ビットコイン下落もゴールド(金)は連日高値更新、米中間の貿易摩擦や米地銀の融資先の不正疑惑で(仮想通貨市場レポート 10/20 号)

今週もSBI VCトレード提供の暗号資産(仮想通貨)に関するウィークリー・マーケットレポートをお届けします。

10/12~10/18週のサマリー

  • ビットコインは前週の急落局面での安値を割り込み続落
  • 中国が韓国造船大手の米子会社への制裁を発表し米中対立が激化
  • 米国の地方銀行2行が融資先の不正行為を発表
  • Paxos社、300兆ドル相当のステーブルコインを誤って発行

暗号資産市場概況

10/12~10/18週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比▲4.81%の16,173,650円、ETH/JPYの週足終値は同+2.63%の587,345円であった(※終値は10/18の当社現物EOD[10/19 6:59:59]レートMid値)。

先週の暗号資産市場は、米中間の貿易摩擦が続くなか、一時的に反発する場面が見られたものの、米地銀の融資先の不正疑惑による信用懸念を背景に先々週の安値を切り下げる展開となった。

週初、トランプ大統領がTruth Socialに中国との通商協議についての前向きな発言を投稿し、ビットコインは116,000ドル台まで上昇。しかし、上値の重さが意識されるとビットコインは再び下落に転じ、10月14日に中国がハンファオーシャン社(韓国造船大手)の米国に拠点を置く子会社への制裁を発表すると、米中対立が激化。これにより下げ幅が拡大し、ビットコインは再び110,000ドル割れの展開となる。さらに、16日に米国の地方銀行2行が融資先の不正行為を発表したことで、景気先行きへの懸念が浮上し、米株式市場は下落。この株式市場の下落に連動する形で、暗号資産市場でも売り圧力が強まり、ビットコインは前週の急落局面での安値を割り込み103,000ドル台まで値を下げる場面が見られた。

こうしたマクロ環境の悪化を背景に、投資家はより安全な資産への資金移動を進めた。特に金(ゴールド)への資金流入が顕著となり、金価格は5営業日連続で史上最高値を更新。これに対して、“デジタルゴールド”と呼ばれ、金と同様の性質を持つと期待されていたビットコインとの価格の相関性は大きく乖離し、両者が全く異なる値動きを見せる結果となった。

また、米国における暗号資産現物型ETF(上場投資信託)からの資金流出も顕著であり、ビットコイン現物ETFは、先週1週間で12億ドル以上の純流出を記録。イーサリアム現物ETFからも3億ドル以上の資金が流出しており、これに伴いイーサリアムは10月17日に一時3,600ドル台まで下落。他の主要アルトコインも軒並み下落基調をたどり、全体としてリスク回避の動きが強まった1週間であった。

加えて、暗号資産の信頼性に対する懸念を再燃させたのが、ステーブルコインに関連する技術的な問題である。15日、Paxos社が発行するステーブルコイン「PYUSD」において、約300兆ドル相当の非常に大きな額のトークンが誤ってミント(発行)されるという技術的なトラブルが発生。この問題は短時間のうちに技術的に修正されたものの、ブロックチェーン上の透明性やセキュリティ体制への信頼を揺るがす出来事として、投資家の不安を一層高める結果となった。

10月は歴史的に見ると暗号資産市場にとっては価格が上昇しやすい傾向にあり、2013年以来過去12年のうち10年でビットコインはプラスのリターンを記録しているが、米中の貿易摩擦やマクロ環境の不透明感を背景に今月のビットコインの月初来リターンは今のところマイナス圏で推移している。こうしたなか、今週は米国の消費者物価指数の発表が控えており、今後の景気の動向を占ううえで大きな注目点となることが予想される。

1) BTC/USD週間チャート(30分足)

2) BTC/JPY週間チャート(30分足)

3)ビットコイン現物ETFの資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 橙線がビットコイン価格)SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成

4)イーサリアム現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、イーサリアム価格

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 青線がイーサリアム価格)SoSoValue提供のチャートよりSBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成

ビットコイン 月次のリターン

(CoinGlass提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)

10/10~10/18週の主な出来事

 

10/19~10/25週の主な予定

【今週のひとこと】 ADL(Auto-Deleveraging)

日本時間の10/11(土)に発生した暗号資産市場の急落を受け、海外暗号資産取引所(Binance、Bybit、OKXなど)における損失回避機能であるADL(Auto-Deleveraging:自動レバレッジ解消)に注目が集まっています。

レバレッジ取引を提供する海外の主要な暗号資産取引所では、価格急変時の損失処理機能としてADLを採用しています。ユーザーのレバレッジ取引における強制決済プロセスは「市場での清算」「保険基金による損失吸収」「ADL発動」という三段階で構成されています。まず、市場に十分な流動性がある場合は板上での強制決済によって損失を吸収しますが、価格急変により担保を上回る損失が生じた際には、事前にプールされた保険基金が活用されます。それでもなお損失を吸収しきれない場合に発動するのがADLです。

ADLは利益が出ている口座のポジションを強制的に解消することで、他のユーザーの未回収損失を相殺し、取引所の債務発生リスクを抑える仕組みです。このとき解消されるポジションは、利益率やレバレッジ倍率を加味して自動的に選定され、処理は取引所内部のネッティングで完結するため、市場に買いフローが出るわけではありません。

今回の急落局面では、このADLが複数の取引所で同時多発的に発動し、結果的に相場下落を助長したとみられます。マーケットメイカーが流動性を引き揚げたことで買い板が極端に薄い状態となるなか、ADLが内部処理として進められたことで、市場全体の買い流動性が回復せず、下落圧力が継続しました。さらに、ADLの発動が「取引所の保険基金が枯渇したサイン」と受け止められたことから、大口トレーダーや機関投資家がリスク回避姿勢を強め、ポジション縮小に動いたことも売り圧力を拡大させました。

ADLは、高いレバレッジでの取引サービスを提供する海外取引所のリスク管理上不可欠な機能である一方、市場流動性が枯渇した状態で発動すると、逆に価格変動を拡大させるリスクを内包しています。発動対象ポジションは利益率やレバレッジ倍率を参照した各取引所独自のルールに基づいて自動的に選定されるため、ADL対象ポジションの監視を行い、リスクを事前に把握することが重要といえます(多くの海外取引所ではADLポジションの監視ツールを用意しています)。

弊社においては日本国の法令のもと、ADL(Auto-Deleveraging)「自動デレバレッジ(自動ポジション減少)」機能は採用しておりません。今後もお客様に安全かつ安心してお取引いただける環境の提供に努めてまいります。

このレポートについて

国内の暗号資産(仮想通貨)取引所「SBI VCトレード」提供の週間マーケットレポートです。毎週月曜日に最新のレポートをお届けします。

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<暗号資産を利用する際の注意点>
暗号資産は、日本円、ドルなどの「法定通貨」とは異なり、国等によりその価値が保証されているものではありません。
暗号資産は、価格変動により損失が生じる可能性があります。
暗号資産は、移転記録の仕組みの破綻によりその価値が失われる可能性があります。
当社が倒産した場合には、預託された金銭及び暗号資産を返還することができない可能性があります。
当社の取り扱う暗号資産のお取引にあたっては、その他にも注意を要する点があります。お取引を始めるに際しては、「取引約款」、「契約締結前交付書面」等をよくお読みのうえ、取引内容や仕組み、リスク等を十分にご理解いただきご自身の判断にてお取引くださるようお願いいたします。
秘密鍵を失った場合、保有する暗号資産を利用することができず、その価値を失う可能性があります。
暗号資産は支払いを受ける者の同意がある場合に限り、代価の支払いのために使用することができます。

この記事の著者・インタビューイ

SBI VCトレード

SBIグループの暗号資産取引所「SBI VCトレード」。SBIグループの掲げる顧客中心主義の理念のもと、お客様の満足度向上に資する暗号資産取引に係るサービスをフルラインナップでご提供してまいります。

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