービス提供を最大6カ月間継続するとしていた。

国防総省は3月3日、2018年連邦調達サプライチェーン安全保障法に基づき、同社をサプライチェーンリスクに指定した。同省はクロードを省内のシステムから除外するよう指示し、請負業者が同省向けの業務でアンソロピック製品を利用することも禁じた。アンソロピックは同月9日、排除措置の司法審査を申し立てた。

9月25日の判決で裁判所の多数意見は、利用制限のあるAIが軍事作戦に支障を来すリスクなどを踏まえ、国防総省の措置は法的権限の範囲内だと判断した。また、措置の理由は同社の安全性に関する発言ではなく、国防総省が安全保障上不可欠と考えた契約条件への同意を拒んだことだとして、報復だったとする主張も退けた。同法に基づくリスク指定には、同社に悪意があることは必要ないとも判断している。

なお、カリフォルニア州北部地区連邦地裁は8月27日、別の法律に基づく同社へのサプライチェーンリスク指定を無効としている。こちらは米法典第10編3252条に基づく指定であり、今回の再審理請求が対象とする同第41編4713条に基づく措置とは、法的根拠が異なる。そのため、9月の控訴裁判決は8月の地裁判断を覆すものではない。

その後、英BBCは10月5日、国防総省がアンソロピック製AIの利用を終了したと報じた。同省担当者が明らかにしたという。具体的な利用終了日は明らかにされていない。

同報道によると、クロードは米パランティア(Palantir)の国防総省向けデータ基盤「メイブン・スマート・システム(Maven Smart System)」に組み込まれ、情報分析などに利用されていたという。

参考:再審理申立書
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

大津賀新也

「あたらしい経済」編集部
副編集長
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

「あたらしい経済」編集部
副編集長
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

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