新たな資本規制案検討へ
香港の保険監督当局である香港保険業監管局(Insurance Authority)が、暗号資産(仮想通貨)やインフラ関連資産への投資を対象とした新たな資本規制案を検討していると「ブルームバーグ(Bloomberg)」が12月22日に報じた。
ブルームバーグが確認した12月4日付の保険業監管局プレゼンテーション資料によると、同局は保険会社が保有する暗号資産に対し、リスク係数100%を課す方針を示している。
また、ステーブルコインについては、香港で規制されるステーブルコインがペッグする法定通貨の性質に応じて、リスク係数を設定するとされている。
この提案は現時点では最終決定ではなく、2026年2月から4月にかけてパブリックコメント(公開協議)を実施した後、立法会(LegCo)への提出などの立法手続きに進む見通しだ。
香港保険業監管局はブルームバーグに対し、今年からリスクベース資本制度の見直しを開始したと述べている。主な目的は、保険業界の健全性を支えると同時に、より広範な経済発展を後押しすることだという。
現在は業界からの意見収集段階にあり、正式な公開協議を予定しているという。
今回の保険会社向け制度案は、暗号資産だけでなく、インフラ投資にも踏み込んだ内容となっている点が特徴だ。
資料によれば、香港または中国本土に関連するインフラプロジェクト、もしくは香港で上場・発行されるプロジェクトへの投資に対し、資本面での優遇措置を設ける案が検討されている。こうした制度設計の背景には、香港政府がインフラプロジェクトへ保険資金などの民間資本を誘導したいという狙いがあるとみられている。
対象には、香港北部で進められている都市開発計画「ノーザン・メトロポリス(Northern Metropolis)」などが含まれる。
ノーザン・メトロポリスは、深センとの連携強化を軸に、イノベーション・技術、物流、商業、環境保全を柱とした住宅・産業拠点の形成を目指す大規模都市開発計画だ。
この提案の目的の一つは、香港政府が推進する地域インフラ整備を後押しすることだとされている。
香港政府は財政赤字に直面するなか、テクノロジー拠点化を目指すノーザン・メトロポリスの開発において、民間資本の活用を模索している。なお保険業監管局によれば「政府から独立して運営されている」とのことだ。
一方で、現行案では対象となるインフラ投資の選択肢が限定的であるとして、より幅広いプロジェクトを対象に含めるよう求める意見も一部の保険会社から提出されているという。
2025年6月時点で、香港には158の認可保険会社が存在する。香港の保険業界全体の2024年の総保険料収入は約6,350億香港ドル(約99.7兆円)に達している。
暗号資産取引に友好的な香港では、暗号資産関連の規制の整備や商品の承認が着々と進められている。
今年5月に議会で可決されたステーブルコイン規則が8月1日に施行されており、世界有数のデジタル金融ハブとなることを目指している。香港の事実上の中央銀行は、来年初頭にも初のステーブルコイン発行承認を行う見通しを示している。
参考:ブルームバーグ
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